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黒のカサブランカ ――裏切られし女勇者、闇に堕ちて魔王となる――  作者: 小鳥遊 千夜
第二章 二人目のメインターゲット 大司祭、ビション=ヴァルテス編

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97/112

第97黒 嫉妬の宝石魔導士 ミラ=ソルティス

 

 カイゼルとセリウスが激しくやり合う爆音を

 後にするようにリィナ達は、教団内部へと駆け抜けていた。


 鳴り続ける鐘、迫り来る教団兵と魔導機械兵(ネクロ・マキナ)を倒しながら長い回廊をすすむ。


「……止まりなさい」

 回廊の奥から静かに響く声。


 その瞬間。


 キィィィン――……


 空間に無数の魔法陣が展開する。


 幾重にも重なった術式で回廊そのものが、“結界”へと変わる。


「っ……この結界は…!?」

 リディアが剣を構える。


 前方から、ゆっくりと一人の女が歩いてくる。


 長い髪に妖しく光る宝石、冷たい微笑。

 モナークの右腕であり、宝石魔導士のミラ=ソルティスだ。


 その瞳は真っ直ぐ、リィナを見ていた。


「また会えたわね」

 甘い声で笑う。

 だが、その奥にあるのは濁った感情だけだ。


「本当に……気に入らない女。…

 どうしてモナーク様は、あなたばかり見るの?」


 ミラが近づく度に空気が軋む。


「どうして、あなたばかり――」


 その瞬間、


「……相変わらず重たいわねぇ」

 

 ヴェルミナだった。


 リィナの前へ出ると紫紺の魔力が、ゆっくりと滲み出す。


「……あなたは…」

 ミラの目が細まる。


「久しぶりね…。()()()()()

 ヴェルミナが笑い空気が凍る。


 ミラの頬が、ひくりと動く。


「……言ってくれるじゃない!」


「だって事実でしょう?遺跡でも散々だったものね」


 そう言ってミラが作り出した結界に穴を開ける。


「ヴェルミナ……!」


「今のうちに、あなた達は行きなさい。」

 

 リィナ達の方へと合図をする。

 その間にも視線はミラから外さない。


「ここは私がやるわ。」


「でも――」


「早く、ここでビションを逃したら、全部無駄になるわ」

 ヴェルミナの声色が変わる。


 二人の視線が交わり、一瞬の沈黙が流れ、


「……任せる」


 リィナは一言そう呟くと、仲間達と共に先へと進む。


「これで心置きなくやれるわ。…安心して、今度はちゃんと壊してあげるから」

 ヴェルミナが笑う。


 ミラの額に青筋が浮かぶ。


「……っ」


 その瞬間。


 ドォンッ!!


 巨大な宝石陣が展開し、リィナ達と、完全に隔離される。


 最後に見えたのは――ヴェルミナの、不敵な笑みだった。



 残ったのは二人の魔女だけ――

 互いの魔力と魔力が、ぶつかり合い空間が静かに悲鳴を唸っている。


「……本当に嫌い、あなたみたいな女が一番ね!!」

 ミラが口を開く。


「あら、光栄ね。私もあなたは嫌いだから」

 ヴェルミナが笑う。


「その余裕……、まだ自分が勝てると思ってるの?」

 ミラの瞳が細まる。


「思ってるわよ?むしろ負ける要素ある?」

 ヴェルミナが首を傾げる。



「……っ!」


 空気が爆ぜる。


「《魔力増幅!マナ・アンプリファイ》!!」


 宝石が一斉に輝き莫大な魔力で周囲の床が砕ける。


「遅いわ」

 ヴェルミナの指が、軽く動く。


《呪詛展開!カース・エリア》


 黒い紋様が床を這いミラの魔法陣を侵食していく。


「っ……またその術……!」


「ええ。あなたには効果的でしょう?」


 魔力の流れを読み、宝石術式の連結点を潰す。


「遺跡でも言ったわよね?環境依存の術式は、崩しやすいって」


 ミラが歯を食いしばる。


「黙れええええええぇ!!」


 無数の魔法陣が空間を埋め尽くす。


「《臨界魔力圧縮槍 マナ・ランス・オーバーブレイク》!!」


 紫の槍群が、豪雨のように降り注ぐ。


「前よりも強力みたいね。でも…」

 

《魂縛 ソウル・バインド!!》


 影が伸び槍の軌道が歪み、ミラの身体がわずかに止まる。


「っ……!」


「隙だらけよ」


 ヴェルミナが更なる術を展開する。


 《禁断侵食 フォービドゥン・イーター!!》


 黒い魔力が奔流となって渦巻き、ミラの術を喰らいながら本体を蝕もうと迫る。


 一つ、また一つと媒介に使っている宝石が砕けていく。


「やっ……やめて……!!」

ミラの表情が崩れる。


「あら?あなたには“奪われる側”になる覚悟ないのかしら?」

ヴェルミナが優しく笑う。


「っ……!!」


 追い詰められたミラの心に怒り、嫉妬、と言って感情が溢れだし

 魔力が暴走していく。


「モナーク様には私が必要なの!!」


「必要?」

 

 ヴェルミナの笑みが、冷える。


「…違うわね。……あなたは、“選ばれたい”だけ」


 その言葉で、ミラの瞳が揺れる。


「……っ」


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