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黒のカサブランカ ――裏切られし女勇者、闇に堕ちて魔王となる――  作者: 小鳥遊 千夜
第二章 二人目のメインターゲット 大司祭、ビション=ヴァルテス編

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92/113

第92黒 “黒のカサブランカ”討滅指令

 

 帝国聖灰教団(せいかいきょうだん)本部――円卓の間。


 重厚な扉が閉じると同時に、静寂が落ち燭台の火だけが、揺れている。


 その玉座で教皇 ルシアン=カイゼルクレストが静かに口を開く。


「……報告は聞いた。」


  視線が、円卓をなぞる。


  「ラグナ・セクト作戦――失敗したようだな?」


 ミラが鼻で笑う。

「ええ、そうよ。で?それが何?」



 ミラの態度に協会騎士団長、セリウス=ブライトハートが睨む。


「軽く言ってんじゃねぇよ。マリオンまでが落ちたんだぞ」


「やられたのはあいつが弱かっただけ、私のせいじゃないわ。」


 ミラは一切動じない。


 その言葉に冷たく言い放つ人物はリュシアン=ノルド。

 教団僧兵長を務めており、守りの要である。


「だが、負けたのは事実であろう?」


 ミラの目が細くなる。


「私の作戦は完璧。あと一歩だった…

 でも、想定外の自体が起きた…そのせいよ。」


 歯を食いしばる。


「全ては……”あの女”のせいだわ」


 一つ一つ、言葉を置く。


「……チッ」


 大きく舌打ちするのはセリウス。


 腕を組み、苛立ちを隠さない。


「気に食わねぇな」


「マリオンのやつは嫌いだったが……

 “やられる側”になるのは、話が別だ」


 拳が鳴る。


 ミシッと。


「……あいつが落ちるなら、俺が叩き潰す側であるべきだった」


 ミラが鼻で笑う。


「はっ、相変わらずね」


「うるせぇ!てめぇが仕留めきれなかったのが原因だろうが」


「やめるのだ」


 リュシアンの声。


「内輪で潰し合うな」


 巨大な盾を床に打ち付ける。


「戦力を一つ失っている状況で、感情で判断するな」


「感情?」


 ニヤニヤと笑うのは教団大呪術師ダリオ=シャード。 


「実にいいじゃないですかァ!感情」


「マリオンは壊れた…。完璧な機械であってもいつか壊れるモノ…」



「ハッ…相変わらずイカれた考えしてんな」

 セリウスが睨む。


「おや?……何かご不満のようですね。」


 ダリオが楽しそうに言う。


「“死”とは平等。だからこそ美しいのですよ。」


 空気が濁る。


「……くだらない教えね。」


 ミラが吐き捨てる。


 その時、静かな声が差し込む。


「少し、議論が逸れておりますよ。」


 全員の視線が、一点に集まる。


 声の主は大司祭、ビション=ヴァルテス。


「今回の結果は、明確でございます」


 淡々と。


「敵は“想定以上”だった。

 だから、……戦術を修正する必要があります。」


 セリウスが腕を組む。


「で?どう変えるんだ?」


 ビションは指を一つ立てる。


「分断では不十分、逃走経路を許したのが今回の敗因です。」


 リュシアンが頷く。


「……確かに」


 ビションは続ける。


「次に――“個人ではなく集団作戦”に移行いたします」


「外の両方から“檻”を形成、追い詰め“同時”に殲滅する」


 セリウスが笑う。


「へッ…いいじゃねぇか、まとめて燃やせる」


 リュシアンが問う。

「防御線はどうするのだ?」


「私が担いましょう。」


 ダリオが笑う。


「へぇ……自らとは随分とやる気だね」


「ええ」


 ビションは微笑む。


「すべて“計算の上”でございます」



 ヴァレンが軽く手を叩く。

「うん、まさに完璧な計算だね。」


「でもさ、その“計算”、外れたらどうするの?」


 ビションは視線だけを向ける。


「外れるようなことはございません。

 私が出る限り、そのような誤りは許しませんので」


 ヴァレンが笑う。


「いいねぇ」


(危険だな、…これは、強すぎる信念は、折れた時に脆い)


 ルシアンが口を開く。


「……ビション」


「はい」


「今回の指揮を任せよう。」


 静かに告げる。


「今度こそ、確実に仕留めるのだ」


 ビションは一礼する。


「承知いたしました」


 顔を上げる。


「私の光が道を示します。

 抗う者には――救いはございません」


 その言葉が、静かに響く。


 ミラが笑う。

「いいわ」


 セリウスが剣に手をかける。

「やっと俺の出番だな。」


 リュシアンが頷く。

「隊列は私が維持しよう。」


 ダリオが楽しそうに言う。

「壊れる準備は万端ですねェ」


 ヴァレンが小さく笑う。

「さて……どっちに転ぶかな」


 ビションが遠くを見つめながら呟く。


「黒のカサブランカ……その闇――

 私の光で、今度こそ消させてあげますよ」


 燭台の火が揺れる。


 それはまるで――

 次の戦いが、既に始まっているかのように。


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