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黒のカサブランカ ――裏切られし女勇者、闇に堕ちて魔王となる――  作者: 小鳥遊 千夜
第二章 二人目のメインターゲット 大司祭、ビション=ヴァルテス編

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91/91

第91黒 失われた命を背負って

 

 ――遺跡入口。


 崩れかけた石門の外へ、冷たい夜風が吹き抜ける。

 ラグナ・セクト遺跡は、もはや“死んだ建造物”のように沈黙していた。


 その闇の中から――

 一人、また一人と、影が姿を現す。


 最初に現れたのは、リディア。

 砕けた鎧を引きずりながらも、周囲を警戒し続けている。

 「……皆さん、今のうちです!」


 その背後から、シルフィがひょこりと顔を出す。


「いやぁ……今回は危なかったですねぇ」


 少し遅れて調査員を抱えたリィナが続く。

「向こうは大丈夫かしら…?」


 別の方向から黒炎を纏ったカイゼルが瓦礫を蹴り飛ばしながら現れる。


「フン……脆い遺跡だ。あと数分遅ければ、生き埋めだったな」


 その後ろをヴェルミナ。

 服には血が付き、魔力消耗も激しい。

 

「……ほんと、最悪の帰り道だったわ」


 最後に、ゼルヴァが、崩れかけた入口を強引に潜り抜けた。


 その巨体が外へ出た瞬間――

 背後で。

 ドォォォォンッ!!

 巨大な岩盤が崩落し入口が、完全に塞がれる。


「……終わったな」

 

 リィナ達は全員が生還した。

 誰一人、欠けてはいない。


 だがーーその視線の先。


 少し離れた場所に血塗れの調査員達が倒れていた。


 運び出された者、辛うじて呼吸している者。

 焦げた装備に引き裂かれた衣服。


「……っ……これを……」

 か細い声で一人の調査員が、震える手でペンダントを差し出す。


「家族に……渡して……くれ……」


「……ああ、必ず……!」

 仲間の調査員が、涙を堪えながら受け取る。


 そして、返事を聞いた瞬間に

 その調査員は、静かに息を引き取った。


 シルフィが、小さく呟いた。

「……助けれたのは、これだけ……ですかぁ」


 誰も、言葉を失う状況の中で依頼主の調査員のエリアスの姿もあった。

 傷だらけで顔色も悪い。だが、辛うじて生きている。


 リディアが駆け寄る。

「他の者は!?」


 エリアスは、ゆっくりと首を振る。

「……助かったのは……私達だけだ……」


 エリアスの言葉にヴェルミナが、静かに目を伏せる。

「彼らは……私達を誘き寄せるための餌…」

 吐き捨てるように。

「最初から、その程度の命としか見てなかったんでしょうね」


 リディアの拳を握る。

「……くそっ……!」


「私が……もっと早く辿り着けていれば……!」


「……無意味よ」

 リィナの静かな声。


「これは事故じゃない……」


 リィナは、崩れ落ちた遺跡を見つめる。

 その赤い瞳に宿るのは、哀しみと怒り。


「全ては仕組まれていた。

 助けられる命は、最初から“限られていた”のよ」


 リディアが俯く。

「……それでも……」


 リディアの声が震える。

「私は……全員、救いたかった……」


 リィナは、わずかに目を細める。

「……そうね」


 短く答える。

 ただ、その想いを受け止めるように――



 リィナが、崩壊した遺跡へ背を向けゆっくりと振り返る。

 その赤い瞳は、静かに燃えていた。

 

「失った命は…戻らない」

 風が流れ、煙が夜空へ流れていく。


「……だからこそ、新たな悲劇を増やさない為にも、私達は進む」


 ここで止まるつもりもない――


「施設も幹部も減らした。戦力は十分削ったわ」

 リィナの瞳が鋭くなる。


「……次は、教団本部よ」


 その言葉に、カイゼルが不敵に笑う。

「フン、ようやくだな」


「待ちくたびれたぞ。この借りは必ず返す」

 ゼルヴァが拳を鳴らす。


「いつでも準備は出来てるわ」

 ヴェルミナが微笑む。


「私もどこまでもお支えしますよぉ」

 シルフィが僅かに笑う。


「この命に懸けても、お守り致します!」

 そしてリディアも迷いのない声で真っ直ぐに告げる。


 失われた命を背負いながら、リィナ達は――

 次の戦いへと歩き出す。


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