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黒のカサブランカ ――裏切られし女勇者、闇に堕ちて魔王となる――  作者: 小鳥遊 千夜
第二章 二人目のメインターゲット 大司祭、ビション=ヴァルテス編

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第90黒 ラグナ・セクト崩落

 

 ――ラグナ・セクト遺跡の深部。


 ミラは、完全に追い詰められていた。

 ヴェルミナ、ゼルヴァ、カイゼルの包囲の前に逃げ場は、ない。


「……っ、来ないで……!」


 後退しようとするが、魂が縛られているので動くことすら出来ない。


「大丈夫。…すぐ終わるから」

 ヴァルミナが静かに呟く。


 その時――


「いやいや、それ以上はちょっと困るかな」


 この場に似つかわしくない、薄い笑み。


 誰もいなかったはずの場所に――


 一人の男が立っていた。


「やあ、久しぶり……って言うべきかな?」


 ヴァレン=シャルクが手をひらひらと振る。


「……誰だ。貴様!」


 ゼルヴァが低く唸る。


「…敵よ。まさか生きていたなんてね」

 ヴァルミナが敵を睨めながら答える。


「フン、ならば、叩き潰すだけだ。」


 ゼルヴァが即座に間合いを詰めようとする――が。


「下手に動かない方がいいよ」


 ヴァレンが笑う。


 いつの間にかゼルヴァの足元には罠が張り巡られていた。


「フン、……罠か」


「ご名答。爆発に麻痺、頑丈そうなキミでも結構痛いんじゃないかな?」


 カイゼルが舌打ちする。


「お得意の小細工か……」


 黒炎を構える。


 だが――


「そんなの撃って大丈夫かい?この遺跡、脆いんだよね。」


 ヴァレンが肩をすくめる。


「ちっ…」



「さてと…ここで本題だ。」


 ヴァレンが、ミラへと視線を向ける。


「ミラ、…マリオンがやられた。これ以上の深追いは無意味だ。」


 ミラの瞳が見開かれる。


「……は?」


「リィナと、その仲間にやられたみたいでね。もう任務続行は無理だよ。」


「くっ…あの女!」


 ヴェルミナが、静かに口を開く。


「あら、……逃がすと思ってるの?」


「思ってないよ。」


 ヴァレンは即答する。


「…だから逃げるのさ」


 にこりと笑い、指を鳴らす。


 その瞬間――


 遺跡全体に無数の光が走る。


「《遅延式罠 ディレイ・ルイン》」


 ギギギ……と、天井が軋み、床が沈んでいく。


「分かった……撤退するわ」


「でも……」


 ミラの宝石が、狂ったように光る。


「タダでは帰らない……!!」


「《崩壊増幅 カタストロフ・アンプリファイ》!!」


 魔力が暴走し、遺跡の崩落が、一気に加速する。


 地震のような揺れ、天井が落ち床が裂ける。


「ちっ……!自壊させたか……!」

 カイゼルが舌打ち。


「それじゃあ、せいぜい頑張って脱出してみなよ。」

 ヴァレンが笑う。


「待ちなさい!!」

 ヴェルミナが叫び、呪詛を伸ばす。


 だが――

 ヴァレンが笑う。


「残念、僕逃げるのだけは得意なんだ」


 ――《影転位 シャドウ・シフト》


 二人の姿が――消える。


「おい!今はあいつらのことはあとだ。まずは脱出だ。」

 ゼルヴァが叫ぶ。


「チッ……派手にやってくれたな」

 カイゼルが舌打ちする。


 黒炎で落下物を焼き払いながら、道を切り開く。


「文句は後にしろ!」


 ゼルヴァが巨体で瓦礫を弾き飛ばし、強引に進路を作る。


「出口はあっちだ!」


 その背後でヴェルミナが、息を整えながら歩く。


「……最悪の帰り道ね」


 苦笑する。だがその瞳は冷静だ。


「長くは持たない。……リィナ達は大丈夫かしら」


 

 ――リィナ達


 別の通路で、リディアが壁を叩き裂く。


「……私が道をこじ開けます。」


 壁の裂け目へ剣を叩き込む。


 バキィッ!!


「さぁ、今のうちです。リィナ様お早く。」


「ええ、ありがとう。」


 リディアの後ろを進むリィナ。


「…皆は大丈夫かしら?」


「心配いりませんよぉ」

 シルフィが影から現れる。


「皆さん……しぶといですからぁ。

 やられたって地獄の淵から戻ってきますよぉ」

 

「ふふ…そうね。今は信じて脱出するわよ。」

 リィナはシルフィの言葉に微笑みながら、遺跡を駆けていく。


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