第87黒 性格の悪い女達
ラグナ・セクト遺跡の深部。
崩落によって生まれた空洞、砕けた石柱、半ば埋もれた古代の紋様。
魔力の残滓が、空気に薄く漂っている。
その“歪みの中心”。
ミラが身を捩る。
「こんな拘束……!」
指の宝石が一斉に輝く。
《魔力増幅 マナ・アンプリファイ!!》
魔力が膨れ上がり空気が震える。
だが――
「……だから無駄よ、それ」
笑うヴェルミナの足元に広がる魔法陣。
――《呪詛結界 カース・サークル》
それは単なる拘束ではない。
ミラの魔力が“流れる前に”、吸われていく。
「ここ、私の“術式の内側”だから」
「……はっ」
ミラが笑う。苦しみながらも見下すように。
「……本当に性格悪い女ね」
「フフッ…よく言われるわ」
ヴェルミナが不敵に笑う。
「あなたも大概だけど」
空気が、冷える。
「……舐めないで」
ミラの指が、わずかに動く。
完全拘束のはずの指先。
だが――宝石が一つ、砕ける。
《強制解放 リリース・ブレイク!!》
魔力が爆ぜ、呪詛の一部が、弾け飛ぶ。
「っ……!」
ヴェルミナの眉が、わずかに動く。
「へぇ……自傷式ね」
ミラの指先から、血が滴る。
「やるじゃない。拘束を内側から破壊するなんて」
「当然でしょ?」
ミラが立ち上がる。
まだ完全ではないが――動ける。
「私は“選ばれた側”なのよ!
あなたみたいな“出来損ない”と一緒にしないで!」
ミラの宝石が、再び光る。
「……その言葉、ウィザーを思い出すわね。」
ヴェルミナの笑みが、深くなる。
「でも、あなたじゃ、遠く及ばない。」
「…いいわ。徹底的に壊してあげる。」
ヴェルミナの魔力が、変質する。
《魂縛 ソウル・バインド!!》
空間が歪みミラの影が――動きを止める。
「っ……身体が動かない!?」
「”身体”じゃないわ」
ヴェルミナが囁く。
「“魂”を縛ってるのよ」
ミラの呼吸が乱れる。
「……なによ、それ……!」
「逃げられないでしょ?」
優しく、残酷にヴァルミナが笑う。
ミラが歯を食いしばりも笑顔は崩さない。
「……上等じゃない」
宝石が一斉に光る。
《領域封鎖 フィールド・シール》
遺跡そのものを利用した魔法が床の紋様が反応しつつ、
空間が閉じていく。
ヴェルミナの目が細くなる。
「へぇ……この空間ごと壊して、逃げるつもりかしら?」
「逃げる?違うわ。この術はあなたを壊す為の魔法よ。」
ミラが言い放つ。
「いいわよ。その勝負、乗ってあげる。」
ヴァルミナの瞳に、狂気と安堵が混ざる。
呪詛と宝石魔術、二人の魔力が衝突し空間が軋む。
「さあ――」
ヴェルミナが囁く。
「どっちが“上”か、決めましょう?」
ミラが嗤う。
「フン、勝つのは私よ。」




