第88黒 追い詰めたはずだった
――ラグナ・セクト遺跡の深部。
ヴァルミナの呪詛とミラの宝石魔術が、互いに軋み合う。
その均衡を――
先に崩したのは、ミラだった。
《領域封鎖 フィールド・シール》――完全展開!!
ミラの足元に古代遺跡の紋様が、一斉に発光する。
紫と金の光が絡み合い、空間が軋む。
「……っ」
ヴェルミナの眉が、わずかに動く。
「あなたの呪詛……確かに強力、でも――
ここを、どこだと思ってるの?」
「遺跡よ?つまり支配権は私にあるってこと。」
その一言で。
空間の“支配権”が、揺らぐ。
「地の利はあんたにあるってわけね…」
ヴェルミナが低く呟く。
「フフッ…そういうこと」
ミラが嘲笑う。
《遺跡共鳴 ルイン・レゾナンス!!》
壁、床、天井――
すべての紋様が、脈動し
遺跡そのものが、ミラの魔術回路に組み込まれる。
「っ……!」
ヴェルミナの呪詛が、軋む。
「呪詛の流れ……乱されてる……?」
「正解。あなたの術式、“外部供給型”でしょ?」
ニヤリと笑う。
「だったら――環境をいじれば、崩れる」
「くっ…呪詛結界、再構築――」
ヴェルミナが術式を組み直す。
だが――
「残念、無駄よ。」
ミラの指が弾かれる。
《重力拘束 グラビティ・バインド!!》
重力でヴェルミナの身体が、床に押し付けられる。
「っ……!」
膝が砕けそうな圧に呼吸が止まる。
「あら、さっきまでの余裕、どこ行ったの?」
ミラが見下ろす。
「でもこんなんじゃ終わらないわよ。
《魔力増幅 マナ・アンプリファイ》――重ね掛け」
ミラの宝石が、次々と光り圧重力が、さらに増す。
床がひび割れ、ヴェルミナが倒れ込む。
そんな彼女を嘲笑いながら、ミラがしゃがみ、顔を近づける。
「ねぇ?あなた、“強い側”にいたことないでしょ?」
囁くように。
「ずっと追われて、逃げて、必死に足掻いて」
くすり、と笑う。
「だから視野が狭いのよ」
ヴェルミナは、息を荒くしながらも――笑う。
「……よく喋るのね。」
「余裕があるからよ。あなたと違って」
立ち上がり笑うミラ。
「それじゃあ、そろそろ終わりにしましょうか?」
《魔力圧縮槍 マナ・ランス》
空間から、槍が生成され
一直線に――ヴェルミナへ。
「……っ!」
「《呪詛防壁――》」
だが、間に合わない。
――ドンッ!!
直撃しヴェルミナの身体が壁に叩きつけられ、石が砕ける。
「……フフッ…あっはははは」
勝利を確信したミラが高らかに笑う。
「こんなもの?」
高揚した表情でミラが見下ろす。
崩れた瓦礫の中でヴェルミナが、動かない。
「拍子抜けね、リィナの仲間っていうから、もう少し楽しめると思ったのに」
宝石が、再び光る。
「でもこれで終わり、きっとモナーク様も褒めてくれるわ。」
その瞬間、瓦礫の中から――
「……ふふ」
小さな笑い声が響き、ミラの眉が、わずかに動く。
「やっと……見えたわ。」
その声の主、ヴェルミナがゆっくりと顔を上げる。
血を流しながらも不敵に笑っている。
ミラの瞳が、細まる。
「……何?」
「あなたの魔術……その全てが」
ヴェルミナの瞳が、妖しく光る。




