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黒のカサブランカ ――裏切られし女勇者、闇に堕ちて魔王となる――  作者: 小鳥遊 千夜
第二章 二人目のメインターゲット 大司祭、ビション=ヴァルテス編

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85/113

第85黒 全対象、同時ロック

 

 崩れた塔の上空。


 斬撃と魔弾が衝突し、爆ぜた煙が濃く広がる。


 視界は奪われ、魔力の流れも乱れる。

 だが――それは同時に、“均された視界”でもあった。


 誰もが見えない。

 だからこそ――動く者がいる。


「遅くなりましたぁ」


 ふわり、と。


 煙の層を裂くように、シルフィが姿を現す。


 リィナの斜め後方。

 狙撃線の延長に割り込み、背後を守る位置に着く。


「……援護、入りますねぇ」

 シルフィが笑う。


 その視線はすでに――マリオンの癖を捉えている。


「今がチャンスですね!」

 リディアが地面を蹴り、瓦礫を砕き、一直線。

 

 ≪漆黒疾走(ダーク・チャージ)


 煙を突き破り、距離を強引に潰す。


「っ……接近戦?」


 マリオンの瞳がわずかに揺れ、スコープ越しの“絶対距離”が崩れる。


「非効率ですね…」


 だが判断は一瞬。

 銃口を下げる――その刹那。


「逃げ場は与えない!!」

 リディアが跳躍。


 上空からの一撃。


 ――ガンッ!!


 鋼と魔力が激突する。


 マリオンは後退するが、完全には避けきれずに

 肩口をかすめ、血が散る。


「ちっ……、ここは危険域」


 即座に分析し、距離を取ろうとする。


 だが――


「逃がさないわ」


 今度は煙の奥から、リィナが踏み出す。

 すでに位置を読んでいたかのように。


黒百合(ダーク・リリィ・)拘束(バインド)!!≫


 足元から闇の蔓が噴き出し絡みつき、拘束。


「……これは拘束!?」


 マリオンの動きが止まる。


 その隙を逃さずに、シルフィが背後へ回り込む。


「……さぁ、もう逃げられませんよぉ」


 くすり、と笑う。


 リィナが正面、リディアが横。シルフィが背後を取る。


 三方向からの包囲。


 マリオンは静かに分析するが、逃げ道は完全に塞がれている。


「……詰み?」


 視線が僅かに動く。3人の役割は把握済み。


 だが――


「――いいえ」


 瞳に、わずかな光。


「最終手段、実行します。」


 魔導銃が異様な光を帯び、空気が震え魔力が“面”として広がる。


「……まだ奥の手があったみたいね。」

 リィナが眉をひそめながら、剣を握る。


 シルフィが肩をすくめる。

「大技っぽいですねぇ」


 リディアが踏み直す。

「何が来ようと、必ず守り抜く!」


「《魔弾(バレット)領域(・ドミニオン)》展開」


 その一言で、空間が変質する。


 煙が消え見えなかった軌道が、“線”として浮かび上がる。


 縦横無尽に。


「……ここからは、私の領域です」


 リィナの瞳が細まる。

「なるほど……空間そのものが照準になっている」


 ヴェルミナの言葉が脳裏をよぎる。


 “術者の領域内では、法則が歪む”


 つまり――


「回避が成立しない、か」


 その瞬間。


 ――パンッ!!


 放たれた弾丸が空間に沿って、追尾する。


「来ます!」


 リディアが前に出る。


闇の盾(シャドウ・イージス)!≫


 盾で防ぐ――だが直後。

 弾丸が分裂し肩を掠める。


「っ……!」


 衝撃が重なり、リディアの足が後退する。


「これは分裂弾……!」


 さらに。


 ――パンッ!!


 今度は五発。空間そのものが逃げ場を潰す。


「……厄介ね」

 リィナが前へ出る。


 剣を構え、魔力を集中。


黒花絶断(ブラック・ブロッサム)!!≫


 ――ザンッ!!


 空間ごと裂く一閃。

 分裂弾ごと、魔力を断ち切る。


「……魔法ごと斬る、か」


 マリオンの瞳がわずかに動く。


「……ならこれです」


 《遅延屈折弾(ディレイ・リコシュ)!!》


 ――パンッ!!


 先程と違い、今度は遅い魔弾。


「……?」

 リディアが警戒する。


 次の瞬間――弾丸が消えた。


「消えた!?…どこ?」


 リィナが振り向く。


 だが――遅い。


 その死角を突く。


「ふふ、見えてますよぉ」

 シルフィが現れる。


 短剣を“出現点”へ突き刺す。


 キィンッ!!


 弾丸を弾く。


「こういうトリック、大好物ですよぉ」


 三人の連携が噛み合う。


 だが――

 マリオンは焦ることなく、銃を構え直す。


 《多重狙撃(マルチロック・)(ライン)


 空間を走る無数の“線”が一斉に輝き、照準が収束する。


 照準はリィナ、リディア、シルフィ……三者すべてへ。


「……これで終わりです」


「全対象、同時ロック」


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