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黒のカサブランカ ――裏切られし女勇者、闇に堕ちて魔王となる――  作者: 小鳥遊 千夜
第二章 二人目のメインターゲット 大司祭、ビション=ヴァルテス編

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79/113

第79黒 分断された仲間達――それぞれの戦場

 

 ミラの仕掛けた罠に嵌り結界内に分断され仲間達。


 ――ゼルヴァ側


「チッ……くだらん小細工だ」


 ゼルヴァの拳が、遺跡の壁へ叩きつけられる。


 ――ドンッ!!


 だが、砕けない。


 壁はただ、鈍く“揺れる”だけ。


「……?」


 眉がわずかに動く。


 手応えが、ない――


 硬さではない、“届いていない”。


「石ではないな……これは」


 拳を壁に押し当てたまま、低く唸る。


 触れているはずなのに、薄くずれている感覚。


 まるで、別の層に指を突っ込んでいるような――


「……ほう」


 金の瞳が細まる。


「なんらかの術の類いか…」


 理解した瞬間、口角がゆっくりと吊り上がる。


「フン、面白い」


 背中の翼が、わずかに開き魔力が膨れ上がる。


 地面が軋み、空気が震える。


「ならば――まとめて押し潰すまでだ!」


 拳に、竜火が宿る。


 “届かないなら、届くまで歪める”


 暴力そのものが、空間をねじ伏せようとしていた。



 ――シルフィ側


「……これは」


 シルフィはしゃがみ込み、床へ指を滑らせる。


 石の感触。


 だが――視線は“影”へ。


「……普通の壁ではないようですねぇ」


 それどころか、わずかに“引っかかっている”。


「ふふ……なるほど」


 小さく笑う。


 空間をなぞるように、視線を巡らせる。


 見えないが、確かにある。


 細い糸のような魔力の流れ。


 それが格子状に張り巡らされている。


「術式を重ねられるようですねぇ…」


 指先が止まる。


「でも、完全な壁じゃない」


 影が、そこだけ“自然に落ちている”。


 つまり――


「……通れる場所はあるということですねぇ」


 くすり、と楽しげに短剣を抜く。


 影に溶ける。


「リィナ様」


 小さく、柔らかく。


「少しだけ待っていてくださいねぇ」



 ――ヴェルミナ側


「……ああ、最悪」


 ため息


 だが、その瞳はすでに冷えている。


 状況を“受け入れた者”の目。


 周囲を見渡す。


 砕けた壁画や柱、瓦礫――それらは“正常”。


「問題はその上ね」


 指先に魔力を灯し空間へ触れる。


 ピリ、とした違和感。


「……結界じゃない」


 眉がわずかに動く。


「これは位相術式」


 重ねられた“もう一つの空間”。


 現実に干渉しているが、直接は触れられない。


「厄介ね。しかもこれ……」


 目を細め術式の組み方や流れを読み取る。


「……性格悪いわね、この術者」


 くすり、と笑う。


「嫌いじゃないけど」


 目を閉じ集中し、魔力の流れを追う。


 空間の奥、歪みの中心。


 細い糸のように張られた“核”。


「……見つけた」


 ゆっくりと杖を構え、魔法陣が展開される。


「逃げられると思わないでね?」


 その声は、静かに沈む。


「術は、必ず“組んだ人間”に繋がってる。」


 ならば――


「そこから壊すだけよ」



 ――リディア側


 重い静寂。


「……不覚、敵の術中に嵌るなんて…」


「でもここでグズグズしてるわけにはいかない。」


 リディアは周囲を見渡す。


 ここは完全な孤立ではない、微かに感じる。


 仲間達の“気配”。


 遠いようで、すぐ傍にある。


「……位相隔離か」


 低く呟く。


 だが、迷いはない。


 むしろ――


「好都合だ」


 剣を抜き構える。


 視線は“壁”ではない。


 “気配の重なり”へ。


「見えているのなら――」


 剣を振り下ろす。


 ――ガンッ!!


 剣の音が響くが壁は砕けない。


 だが、それで構わない、狙いは壁ではない――”空間”だ。


「ふむ。届いているようだ。」


 再び。


 ガンッ!!


 今度は、ほんのわずかに――


 空間が“軋む”。


「……やはりな」


 (おそらく、聖騎士の守護の力が術に作用し、

 完全な結界とはならなかったのであろう。…つまり、僅かな亀裂があるはずだ。)


 続く、三度目。


 “ズレ”に合わせて叩き込む。


 ガンッ!!


 その瞬間――


 ビキィ――ッ!!



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