第78黒 狩られる者、狩る者
リィナ達の足元に魔法陣。幾重にも重なった“封印陣”だ。
「――まずいわ。皆下がって!!」
リィナの声が響く。
だが遅い――
空間が“曲がり”、音が消える。
重力の感覚が一瞬だけ歪み――
「くっ……!」
リディアが剣を地面に突き立てるが、足場ごと“ずれる”。
シルフィの姿が霞む。
「……っ、影が切れ――」
途切れる声。
「……っ!」
ヴェルミナが叫ぶ。
「これ……仕掛けられてた!?」
地面が“閉じる”。
ゼルヴァが吠える。
「嵌められた!!罠か――」
その声も断ち切られる。
――外部(同時刻)
瓦礫の奥で
ミラ=ソルティスが、優雅に指を払う。
宝石が一斉に淡く輝く。
「……はい、お疲れ様」
くすり、と笑う。
「“多重位相隔離結界”」
「これで全員、綺麗にバラバラ」
指先で空間をなぞり
まるで玩具を配置するかのように笑う。
「本当に単純で……だからこそ効くのよねぇ」
その瞳が細まる。
「さぁ、始めていいわよ――マリオン」
その背後の高所。崩れた柱の上。
マリオン=ルミナが静かに伏せている。
白銀の髪が風に揺れ無機質な青い瞳が光る。
瞬きすら、ほとんどない。
「ああ。領域、展開」
その一言で。
世界の“ルール”が変わる。
「”魔弾制御領域”――起動」
彼女の周囲に展開される不可視の計算領域。
「対象――リィナ=エーベルヴァイン」
照準、固定。
「排除、開始する。」
仲間と分断された――リィナ。
リィナの視界が戻る。
辺りには瓦礫と崩れた柱。
誰の気配もない。
「……分断された。…やられたわね。」
リィナは静かに呟き一歩、踏み出す。
その瞬間。
――パンッ
乾いた音と共に石が弾ける。
リィナの頬を、風がかすめる。
「……っ」
遅れて理解する。
「これは狙撃……!」
再び。
――パンッ
今度は足元の地面が砕ける。
「……見えない」
リィナの瞳が周囲を見渡す。
高所。瓦礫。影。
だが――
“どこにもいない”。
「距離……じゃないわね」
静かに分析する。
「これは……“領域”」
「……なら、どこかに術者がいる筈…」
三発目。
――パンッ
今度は剣で弾く。
火花。
「……なるほど」
リィナの口元が、わずかに歪む。
「いいわ」
ゆっくりと剣を構え、
ダーク・リベリオンが闇を帯びる。
「距離が見えないなら――」
一歩、前へ。
「近づくしかない」
だが――
四発目、五発目。
連続する銃声に石が砕ける。
軌道は正確無比。
「簡単には近づけさせないってわけか、…」
リィナは息を整える。
頬には血、肩に浅い傷。
だが、目は死んでいない。
「……面白いじゃない。それで私を狩るつもり?」
「だったら――」
瞳が、赤く輝く。
「逆に狩ってあげるわ」




