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黒のカサブランカ ――裏切られし女勇者、闇に堕ちて魔王となる――  作者: 小鳥遊 千夜
第二章 二人目のメインターゲット 大司祭、ビション=ヴァルテス編

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第64黒 救いの先にある命の冒涜

 

「……先輩……?」


 かすれた声。


 リディアの瞳に、確かな“意志”が戻る。


 リィナは、ほんのわずかに息を吐く。


「……戻ったのね」


「……わたし……」


 混乱したまま、視線が揺れる。


 その体を、シルフィがすぐに支える。


「無理しないでくださいねぇ」


 優しく抱き寄せる。


「今は休むのが一番ですからぁ」



 エルドの目が、わずかに見開かれる。

「……ああ、なるほど」


 小さく、納得するように呟く。


 視線は、リディアへ。


 だが――そこに感情はない。


「耐久値が想定より低かったようですね」


 淡々とした声で、軽く頷く。


「記録しておきましょう」


 それだけ言うと、興味を失ったように視線を外す。


 完全に、“壊れた道具”を見る目だった。


 そして。


 ゆっくりと――リィナへ。


「ですが……あなたは別です」


 その声音には、明確な“熱”が混じる。


「……美しい」


 ぽつりと零れる言葉。


「精神干渉への耐性、外部命令の解除能力。

「そして――他者への“回復的干渉”」


 一歩、近づく。


「ここまで均衡の取れた個体は、初めてだ」


 目が細まる。


「やはり壊すには惜しい」


 一瞬。


 考えるように、間を置く。


「できれば、そのまま保存したい」


 静かな声。


 だが、それは明らかに――“所有欲”。


 ヴェルミナが小さく笑う。


「……人をまるで虫のように…」


 目が細まる。


「本当に吐き気がするわね…。」


 ゼルヴァが低く吐き捨てる。


「……どこまでも腐った野郎だ」


 エルドは気にも留めない。


「”黒のカサブランカ”」


 その名を、味わうように繰り返す。


「分解して、構造を理解し――」


 一歩。


「できれば、“壊さずに”保存する」


 その言葉の異様さに、空気が凍り

 リィナは静かに剣を構える。


「断る」


 短く、冷たい拒絶。


 エルドは、わずかに頷く。


「では、手段を変更しましょう」


 その瞬間、施設の奥の重い扉が、ゆっくりと開く。


 ――いや。


 “開く”というより、内側から“呼吸するように裂けた”。


 ぐじゅり、と。


 湿った音。


 空気が、変質する。


 鉄と薬品の匂いに混じって――


 生臭い“生命”の匂い。


「……なんだ、あれは」


 ゼルヴァの声が低くなる。


 暗闇の中から、それは現れた。


 巨大な影――


 だが、それは単なる機械ではない。


 装甲はある。

 

 だが、その隙間から――脈打つ肉、蠢く管。

 そして収縮する組織。


 機械と生体が、無理やり縫い合わされている。


 脚部は金属、だが関節は筋肉で動く。


 装甲の内側で、何かが“呼吸”している胸部、


 そこには――


 歪んだ“顔”のようなものが埋め込まれていた。


 目のような器官が、ゆっくりと開く。


 焦点の合わない視線と苦悶のような歪み。


 ヴァルミナが息を呑む。


「……嘘でしょ……」


 エルドは、その前に立つ。


 誇らしげに。


「これこそ、対個体制圧用、改造兵装――

 “グラフト=アーク”」


「私の作品こそが完成された最高傑作です。」


 ゼルヴァが吐き捨てる。


「……ふざけんなよ」


 ヴェルミナも睨む。


「ウィザーの…実験生物を思い出すわね。」


 エルドは、静かに笑う。


「確かに、ウィザーに情報を提供していたのは、私です」


 軽く肩をすくめる。


「ですが――」


 その目が、わずかに細くなる。


「“あんな未完成”と一緒にしないで頂きたいですね」


 声が、僅かに低くなる。


「制御不能で効率も悪い。」


「何よりも、美しくない。」


 一歩、踏み出す。


 その“兵器”の前へ。


「私の作品こそが――」


 手を、軽く触れる。


 装甲ではなく、“肉”の部分に。


 びくり、と反応するそれ。


「完成された最高傑作だ」


 その言葉と同時に、兵器が、低く唸る。


 いや――


 “苦鳴”に近い音。


 ヴェルミナが顔を歪める。


「……最低ね」


 エルドは、そのまま内部へと乗り込む。


 装甲が閉じ、肉と金属が擦れ合い、絡みつくように接続される。


「接続、良好」


 エルドの声が、内部から響く。


 だがそれは――


 どこか“二重に聞こえる”。


 機械と、生体。


 二つの声が重なっている。


 機体の“目”が開く。


 赤ではない。 濁った、血のような色。


「……さて」


「予想外の結果が出る実験ほど――」


 わずかに、笑う。


「価値がある」


 リィナは一歩、前へ出る。


 その目に、迷いはない。


「本当吐き気がするわ。あなたが踏みにじった命――」


 剣を構える。


「その全て、ここで終わらせる」


 兵器が、ゆっくりと動き地面が軋む。


 内部で、何かが“叫んでいる”ような振動。


 戦いは――


 もはや戦闘ではない。


 “冒涜”との対峙だった。



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