表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒のカサブランカ ――裏切られし女勇者、闇に堕ちて魔王となる――  作者: 小鳥遊 千夜
第二章 二人目のメインターゲット 大司祭、ビション=ヴァルテス編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

63/92

第63黒 命令と記憶の狭間で

 

 エルドの目が、わずかに見開かれる。


「……興味深い」


「破壊ではなく、制圧……」


「しかも、致命傷を避けている」


 メモを取る手が、わずかに速くなる。


 だが、リィナは見ていない。

 ゆっくりと、リディアに近づく。


 膝をつく。


「……リディア」


 反応はない。


 だが、呼吸はある。


 手を伸ばす。


「今……、あなたを取り戻すから」


 リィナは静かに目を閉じる。


奪魂の契約(アブソーブ・リンク)!!》



 黒い魔力が、ゆっくりと広がる。


 だがそれは、攻撃ではない。


 “繋ぐ”力。


 リディアの胸元に触れ、魔力が流れ込む。


 同時に――


 流れ込んでくる。


 大量のノイズ。


 命令。

 抑圧された意識。

 無理やり塗り替えられた“思考”。


「……っ」


 リィナの眉が歪む。


(……深いわね)


 だが、引かない。


「……全部、引き剥がす」


 魔力を強める。


「これは命令じゃない」


「……“契約”だ」


 声が、静かに響く。


「あなたが、あなたでいるための」


「私との繋がりよ」


 ――その瞬間。


 世界が、反転する。



 ◆



 暗闇。


 音も、光もなくただ、冷たい空間。


 その中心に――


 銀髪の少女が、膝を抱えて座っている。


 だが、その輝きは失われている。


「……リディア」


 リィナの声が、そこに落ち

 少女が、ゆっくりと顔を上げる。


 虚ろな瞳。


「……命令、待機……」


 反応はある。


 だが、それは“彼女”ではない。


「…違うでしょ」


 リィナは、一歩踏み出す。


「それは、あなたの言葉じゃない」


 その瞬間、空間に亀裂が走る。


 ――命令。


 ――排除。


 ――従え。


 無数のエルドの声が、重なり

 黒い鎖のようなものが、リディアの体に巻き付く。


「……っ」


 わずかに、表情が歪む。


 リィナは、歯を食いしばる。


(……ここまで、侵されてるのね……!)


 だが。


「……それでも」


 ゆっくりと、手を伸ばす。


「それでも、あなたは消えてない」


 一歩、また一歩。


 鎖が、唸る。


 ――接触禁止。

 ――対象、排除。


 空間そのものが、リィナを拒絶する。


 だが、リィナは止まらない。


「ねえ、……リディア」


 声を、落とす。


「覚えてる?」


 少女の瞳が、わずかに揺れる。


「……朝の訓練」


 一歩、近づく。


「何度倒れても、立ち上がってた」


 さらに一歩。


「誰よりも真っ直ぐで」


「誰よりも、不器用で」


 手が、届く距離。


「そして――」


 そっと、頬に触れる。


「誰よりも、“騎士”だった」


 その瞬間。


 鎖が、軋む。


「……っ……」



 少女の瞳に、光が戻りかける。


「……せ……ん……ぱ……い……?」


 かすれた声。


 リィナの表情が、崩れる。


「……そうよ」


「やっと、見つけた」


 だが――


 再びバキン、と音がなり、鎖がさらに強く締まる。


「ノイズ排除」


「自己修正開始」


 リディアの目が、再び濁る。


「……だめ……」


 リィナが、首を振る。


「戻るな……!」


 強く、手を握る。


「あなたは――道具じゃない!」


 声が、響く。


「あなたの剣は誰かを守る為の剣、

 誰を傷つけるものじゃないでしょう!」


 空間が、震え

 少女の瞳が、大きく揺れる。


「……わ……たし……」


 鎖に、ひびが入る。


「……まも……る……」


 さらに、ひびが広がる。


 リィナは、静かに言う。


「戻って…」


 一歩も引かずに。


「あなたは――」


 一瞬、言葉が詰まる。


 だが。


「仲間よ」


 その一言。


 ――鎖が砕け、粉々に弾け飛ぶ。


 そして黒いノイズが、消えていく。


 少女の瞳に、光が戻る。




「……っ……あ……」


 呼吸が、戻る。



「……せんぱい……?」

 はっきりとした声。


 リィナの目が、わずかに揺れる。


「……ええ」


 微笑む。


「おかえり、リディア」



 その声は、もう――



 無機質ではなかった。


 戻ってきた。


 確かに、“彼女”が。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ