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黒のカサブランカ ――裏切られし女勇者、闇に堕ちて魔王となる――  作者: 小鳥遊 千夜
第二章 二人目のメインターゲット 大司祭、ビション=ヴァルテス編

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45/92

第45黒 運用される街――魔導機械国家グラン=ゼイル

 

 帝国領、外縁都市――灰都グラン=ゼイル。


 幾つもの巨大な魔導炉が聳え立ち、空は排熱煙で常に鈍色の煙に覆われている。


 魔力を圧縮し、機械へと流し込む巨大炉から吐き出されるそれは、

 空気そのものを濁らせ、都市を重く沈ませる。


 一方、石造りの街並みは整然としている。


 だが、その規則性は美しさではない。


 “管理”と“効率”のために組まれた配置。


 ここは――軍事国家の外縁。


 魔法と機械を融合させた“魔導機械”によって支配された都市。


 生きている街ではない。


 “運用されている街”だった。



 リィナたちは、外れの高台からそれを見下ろしている。


「……ここが帝国。」

 リィナが呟く。



 カイゼルが鼻で笑う。

「相変わらず、趣味の悪い場所だな」


「見えるだろ?

 あれ全部、“魔力を流すための器官”だ」


 少し顎をしゃくる。


 街の各所に設置された塔、壁面に走る金属管、規則的に巡回する兵影。



 ヴェルミナが静かに頷く。


「聞いた事があるわ。

 街そのものが一つの魔術式……いえ、それ以上ね」


 少しだけ目を細める。


「魔法と機械を融合させた国家――“魔導機械国家”とったところかしら?」


 カイゼルが肩をすくめる。


「その通りだ。そしてここでは人間の代わりに動かすのは鉄の兵士達……」


 遠くを指差す。


「ほら、あれだ」


 遠くには、鋼鉄と石で組まれた巨大な兵装塔。

 その周囲を巡回するのは、人ではない。


 無機質な装甲に覆われ、関節ごとに魔術回路が脈打つ。


 ガシャン、ガシャンと一定のリズムで歩き続けている。


「あれは”魔導機械兵(ネクロ・マキナ)”……

 かつて戦ったことがあるが、中々面倒な連中だぞ」



「力を“道具”として徹底的に使い潰すやり方か……気に食わん」

 ゼルヴァが拳を握る。


 その目には――わずかな殺意。


「潜入経路、確認してきますねぇ」


 シルフィが軽く言う。


「少しだけお待ちを」


 そのまま――影に溶ける。



 街の中では人々は整然と歩いている。

 騒ぎはない。混乱もない。


 だが――


 “笑っていない”。


 視線は虚ろで、どこか焦点が合っていない。


 時折、通りを横切るのは魔導運搬車。

 魔力で駆動する無音の車輪が、物資や人員を運んでいる。


 その横を、魔導機械兵が巡回する。


 人間と機械が混ざり合いながら――しかし主導権は明らかに“機械側”にあった。


 シルフィは屋根の上からそれを見下ろす。


「……気持ち悪いですねぇ」

 誰にも聞こえない声で呟く。



 その時――鐘の音が鳴る。


 重く、低く。


 街中の規則正しく設置された、

 拡声魔導装置からその音が増幅される。


 人々の動きが、一方向へと流れ始める。


 まるで命令されたかのように。


「何かの集まりみたいですねぇ」

 シルフィは、音もなくその流れに紛れる。



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