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黒のカサブランカ ――裏切られし女勇者、闇に堕ちて魔王となる――  作者: 小鳥遊 千夜
第二章 二人目のメインターゲット 大司祭、ビション=ヴァルテス編

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111/113

第111黒 また、一緒に

 

 ――聖灰(せいかい)教団最深部。


 ウィザーの瞳から一筋の涙が零れた。

 だが、その身体は止まらない。


 ビションの術式が全身を縛り上げ、白銀の魔力が礼拝堂を震わせる。


「やめて……!来ないで……リィナ……!」


  次の瞬間、幾重もの魔法陣が空間を埋め尽くした。


三重魔術同時行使トリプル・スペルキャスト


 ウィザーの意思とは裏腹に、魔法だけが次々と放たれる。


 《上級光魔法・光槍雨ルミナス・レイン

 《上級炎魔法・灼熱魔弾インフェルノ・バレット

 《上級土魔法・重圧結界グラビティ・フィールド


「くっ……!」


 それでもリィナは止まらない。


黒花絶断ブラック・ブロッサム!!》

 闇の斬撃が光槍を切り裂き、魔法陣そのものを断ち割り、礼拝堂が激しく揺れた。


「見事でしょう?彼女の意識を残しつつも、

 肉体は私の支配下……これこそが救済ですよ。」

 ビションは静かに微笑んだ。


「黙れ……」

 リィナの声が震える。


「仲間を……利用するなぁぁッ!!」

 黒い魔力が爆発した。


 その叫びにウィザーの瞳が僅かに揺れ、

 必死にビジョンの支配から逃れようとしている。


「ごめんなさい……私は……」


「まだ抵抗しますか?……ですが、無意味です。」

 ビションが術式を強め、白銀の鎖がさらに食い込みウィザーは苦悶の声を上げた。


「ぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 今度は天井を覆う巨大魔法陣を展開する。


《最上級闇魔法・破滅(エンド・)の終焉(カタストロフィ)!!》

 黒き終焉の魔力が渦を巻く。


「あれは……!」

 リィナの表情が変わる。

 暴走すれば、ウィザー自身も消滅する程の魔法だ。


「ウィザー!!」

 リィナは一直線に駆け出した。


 闇の奔流の中へ、血を流しながら前へ進む。


黒龍断閃ヴァル・ノワール!!》

 一閃が闇を切り裂くが、それでも術式は止まらない。


「来ないでぇ!!私はまた貴方を傷つけてしまう!そんなのはもう嫌なの!」

 ウィザーは泣き叫ぶ。


「大丈夫、……私が必ず止めるから!」

 リィナは叫ぶ。


 ウィザーの瞳から涙が溢れた。


「リィナ…………私、本当はずっと後悔してた。

 …あなたが羨ましかった、悔しかった。でも……」


 小さく笑う。


「貴方は……私の大切な友達だった。」


「……知ってる。」

 リィナは涙を堪えながら頷く。


「その友を自らの手で葬れるのですよ、さぞ本望でしょう?」

 ビションが冷たく告げ、ウィザーの右腕が強制的に持ち上がる。


 だがその刹那、ウィザーは微笑んだ。


「アンタの好き勝手にはさせない。

 最後くらい……私の意思で決めさせて。」


 僅かに術式へ抗い、自ら胸を指差す。


「まさか、私の支配に抗うとは…!?」

 ビジョンが少しだけ驚いたような表情を浮かべる。


「さぁ、リィナ……今のうちに…。」


「分かってる……!」

 リィナは涙を流しながら黒剣を構える。


「……ありがとう」

 そんな様子をみてウィザーは優しく笑う。


 《黒百合斬リリィ・エッジ!!》


 黒き花弁を纏う闇の剣閃がウィザーの胸の核を貫き

 光が砕け術の呪縛から解き放たれていく。


 リィナがウィザーを抱き留める。


「ウィザー!」


 術が解け消えていく身体でウィザーは薄く笑った。


「なに……泣いてるのよ。私はもう死んでるんだから、気にする事はないわ。

 ……あんたは進みなさい。私の分まで…」


「ええ、分かったわ。」


「ねぇ、リィナ……」


「なに?」


「今度生まれ変わったら……」

 ウィザーが少しだけ照れたように笑う。


「もう少し素直になれるかな?」


「……ええ。きっと。」


 ウィザーは満足そうに頷き、身体が淡い光へ変わっていく。


「そしたら……また私を、仲間……」


 言葉は最後まで紡がれずに

 ウィザーの身体は光となって静かに空へ溶けていく。


 リィナは、その光を見つめたまま、小さく笑った。

「……馬鹿ね。そんなの、決まってるじゃない。」


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