表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒のカサブランカ ――裏切られし女勇者、闇に堕ちて魔王となる――  作者: 小鳥遊 千夜
第二章 二人目のメインターゲット 大司祭、ビション=ヴァルテス編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
110/113

第110黒 もう一度、あなたを止める

 

 オルフェンとルシオの身体が光となって崩れ去り、

 礼拝堂には黒い魔力だけが、ゆっくりと空間を漂う。


 リィナは黒剣を構えたまま、静かに息を吐く。


「……終わった」


 そう呟いた、その時だった。


「流石ですね、リィナ。過去を乗り越える力は……本物のようだ」

 穏やかな拍手をしながらビションが微笑む。


 その笑みに、リィナの背筋を冷たいものが走る。

「……まだ何かあるの?」


「ええ」


 ビションは静かに頷く。

「むしろ――ここからが本番です」


 右手を掲げ中央の巨大魔法陣が、ゆっくりと回転を始めた。

 白と黒、光と死霊術が絡み合う禁忌の術式。

 空間が軋み礼拝堂を満たしていく。


 そして、魔法陣の中心から一人の女性が姿を現した。


 銀色の長い髪に澄み渡る蒼い瞳。

 かつての勇者パーティの仲間、裏切った人物であり

 そして自らの手で討った、天才魔導士”ウィザー=アルヴァレン”。


 リィナの呼吸が止まる。


「……ウィザー」


 返事はなく、ただウィザーの瞳だけが僅かに揺れた。


「どうです?懐かしいでしょう?」

 ビションは満足そうに笑う。


「……やめて」



「何故です?」

 ビションは穏やかな笑みを崩さない。


「ウィザーは仲間だったでしょう?それを蘇らすなんて…!!」

 リィナが叫ぶ。



 だがビションは静かに首を振る。

「仲間だからこそ、私は彼女を救済したのです。」


「救済……?」


 リィナの瞳に怒りが宿る。


「死者を操っておいて……それが救済ですって?命を、何だと思っている!」

 リィナは剣を握りしめ叫ぶ。


「命を奪ったのは私ではありません、()()()です。」


「……っ!?」

 ビションの言葉に、リィナの肩が震える。


「私は失われた命へ、もう一度役目を与えただけに過ぎません。

 それを悪と言うのなら――」


 ビジョンが静かな笑みを浮かべる。


「もう一度、彼女を殺せばいい。」



「ふざけるなァァァァァッ!!」


 リィナの黒い魔力が爆発し礼拝堂が揺れる。



 それでもビションは表情一つ変えずに静かにウィザーへ視線を向ける。


「さあ、証明しなさい。ウィザー。」


 その瞬間、ウィザーの身体が震えゆっくりと唇が動く。


「……私は……もう……」


 掠れた声。だがほんの僅か、彼女自身の意思が残っていた。


 ビションが小さく息を吐く。


「おや、迷うのですか?…仕方ありません。

 ならば、その迷いも消して差し上げましょう。」


 魔法陣が強く発光した。

 白黒の鎖が現れ、ウィザーの身体へ巻き付く。


「ああっ……!」


 苦しげなウィザーの声が漏れる。

 魂そのものを締め付けるような強制契約魔法だ。


「やめろ!!」

 リィナが叫ぶ。


 しかし術式は止まらない。

 やがて、ウィザーの腕がゆっくり持ち上がる。

 彼女自身の意思ではなく、無理やり動かされている。


 ウィザーの震える唇が小さく言葉を紡ぐ。


「……リィナ。」

 

 涙が一筋だけ頬を伝い苦しそうに微笑む。


「……ごめん。早く……逃げて……」


 そう告げるとウィザーの蒼い瞳から光が消えた。


「ウィザー……」

 リィナの胸が締め付けられる。


 裏切られ、憎み。そして自らの手で討った。

 それでも――彼女は仲間だった。

 誰よりも才能があり、誰よりも努力し、誰よりも苦しみ続けていた。


 リィナは静かに黒剣を握り直す。


「……もう一度。」


 震える声。


「もう一度、私があなたを止める。」


「それでこそですよ、リィナ。」

 ビションが両腕を広げ、愉快そうに笑う。


「かつての仲間同士が刃を交え殺し合う。これこそが私の辿り着いた救済なのです。」


「……ビション。」


 リィナの瞳に宿るのは、怒りだけではなく決意だった。


「覚えていなさい。」


 黒い魔力が協会内を満たす。


「ウィザーを止める。そして、そのあとで――」


 黒剣を真っ直ぐビションへ向ける。


「あんたも、この手で終わらせる!!」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ