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黒のカサブランカ ――裏切られし女勇者、闇に堕ちて魔王となる――  作者: 小鳥遊 千夜
第二章 二人目のメインターゲット 大司祭、ビション=ヴァルテス編

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109/113

第109黒 答えは、この剣に


 リィナが剣を構える。


 その瞬間だった――

 礼拝堂の柱の陰から、乾いた銃声が響く。


 パン、パン、パンッ!


「死ねぇぇぇ!!」

 オルフェンが銃を構えたまま、隠れた位置から連射する。


 ギィンッ、ギィンッ、ギィンッ!

 火花が散り、リィナの黒剣が弾丸を弾き飛ばす。


 リィナが距離を詰めてくる。


「当たれよ! 当たれってんだよ!!」

 オルフェンが再び引き金を引く。だが――


「遅い」


 次の瞬間、リィナの姿が消えた。


「なっ――」


 ズバァァァッ!!


 黒い一閃。

 柱の陰に逃げ込んだはずのオルフェンの肩口が深く裂ける。


「ぐあぁぁぁっ!!」


 銃が床に落ち、オルフェンは血を撒き散らしながら後ずさる。

「くそっ……!」


「子爵殿、下がってください」

 ルシオが静かな声が割って入り、蒼い魔法陣をいくつも展開する。


「ここからはボクの番です。」


 彼の指先が、空をなぞった。


「三属性連鎖魔法――」


 魔法陣が一段、二段、三段と連なって輝きを増す。


「燃えろ――《紅蓮爆球フレア・バースト》!!」

「凍てつけ――《氷槍群アイシクル・ランサー》!!」

「貫け――《雷轟撃サンダー・ストライク》!!」


 灼熱の火炎に無数の氷槍、そして雷撃が走る。

 

 三つの属性が連鎖し、逃げ場のない暴風となってリィナへ襲いかかった。



「終わりです」

 ルシオが笑う。


 だが、煙の中から黒い魔力が噴き上がった。


「……っ!?」

 リィナが一直線に駆け、真正面から迫る。


「馬鹿な!押し切るだと!?」


 ルシオが即座に次の魔法陣を重ねる。


「くっ…《聖光(ホーリー・)多重障壁(ルクス・ウォール)》!」

 幾重にも重なる光壁。


「無駄よ」


 黒剣が振るわれ、光壁が次々と砕け散る。


「あり得ない……!ボクは天才なんだ!」



()()()()()のは、”ウィザー”よ」

 リィナが一気に踏み込む。



「……っ、黙れ!あいつだって死んだ!死んだヤツに負けるボクじゃない!」

 ルシオの顔が歪んだ。


 蒼い魔力が、怒りと嫉妬でさらに膨れ上がる。


「蒼光第七位階――」


 魔法陣が十重二十重に重なる。


「――≪蒼雷終焉グラン・テンペスタ・フルバースト!!!≫」


 蒼雷が礼拝堂全域を呑み込み、

 柱が砕け、天井の装飾が吹き飛び、雷がすべてを焼き尽くす。


「これで……!どうだ!!」

 ルシオが叫ぶ。


 だが、蒼雷の中心から、黒炎が裂けるように噴き上がった。


「……っ!」


 言い終える前に。


 ズァァァァァッ!!


 黒い斬撃がルシオを両断した。


「が……っ!」

 ルシオは膝をつき、震える手でリィナを睨む。


 リィナが静かに見下ろす。

「あなたは最後まで誰も認めなかった。だから負けるのよ。」


「黙れ……!ボクは…!ボクの方が……!ウィザーより……!」

 ルシオの顔が歪み、身体が光へと崩れていく。

 最後までその名を越えられないまま、ルシオは消滅した。


 その様子を見たオルフェンは、壊れた祭壇の陰から這い出るように身を起こした。

 血に濡れた肩を押さえながら、歯を剥き出しにして笑う。


「はっ……!やっぱりだ。

 正義だの何だの、綺麗事を並べてもなぁ俺達を殺した時点で、

 結局お前も俺と同じだ!同類なんだよ!!」


 リィナは何も言わずにただ、歩く。


「違うって言うのか?」


「何とか言ってみろよ、勇者様ァ!!」


「……同類かもしれない」

 リィナの黒剣が静かに持ち上がる。


「ハハハッ!そうだろう?」

 オルフェンの笑みが歪む。


「でも…私の仲間もお前に壊された人達も違う」


 リィナの瞳は揺れない。


「私は、その人達の想いを背負ってる」


 リィナが黒剣を構える。


「……だから進む。」


 オルフェンの顔から血の気が引く。


「ひっ……!来るな……!来るなぁぁぁ!!」


 黒剣が振るわれ、オルフェンの身体が光に裂けた。


 最後まで、誰かの為ではなく、自分の主張だけを叫びながら――

 オルフェンもまた、光となって消えた。



 礼拝堂に残るのは、ただ二人。


 黒剣を構えるリィナと、その一部始終を静かに見届けていたビションだけだ。






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