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黒のカサブランカ ――裏切られし女勇者、闇に堕ちて魔王となる――  作者: 小鳥遊 千夜
第二章 二人目のメインターゲット 大司祭、ビション=ヴァルテス編

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108/113

第108黒 それでも私は


 ――聖灰教団、最深部。


 ビションの白黒の魔法陣が脈動する。


 歪んだ救済である――死者蘇生術。

 ビションの魔力によって呼び戻された二つの影が、ゆっくりと礼拝堂へ降り立った。


 一人は肥え太った男、宝石だらけの指輪に脂ぎった笑み。

 シルフィを捕らえていた奴隷商を裏で束ねていた男、”オルフェン=グレイスナー”子爵。


 そしてもう一人は蒼い法衣に長い青銀の髪。

 鼻につく笑みの王国魔法協会幹部、蒼光魔導師の”ルシオ=アストレア”。


「……」

 リィナの表情が険しくなる。


「どうです?()()()()()でしょう。」

 ビションが静かに告げた。


「ひひひひひ……”黒のカサブランカ”じゃねぇか?」

 オルフェンが首を鳴らす。


 

「やれやれ。死んだと思ったらまた君ですか?…本当に縁がありますねぇ」

 ルシオは肩を竦めた。


 リィナは剣を構える、


 だが、二人は動かずにただ笑っている――それが気味悪い。


「そういや聞いたぜ?お前、今じゃ復讐者なんだってなぁ?」

 オルフェンが下卑た笑みを浮かべる。


「元勇者様が、闇の力使って殺戮ってか?笑えるぜぇ。ひひひひひ!」


「……黙れ」


「俺は金のために人を売る!お前は復讐のために人を殺す!結局、お前も俺と同じなんだよ!」

 オルフェンが両手を広げる。


 リィナの瞳が細まり、黒い魔力が揺れる。


「子爵殿、少し違いますよ。」

 オルフェンに続くようにルシオが鼻で笑う。


「彼女は最初から愚かだったんです。」



「力なき者を救って何になる?才能ある者が世界を回している。

 世界とはそういうものなのに」


 リィナは睨む。


 ルシオは笑みを浮かべながら続ける。


「でも君は違った。弱者も、落ちこぼれも、全員救おうとした」

 肩を竦める。


「全くの非効率、挙句の果てにそんな奴らに裏切られて、今じゃただの人殺し…」


 リィナの拳が震える。


「実にバカじゃないですか!!ハハハハ!!!」

 ルシオは愉快そうに笑う。


「いいですか?君は弱者を信じたから負けたんですよ。」


 礼拝堂が静まり返る。


「もし僕なら、仲間なんて信用しない。

 所詮、自分が上へ上る為の踏み台でしかないんだから!」


 リィナの脳裏に、かつての仲間達が浮かぶ。


「全て結果が証明しているんですよ。君の正義は失敗だったと…」

 ルシオは笑った。


「…違う」

 リィナが低く言う。



「違う?一体何が違うんですか?」

 ルシオが嗤う。

 

「仲間は?国は?民は?…何か守れましたか?」


 1つ1つ、刃のような言葉でリィナの傷口を抉る。


「何一つ守れてないじゃないですか?」



 オルフェンが大笑いする。


「そうだそうだ!正義だの理想だの言ってよぉ!

 結局全部失ったんだろう?実に惨めだなぁ…勇者様!」


「…黙れ」


 だが二人は止まらない。


「お前が助けた奴らもどうせ死んだんだろ?

 人間なんぞ結局、自分さえ良ければ周りがどうなろうと構わねぇ、

 自分勝手な生き物だからなぁ!」

 オルフェンが笑う。


「確かに……私は守れなかった。」

 リィナが静かに言った。


「多くのモノを失ったし、間違えたりもした…」

 黒い魔力が溢れる。


「でも、だからってお前達みたいにはならない!」

 その瞳は揺れていなかった。


「守れなかったから諦める?裏切られたから信じない?

 弱いから切り捨てる?」


 リィナは首を振る。


「そんなの、()()()()()()よ。」


 その言葉にオルフェンとルシオの笑みが消える。



 ルシオの顔が歪む。


「天才の僕が逃げてるだと……!」


「天才?ウィザーの才能を妬んでいたあなたが?」

 リィナが睨む。


「なっ……!?」

 ルシオの目が見開く。


()()()自信がある人間は、()()()()()()()()()()。」


 ルシオの表情が崩れる。


 図星だった――


「黙れッえええ!!僕は…僕は天才なんだァァ!!」


 ルシオの身体から魔力が溢れ礼拝堂を埋め尽くす魔法陣。

 


「そうだ。殺せぇ!!」

 オルフェンも叫ぶ。



「来なさい。」

 リィナは静かに剣を構え、黒い魔力が剣を包む。


「今度こそ、終わらせてあげる」


 礼拝堂全体が震えるほどの殺意がぶつかり合う。


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