表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒のカサブランカ ――裏切られし女勇者、闇に堕ちて魔王となる――  作者: 小鳥遊 千夜
第二章 二人目のメインターゲット 大司祭、ビション=ヴァルテス編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
106/113

第106黒 影が選んだ答え


 闇に沈んだ回廊。


 灯火は消え、聞こえるのは遠くの爆発音だけ。

 だが辺りは闇が覆い、二人の殺意が静かにぶつかり合っている。


「くくっ、やっぱりこういう暗い場所はキミに似合うね」

 ヴァレンが笑う。



「それは貴方もですよぉ」

 シルフィの声。


 だが姿は見えずに影の中に気配を消している。


「影に隠れて、人を刺す…」

 ヴァレンが肩をすくめる。


「本当に僕達、似た者同士だ」


「一緒にされたくはないですねぇ」


 空気が揺れ、次の瞬間。


 ギィン!!


 ヴァレンが短刀を弾き、その横をシルフィの刃が掠める。


「ッ……!」


「避けますかぁ」


 シルフィが音もなく着地する。


 銀髪が揺れ、短剣が暗闇で光る。

 その姿は、まるで夜に紛れる獣だった。


「怖いなぁ」

 ヴァレンが笑う。


「昔はもっと、迷いがあったのに」


「消えましたよぉ。貴方みたいなのは特に、」

 シルフィが静かに言う。



「言ってくれるねぇ」

 瞬間、ヴァレンの足元が光り、魔法陣が展開する。


影の呪縛(ファントム・バインド)


 影の拘束線が一斉に走る、だが――


「簡単には捕まりませんよぉ」

 シルフィが床を蹴り、影へ身を隠し

 そのまま影からヴァレンを狙う。


「……っ!」

 ヴァレンは間一髪で後退をする。


 次の瞬間、さっきまでいた場所が斬り裂かれる。


「速い……!」


「影が、私を助けてくれますからねぇ」


 シルフィは左右、背後、天井と移動しながら相手を翻弄していく。


「チッ……!」

 ヴァレンが舌打ちしながら、毒針と毒煙を放つ。


 無数の罠が回廊を埋め尽くしていく。


「これならどうだ?」


 更に足持ちに爆裂の罠を仕掛け起動させる。


 いくつもの轟音と爆発。


 だが、煙の向こうから、静かな声。


「……甘いですねぇ」


「なっ――」


 ヴァレンの首筋へ、短剣が迫る。


 ガギィン!!


 咄嗟に受けるヴァレン、

 火花が散り、至近距離で二人の視線がぶつかる。


「キミは…どうしてそこまでやれる?」

 ヴァレンが低く問う。


「仲間の為か?…人間なんて簡単に裏切る生き物なのに?」


 シルフィの瞳が、ほんの少しだけ揺れる。


「……裏切られましたよぉ」


 静かな声。


「…何度も。売られて、殴られて、捨てられて……

 人なんて、嫌いでしたぁ」


 ヴァレンが笑う。


「だったら尚更、分かるだろ?信じる方が損だって」


「ええ。だから昔の私は、貴方みたいに思っていましたぁ」

 シルフィが頷く。


 ヴァレンの笑みが、少し止まる。


「……でも、リィナ様は違った」


 ヴァレンに刃が押し込まれる。


「私が奴隷でも、汚れてても、壊れてても…

 隣に立つ事を許してくれた」


 その言葉にヴァレンの瞳が揺れる。



「だから、私は変われたんです。

 独りじゃなく、誰かの隣に立つって」


 瞬間、シルフィが消える。


「ッ!」


 ヴァレンが反応するよりも早く背後へ回る。


「終わりですよぉ」


 斬撃を受けヴァレンの身体が大きく裂け鮮血は溢れる。


「がっ……!」


 ヴァレンは膝をつき血が床へ広がっていく。


 シルフィは静かに短剣を下ろす。


 ヴァレンは、しばらく俯いていたが

 やがて、小さく笑う。


「……負けたか」


 その声には、もう余裕が無かった。


「キミ、本当に強くなったね」


「貴方が弱くなったんですよぉ。独りで戦い続けたから」

 シルフィが静かに返す。


 ヴァレンが、ゆっくりと窓に映る月光を見上げる。


「仲間か……」


 ぽつり、と――

 その声にはいつもの虚勢が混じっていなかった。


「僕には、それが無かったから……」


 呼吸が浅くなり、身体は冷たくなっていく。


 それでも、ヴァレンは少しだけ笑った。


「キミが少し……羨ましい」


 その言葉にシルフィは静かに目を伏せる。


「……貴方にも、選べる道はあったはずですよぉ」


 ヴァレンは答えず――


 ただ小さく笑ったまま、力尽きる。



 ヴァレンの最期を見届けた後、シルフィは振り返る。



 回廊の最奥、リィナが向かった場所。


 シルフィは短剣を握り直し静かに笑う。


「さてぇ……私も、主のところへ向かいますかぁ」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ