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黒のカサブランカ ――裏切られし女勇者、闇に堕ちて魔王となる――  作者: 小鳥遊 千夜
第二章 二人目のメインターゲット 大司祭、ビション=ヴァルテス編

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101/112

第101黒 誇り無き外道の最期

 

 異形と化したダリオが、咆哮し協会全体が揺れる。

 天井が落ち、紫色の瘴気が空間を満たしていく。


 無数の腕に裂けた口、脈動する巨大な肉塊。


 もはや人の姿ではない。


『アァァァァァアアアアッ!!』


 怪物化したダリオの腕が振り下ろされる。


 ドゴォォンッ!!


 石床が砕け、回廊が崩壊する。


 だが、その瓦礫の中から――ゼルヴァが前へ出る。


 鱗は砕け、肩から血を流しているが、黄金の瞳は一切揺らがない。


「……醜悪だな」


 ゼルヴァが拳を構える。


「だが、貴様にはお似合いの姿かもしれん。」


 ダリオの無数の目玉が、一斉にゼルヴァを睨む。


『壊レテ……!崩レテ……!命ハ完成スルゥゥゥ!!』


 ゼルヴァが鼻を鳴らす。


「フン、壊れた時点で終わっている。

 誇りを失った貴様は、もはや()()ですらない」


 怪物の口が裂ける。


『誇リィ!?ソンナモノガ何ニナルゥ!?』


 瘴気が膨れ上がり無数の呪術陣を展開する。


 辺りには大量の毒と死霊。


 その全てが一斉にゼルヴァへ襲い掛かる。


『死ネェェェェェ!!』


 だが、ゼルヴァは真正面から踏み込んだ。


竜鱗防壁(ドラゴン・スケイル)!!》


 鱗が赤熱し毒を焦がし死霊を弾き飛ばす。


 更にゼルヴァの咆哮が響く。


天空(スカイワード・)突撃(ストライク)!!》


 翼を広げ爆発的加速、一瞬で上空へ。


 ダリオの無数の目が見開かれる。


『ナッ――!?』


 次の瞬間、ゼルヴァが流星のようにダリオに突っ込む。


「終わりだ」


 拳に竜火が宿り、超高密度の魔力で迫る。


 ドガァンッ!!!!


 地面が割れ爆炎が吹き荒れ、ダリオの絶叫が響く。


『アァァァァァァアアアアッ!?』


 肉塊が裂け異形の身体が、崩れていく。

 

 煙のが晴れ、立っているのはゼルヴァのみ。

 崩れゆくダリオを、静かに見下ろしている。


 異形が崩れ、ダリオの身体がかろうじて人の形へ戻っていく。


「……ァ……なん……で……?」


 ダリオが血を吐き震える指を伸ばす。


 笑おうとするが、上手く笑えない。


「なんで……そんな目が……出来るんだよォ……」


 ゼルヴァは答える。


「貴様と違い、俺には背負うものがある。」


 ダリオの目が揺れる。


「それが誇り……か……?くだら……ない……」


 だがその声には、先程までの狂気がない。


 ただ、空っぽだった。


「貴様は最後まで理解出来なかったな。…力でも、恐怖でも、破壊でもない、」


 黄金の瞳が、静かに燃える。


「人を支えるものこそ、“誇り”だ」


 ダリオの顔が歪む。


 笑ったのか、泣いたのか――もう分からない。


「ハ…………医者だった頃の……僕は……」


 そこまで言って、肉体が崩け散り

 風化するように、灰になって消えていく。



 静寂。


 ゼルヴァはその生き様を見届けるようにしばらく黙っていた。


 やがて。


「フン……外道に相応しい最期だったな」


 振り返る。


 崩壊した回廊の先、仲間達の気配はまだ消えていない。


 ゼルヴァの瞳が鋭く細まる。


「……だが、まだ終わらん」


 帝国に奪われた誇り、失われた命を取り戻すまで、復讐はまだ続く――


 ゼルヴァは瓦礫を踏み砕きながら歩き出す。


「待っていろ、リィナ」


 竜人の戦士は、再び戦場へ向かう。


 次の敵を討つ為に。


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