第壱章 第一話 新品廃村
「あっコレ美味しい。ちょっと摘んでこ」
その辺の草や実を食みながら道なき道を呑気に歩く。獣道も良いがせっかくの放浪なのだ。道なんて気の向くままに、踏み外そう。私の征く道こそが正道だ~なんちて。
「人の気配ホントしないな~。痕跡な~んにもないや。結構人里遠いのかな......ん、あ~あるじゃん。コレか。なるほど道理で。見つからない訳だ」
ぴょんっと近くの巨木の太い枝に飛び乗る。
「これは......足跡かな。かなり強いな原生人。こんなにしっかりくっきり跡が残るとかどんだけ脚力あるんだか......この足跡......大分新しいな。ここ一日二日で出来たって感じ。見た感じ結構ギリなんだよね~。木の耐久的に。もう少しで折れちゃいそう。何でこんな強く......あぁなるほど」
足場を砕く程に全力で移動するとなれば話は簡単。切羽詰まっているからに決まってる。
「あの煙......襲撃でも受けたのかな。この人は逃げた......いや、救援を呼びに行ったのかも。まぁいいや。行くか。煙の発生源」
木から木へとぴょんぴょん飛び移り、煙立つ場所へと近づく。
「よっ......ほっ......ていやっ......とっととと......よし。着いたかな」
それなりに距離があった。遠目だと意外と分からないモノだ。近づけば近づくほど、人のものらしき痕跡が沢山見つかる。結構姿形は似てそうだ。
目の前にあるのは小さな集落。木で作られた身の丈を少し超えるくらいはあったであろう高さの壁に囲まれていそうな、小さな集落。故郷よりは大きそうだ。
「静かだなぁ。攻め落とされた後って感じか。この集落の住人が弱いのか......攻めてきたヤツらが強かったのか......ま~探れば分かるっしょ」
随分とボロボロにされた壁を越える。力技でここまでなったらしい。ところどころ潰されている。まるで、手で握り潰したかのような形になっている。
「ひゃ~こりゃ酷い。一面死体ばっか。服装的に大体全部住人かな。結構質素な服だなぁ」
視界には常に死体が映り込む。皆、痛ましい傷が深く深く刻みつけられている。相当強いヤツにやられたらしい。
「武器は落ちて無いな......持って行ったか~。食料も......粗方持ってってそうだな~姿形はホントに似てるなぁ。違うとした中身かな。仏さん開くのやだなぁ。医学書かなんか探して、無かったら開こ」
瓦礫の山をぴょんぴょん飛び越え辺りを見回す。どこもかしこも酷い有様だ。生存者は居なさそう......なんか居るな。ナニアレ。子供?......生き残りか。
「やっほ~お~い!!聞こえてる~!?」
手を大きくブンブンと振りながら声をかける。聞こえてはいるみたい。物陰に隠れちゃった。襲撃者の仲間かなにかかとでも思われてるのかな。
距離はそこまでない。ひとっ飛びで辿り着ける程度の距離だ。と、いうわけで......
「よっと。にゃっはろ~おチビちゃん」
随分と怯えているらしい。すごーく小さく丸まったちびっ子が2人。身を寄せ合って隠れてる。見た目は私達と大して変わらない。それどころかソックリさんだ。目も体も私たちと殆ど同じ。見てくれだけなら同種の人間だろう。
「اھ」
......そりゃそ~よな。言語同じ訳無いよな。え~っと、翻訳魔法翻訳魔法っと。
「あ~あ~あ~テステス。どう?出来てる?」
「......だれ?」
よしよし。良い感じ。ちゃんと機能してるみたい。ばっちぐ~。
「ん?私?ただの放浪者。君たちの敵じゃ無い部類のお姉さんだよ」
おチビちゃん達の警戒心を取り除くには足りないけれど、それでも無害であるということは伝えておかねぱ。
「さてさて、おチビちゃんら。君らはなんてお名前なんだい?」
「......」
だんまりさんだ。ふ~ん。そーゆーことするならお姉さんにだって考えあるもんねー。
「ふっふっふっ~ほりゃーこ~ちょこちょこちょこちょ」
横っ腹の辺りに腕を突っ込みくすぐる。ふっふっふっ~私のくすぐり捌きに耐えられたちびっ子はいなかった。きっとこのおチビちゃんも......あれ?すっごい真顔。なんか憐憫を感じる。
「......敵じゃないんだね」
「お姉さん言ったじゃん敵じゃ無いってさ~ぷんぷん」
なんか残念な者を見るかのような目をされてる。視線が痛いなぁ。誰のためにあんなことをやったと思ってんだい。ぷすぷす。
「えっと、私はリラ。こっちは妹のホルン。よろしく。放浪者のお姉さん」
「リラちゃんにホルンちゃんね。よし。覚えた。髪色が随分と違うね~でも顔は似てるし姉妹?」
リラちゃんは少し薄めの赤髪。一方ホルンちゃんは色が抜け落ちたかのような白髪。私と一緒の色だ」
「うん。ホルンは私の妹なの。髪は元々は私と一緒だったんだけど......昨日の夜にみるみる色が抜けちゃって......」
あ~心因性の若白髪か。一晩でねぇ。噂では聴いたこと無くは無いけどガチであるとは。こっちの人類の特性かな。まぁ調べるのは後にしよっと。
「ふ~ん。まぁ些事っちゃ些事か。村から飛び出て助け呼んだりしにいった子って居る?」
「えっと......知らない」
まぁちびっ子だし当然か。さて、ど~すっかねーこの子ら。近くの人里まで輸送でもするかねぇ。多分あの足跡辿れば着けるだろうし。善は急げっと。
「じゃあさ、近場の集落とか村とか知ってる?案内してくれるんなら連れてってあげるけど」
「えっと……多分、分かる……お願いします」
リラちゃんとホルンちゃんが揃って頭を下げた。かなりちゃんと躾がされてる子達だなあ。撫でたろ。よ~しゃよしゃ。
「さてと、んじゃ、行こっか。あんまり良い感じの抱え方は出来なそうだからね~乗り心地……運ばれ心地?はあんまり良くないだろうけど我慢してね~」
リラちゃんとホルンちゃんを両の小脇に抱える。軽いな~この子達。にしてもホルンちゃんずっとだんまりさんだな~。心因性の失声症とかなのかな。ストレスめちゃくちゃ受けてたみたいだし。
「んじゃ、準備はよろしいかい?おじょ~さんら」
「「……」」
二人が同時に無言で頷いた。これから来る未来を予見したらしい。覚悟の決まった目をしている……気がする。
「んじゃ~れっつご~」
小脇に二人の童を抱えたまま、飛ぶように森の中を駆ける。着く前に衰弱死されたら困るし速く行かないとだねぇ。




