序章 旅立ち
人の居ない世界はもう見飽きた。だから、人の居る世界......いや、知的生命体の居る世界に跳ぼう。
私の知らない文明に、私の知らない姿形をしてる人達に会いに行こう。そういう世界にはきっと、私の知らない景色が沢山あるだろうから。
「え~っと、術式の詳細設計はこんな感じで良いかな~。条件精査術式よし。時空間生成術式よし。その他etc大体よし。おっけ~準備かんりょ~」
複雑で面倒な術式には慣れている。ちゃんとした、丁寧な術式じゃないと、性能が足りないから。
「初めて構築してるからな~これでいいのか悩み所ではあるけれど......まぁやってみない事には分かんないよねぇ」
前例の無い、初めての試み。失敗なんて当たり前。でも、今回は失敗なんてあっちゃいけない。最悪......というか失敗した場合、十中八九私は死ぬ。死にたくなんてこれっぽっちも無い。だから失敗出来ない。
もうやれる事はやり尽くした。精査はこれで100回目だったか......数えてないから分からないや。
「そんじゃ、腹くくりますか~」
一つ、大きく伸びをする。大丈夫。私は死なない。
「術式起動『世界間跳躍』」
辺り一帯が光に包まれる。私の術式から放たれた光だ。込める魔力が多すぎてるとか、そんな感じの理由だろう。
一瞬とも、永遠とも取れる不思議な時間が過ぎ去った頃、私の視界には、先ほどまで居た場所からの景色とは、似ても似つかぬ景色が広がっていた。
「......緑ふっか。や~故郷思い出すなぁ~コレ。集落とか大分遠いでしょコレ。術式はちゃんと機能してそうで良かったけど......メンドイな~。第一原生知的生命体に逢えるの何時になる事やら」
私の視界にあるのは数え切れぬ程に多い植物達。見上げようと頂点の見えぬ巨木、爪に乗るほど小さな葉、甘い匂いを放つ小さく可憐な花。
久しぶりに見た活力溢れる生物達。
「はぁ~やっぱ森の中はイイね~。空気が美味しい。たっぷり吸い貯めしとくか。すぅ~~はぁ~~~すぅ~~はぁ~~~......」
息を吸い込むたびに、少しずつ、体がこの世界に慣れていく......気がする。
「さて、何処行こうかね~。やっぱ人里行きたいよね。人里。ご飯食べたい」
当てもなく、歩くとしよう。放浪とは、そういうものであるはずだ。大した目的の無い旅なのだから。気楽に行こう。




