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ダルマの指が、装置の内部へと触れる。


精密に組み上げられた構造。

ダルマは息を詰めた。


周囲では、再び空気が歪み始めている。


裂け目が、開く。

何かが――来る。


時間が止まったかのような、一瞬。

ダルマは歯を食いしばる。


(今度こそ……!)

指先に、力を込める。

カチリ――

確かな手応え。

次の瞬間。

ざわめきが、消えた。


裂け目は閉じ、歪みは、跡形もなく消え失せる。


風が、戻る。

誰も、すぐには動けなかった。


やがて――

「……終わりか」

土方の低い声。


ダルマは、小さく頷く。

「……うん」


それから、そっと道具を取り出した。


淡い光が広がり、壬生寺の境内を包み込む。

壊れた庭が。軋んだ建物が。

まるで最初から何事もなかったかのように、元へと戻っていく。


僧たちの 念仏を唱える声が大きく震える


やがて――

光が、収まる。

ダルマは静かに振り返る。


「……ぼくたちは、戻るね」


子どもたちが集まる。

不安に満ちていた顔に、わずかな安堵が浮かんでいた。


「ありがとう」

ダルマは小さく頭を下げる。


光が、彼らを包む。


足元から、ゆっくりと消えていく。

「……さよなら」

声だけが、しばらく残り――

やがて、完全に消えた


夜。


土方は、その後始末に追われていた。


食事も取らぬままの土方に、山崎が茶を差し出す。


「副長……その。子どもたちに聞いたことですが」


「ああ。あいつら、“遊びに来た”と言っていたな。“テレビ”とやらで、新選組の寸劇を見たから……とな」


「ええ……そう言っていました」

山崎は、大きく息を吐く。


「ダルマは所詮、人ではない。あの子どもらも 見た目は我らと同じだが……結局は、異界の子ども、ということなのでしょうな」


「……そう思わねぇと、やりきれねえな」


この大騒動――幸い、隊士の死者は出なかった。

だが、それは偶然ではない。


沖田が、原田が、斎藤が、永倉が。自らの命を顧みず、死力を尽くした結果だ。


無事だった――とは、とても言えない。

身体に生涯残る傷を負った者。心に深い傷を刻まれた者。


それは、壬生寺の者たちも同じだった。


僧たちは、ただ念仏を唱え続けていた。

震える声で、祈るように、縋るように。


だが――

御仏は、ただ静かに在るのみであった。


その傍らで、

ダルマの力だけが、あまりにも圧倒的に この場を変えていく。


ダルマも子どもたちも、不思議な光で寺と庭を修復し――

ただ微笑んで、去っていった。


「……正直、腹は立つがよ」

土方が、ぽつりとこぼす。


「力のあるものってのは――そういうもんなのかもしれねえな」

「面白ぇものを見た。……そう思うしかねえ」


「ええ。考えても、どうにもなりません」

ふ、と空気が緩む。


そのとき、


「土方さん」

声がした。


振り向けば、沖田総司。

最前線で戦い、全身に傷を負いながらも――

穏やかに、微笑んでいる。


「どのような苦難があっても、我ら新選組は負けませんよ」

「できることに、死力を尽くせばいいんです」


――実は


沖田総司について、あの未来の娘は――ひとつ、よからぬ“予言”を残していた。


沖田の耳にも、届いているはずだ。


だが。

沖田も、山崎も――何も言わない。



我々は

今日を、明日を、

ただひたすら、全力で生きる。


――そう思う、土方であった。

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