青ダルマと時渡りの箱
静かに障子が開いた。
「……こいつが、例の“青いダルマのからくり”か」
現れたのは土方歳三。
鋭い眼差しが青いダルマを射抜く。
背後には山崎丞が控え、そのさらに後ろで壬生寺の僧侶たちが不安げに様子をうかがっていた。
「名を名乗れ」
低く、冷たい声。
青いダルマは、小さく息を吸う。
「……ぼくは、未来の世で造られた機巧です」
室内の空気が、わずかに張り詰めた。
「人を助けるために作られた……んです」
「未来だと?」
土方の眉が、わずかに動く。
荒唐無稽な話ではある。
しかし、これは人ならぬモノだ。ダルマの形をした機巧の世では、あり得ることなのかもしれぬ。
僧侶の一人が口を挟む。
「まさか、妖の類では……」
――あのおかしな着物の子供たちは何者だ。黒船の …異人の子か?
「ぼくの大事な友達です! お願いです、あの子たちには何もしないで!」
必死の訴え。
山崎が静かに土方へ耳打ちする。
「子供らは別室で拘束中です。
怯えているだけで、武器などは持っておりません」
土方は小さく息をつき、再びダルマに向き直った。
「妙な術や道具を使う様子があれば、容赦はせん」
その時――
廊下の向こうから、荒い足音が響いた。
「副長!!」
障子が勢いよく開く。
「外で妙な騒ぎが起きております!
見たこともない“妖”が現れ――」
ダルマの顔色が変わる。
(まずい……時渡りの箱が、勝手に起動した)
(どうしよう。時の歪みが広がってる……)
土方の視線が鋭くなる。
「ダルマ、詳しく話せ」
「このままだと、この時代に本来ないものが“にじみ出る”んです」
沈黙。
そして、土方が立ち上がった。
「……原田!」
「おう」
「出るぞ!」
そしてダルマを見下ろす。
「お前も来い。子どもがこちらにいるのを、忘れるな」
短く、命じた。




