青ダルマと四人の子供、出現
新選組のお話を書いていたら、孫に ある有名な アニメ映画を観たいと言われ、一緒に楽しんでしまいました。
その余韻で、こんなお話が生まれました。
壬生寺の境内。
まだ朝の空気が残る中、砂を踏む音が規則正しく響いていた。
原田左之助は、十番隊の隊士たちを前に槍を構え、鋭い声を飛ばす。
「腰が浮いてるぞ!踏み込みが甘ぇ!」
隊士たちの動きが一瞬乱れる。
その時だった。
木立の奥――
陽の届かぬ影の中に、何かが“立っている”のが見えた。
原田の目が細くなる。
(……誰だ)
人影にしては、妙に丸い。
青い、手足のついたダルマ?
そして、その腹には不自然な膨らみ――まるで袋のようなものがついている。
さらに、その後ろ。
見慣れぬ格好の子どもたちが、四人。
原田は、無言で一歩前に出た。
その気配に、周囲の隊士たちも気づき、動きを止める。
境内の空気が、ぴたりと張りつめた。
やがて――
その中の一人、尖り顔の少年が、目を輝かせて踏み出した。
「わあ……本物だ……!本物の新選組だ!」
その声は場にそぐわぬほど無邪気で、
だからこそ、余計に異様だった。
「土方さんに、近藤さん、それに沖田総司……いるかなあ」
――その名。
隊士たちの間に、ざわりと波紋が走る。
原田の声が、低く落ちた。
「……止まれ」
一言。だが、鋭い。
子どもたちの足が止まる。
その隙に、別の少女が小さく息を呑み、手を合わせた。
「……すてき……」
ぽつりと、場違いな感嘆。
さらに一人――体格のいい少年が前へ出る。
「うおおー!かっこいい!新選組!俺も入りたい!」
その声と同時に、数人の隊士が刀の柄に手をかけた。
空気が、一変する。
原田は一歩踏み込み、青いダルマの喉元に剣先を当てる。
その時――
青い“それ”が、口を開く
「こ、こんにちは……」
妙に丁寧な声。だが、その姿はあまりに異様だった。
そして――手にしている、小さな箱。
原田の視線が、そこに止まる。
(……あれは)
直感が告げる。危うい“何か”だ。
次の瞬間。
原田は地を蹴った。
片手で剣先をダルマのどもとにあてたまま
一気に間合いを詰め、もう一方の手で箱を掴み取る。
瞬時に 箱を組下の隊士の手にわたす。
「なっ、ちょっと待て!」
だが、もう遅い。
「囲め!」
一斉に刃が抜かれる。
ダルマたちに逃げ場はない。
壬生寺の静寂は、完全に破られていた。




