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#22 誤魔化し/明かし

Side:Yuki


 次の日の朝。

 私はいつものように、公園の前でマユちゃんと合流する。

「マユちゃん、おはよう」

「あっ、あぁ…。おはよう由希」

 挨拶を返してくれたものの、マユちゃんはどこか気まずそうにしていた。

 なんというか、ムスってしていて、目を逸らされる。

「マユちゃん?」

 私は顔を近づけてみる。

「近っ!ちょっ!?なに!?」

 するとマユちゃんは、ビクリと体を震わせた。

 何故かほっぺたが赤くなっている。

「マユちゃんどうしたのかな〜って」

「どっ、どうもしないから!ほら、早く行くわよ!遅刻する!」

「はぁい」

 よかった。体調が悪い訳じゃないみたい。

 私達はいつもみたいに、隣り合って歩き始めた。

「……ねぇ、由希」

「んっ?なぁに?」

「昨日の昼休みだけど、あの後どうなったの?」

「あっ……」

 昨日の昼休み…。

 黒部君が怪人を連れて大暴れした時のことだ。

 穂香ちゃんが先に戦っている間、放送で全生徒に、体育館へ避難するように伝えられていた。

 その時私はマユちゃんに手を引かれて、体育館に向かおうとしていた。

 だけど私は、穂香ちゃんを放っておけなかった。

 穂香ちゃんが居ない。捜してくる。

 そんな理由を並べて、私はマユちゃんの手を離し、穂香ちゃんを捜しに行った。

 最終的には穂香ちゃんを助けられたけど、マユちゃんはあの時のことを気にしてるのかな…。

「……あの後穂香ちゃんを見つけられたけど、近くに怪物が居て…。それで一緒に隠れてたの」

「……そう」

 マユちゃんが目を尖らせる。

 やっぱり、怒ってる?

「その…、マユちゃん。……ごめんね」

「私は由希が心配なだけ。あなた、危ないことにもすぐ首突っ込むんだから。見たくないのよ。あなたが危険な目に遭うのは」

「マユ…ちゃん……」

 マユちゃん…。

 私のこと、心配してくれていたんだ。

 それなのに、私は1人で突っ走って…。

「……マユちゃん」

「なに?由希」

「心配してくれて、ありがとう」

「ッ……!何かあったら、言いなさいよね!」

 マユちゃんはそっぽを向きながら、そう言った。

 ちょっとまだ怒ってるみたい。

 でも、私は幸せ者だな。

 こんなに優しい子と友達になれたんだから。




 昇降口に着くと、穂香ちゃんの姿があった。

 鞄を持ったまま、廊下側の窓際に寄り掛かっている。

 もしかしてだけど、私を待ってたのかな。

「由希、おはよう」

「おはよう穂香ちゃん。もしかして、待ってた?」

「うん」

 待ってたみたい…。

 ちょっと可愛いかも。

 そんな穂香ちゃんの目が、マユちゃんに向いた。

「村崎さんも、おはよう」

「…おはよう」

 マユちゃんはそっけなく挨拶を返した。

「……」

「………」

「…えっと………」

 私達の間に、沈黙が流れる。

 昨日一緒に帰ってみて解ったけど、マユちゃんと穂香ちゃんはそんなに仲良くないみたい。

 いや…どちらかというと、マユちゃんが穂香ちゃんを一方的に嫌ってる感じかも。

 私としては、2人に仲良くなってほしいところなんだけど…。

 それにしても、気まずい

 何か話題…。

「そっ、そういえば!穂香ちゃんは、どうして私を待ってたの?」

 頭の中でなんとか絞り出した話題が、それだった。

 穂香ちゃんだけに向けたものだったけど…。

「そうだった…。由希、放課後空いてる?」

「うん、大丈夫だよ」

「そうか…。実は今日の放課後、私達みたいに変身できる子達で集まることになってて…」

「変身…できる子…?」

 そういえば…。

 ルルちゃんが言ってたけど、コンパクトで変身できるのは私と穂香ちゃんだけじゃない。

 確か…海さん、翠さん、檸檬さん。

 名前だけは聞いている。

 穂香ちゃんはその3人と、繋がりがあるんだ。

「これから激しい戦いになるかもしれないし、今のうちに由希のこと紹介しておきたいんだ。どう?」

「うん、大丈夫。私もその人達と会ってみたいから」 

 ちゃんと顔を合わせないと。

 同じ変身して戦う者同士なんだから。

 海さん、翠さん、檸檬さん…。

 どんな人達なんだろう…。

「……あっ」

 ここまで話しておいて、私は重要なところを見落としていた。

 今の会話、マユちゃんも聞いている。

 実際マユちゃんも、怪訝そうな顔をしていた。

 変身のこととか、戦いのこととか、他の人に聞かれても良かったのかな…。

 そう思っていると、穂香ちゃんがマユちゃんに視線を合わせた。

「…村崎さんも、来る?」

「えっ…?」

「へ?」

 穂香ちゃんの言葉に、マユちゃんは目を丸くした。

 ていうか、私も目が丸くなった。

 まさか、マユちゃんを誘うとは思ってなかったから。

「私と由希が、何かを隠してる。村崎さんは、そう思ってるんじゃないの?」

「えっ…えぇ。まぁ……」

「……胸の中が、モヤってしてるんじゃない?」

「……そうね」

 マユちゃんの心境を、穂香ちゃんは言い当てる。

 もしかして穂香ちゃんは、マユちゃんが抱える疑問を払拭するために…?

「ホームルームまで、まだ時間がある。村崎さん、ちょっと来て」

「えっ…えぇ!?ちょっと____!」

 突然穂香ちゃんが、マユちゃんの手を掴んだ。

 そしてほぼ強引に引っ張っていく。

「由希も、一緒に来て」

「ッ!……うん、解った」

 私も2人に続いた。

 穂香ちゃんが今から何をするのか、解ったから。




 私達は理科室に着いた。

 この時間、ここには誰も居ない。

 秘密のお話をするには丁度いい。

「ねぇ、こんなところに連れてきてどうする気?」

 マユちゃんが腕を組んでそう訊いてくる。

 私は近くの机に鞄を置いて、ファスナーを開ける。

「ルルちゃん、出てきていいよ」

 鞄の中に語りかけると、ルルちゃんが顔を出した。

 理科室をキョロキョロと見回している。

 その途中で、マユちゃんと目が合った。

「えっ…?」

「ルルッ!?」

 2人ともビックリしていた。

 お互い顔を合わせるのは初めての筈…。

 多分マユちゃんは、違う意味でビックリしてると思うけど…。

「……てるてる坊主が、喋った?」

 やっぱりそんな反応になるよね…。

 それにしても、流石マユちゃん。

 驚いてても、ちょっと冷静だ。

 ルルちゃんは鞄から出てきて、フヨフヨと浮く。

「てるてる坊主が浮いた……」

「マユちゃん。この子はルルちゃん。私の新しい友達」

「ルルッ!この永久の街の女神、ミタカラヒメ様の使いだル!」

「はぁ…」

「ルルちゃん、この子は村崎麻由美ちゃん。私の親友。私はマユちゃんって呼んでるよ」

「ルルッ!マユ、よろしくル!」

「えっ、えぇ。よろしく」

 これでお互いの紹介は終わった。

 ルルちゃんは友好的だけど、マユちゃんはまだ警戒している。

 これからちょっとずつ、仲良くなれたらいいな。

「村崎さん。私達はルルから貰ったコンパクトで、怪人と戦ってるんだ」

 穂香ちゃんが、私達がやっていることを簡潔に話す。

「は?コンパクト?怪人?」

「見てもらった方が早いかな…。由希」

「うん」

 私と穂香ちゃんは、コンパクトを取り出して開いた。

 中の宝石が光る。

 私がムーンストーン。

 穂香ちゃんがガーネット。

 私達はそれに触れる。

 すると白と赤の光に包まれて、私達は姿を変えた。

 私はオフショルダーの、白いお姫様みたいな姿に。

 穂香ちゃんは大胆にお腹が出た、黒と赤が基調のセーラー服に。

「……!」

 私達のあまりの変わりように、マユちゃんは言葉を失う。

 それもそうだろう。

 明らかに現実離れしたことだから。

 穂香ちゃんが、コンパクトに入った宝石をマユちゃんに見せる。

「私達はこの宝石の力で変身できるんだ。そして、この宝石と同じようなものを、黒部が持ってる」

「……黒部って…あいつが?」

「そう。黒部が持ってるのはオニキスっていう黒い宝石なんだけど、あいつは悪い神様と組んで、オニキスの力で怪人を作り出して人を襲わせてる。私達は、それを防ぐために戦ってる」

「……そう、なの…」

 リアクションは薄いけど、マユちゃんはまだ受け入れられていないみたいだ。

 やっぱり、現実とは思えないよね。

 内容だけなら、まさに女児向けアニメの話だ。

 マユちゃんは私に目を合わせる。

「……もしかしてだけど、由希は昨日…」

「……うん。ごめんね。私、嘘ついてた。本当は穂香ちゃんと一緒に戦ってたんだ。戦い自体は苦しいものだから、マユちゃんを巻き込むのは良くないって思って、誤魔化してた……」

「そういうことだったのね…。で?真辺さんはどうしてこのことを明かそうと思ったわけ?」

「村崎さんと仲良くなりたいから」

「は…?」

 マユちゃんが戸惑いの表情を見せた。

 穂香ちゃんの眼差しは、真剣そのものだった。

「村崎さんは由希のこと、好き?」

「えっ!?……そりゃぁ、そうよ。好きじゃなかったら友達やってないし」

「私も由希が好き。そういう点では、私達は似てると思う。だからきっと仲良くできると思う」

「そう…?」

「うん。……それに、このことを隠したままだったら、村崎さんと由希との関係にも亀裂が生まれる思ったから…。この姿のこととか、誰かに話す気はなかったんだけど…村崎さんには、知っておいてほしいと思った」

「……」

 凄い…。

 穂香ちゃん、そこまで考えてくれていたんだ。

 マユちゃんとの関係だけじゃなくて、私のことまで…。

 何というか、穂香ちゃんは大人だな…。

「それで、村崎さん。今日の放課後、一緒にどう?」

「……そうね。行くわ。あなた達が置かれてる状況について、もっと詳しく知る必要があるもの」

「ッ…!……よかった」

 穂香ちゃんはホッとしたように微笑む。

 それにしても、本当に良かった。

 これからは、ちゃんと隠さずに相談できそう。

 そう思ってると、マユちゃんが私をジーッと見つめていた。

「マユちゃん…?どうしたの?」

「由希…。その…。その格好、似合ってるわね」

「本当!?…どう?可愛い?」

 私は舞い上がって、クルクルと回ってみせた。

 マユちゃんがクスッと笑う。

「えぇ。可愛いわ」

「えへへ。嬉しい!」

 ちょっと照れくさい気もするけど、マユちゃんに可愛いって言ってもらえた。

 胸の中が、ポッと温かくなる。

 私達が話していると、穂香ちゃんが前に出てきた。

「あの、村崎さん…」

「え?なに?」

「その…私は……どうかな?」

 穂香ちゃんは、控えめに自分の格好をアピールした。

 もしかして、穂香ちゃんも褒めてほしいのかな。

「……さっきから思ってたけど、なんでお腹出てるのよ。痴女なの?」

「ちっ!?…じょっ!?」

「あはは……」

 マユちゃんと穂香ちゃん…。

 この2人、仲良くなるまで時間が掛かりそうだな…。

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