変人らしい
「まず、私の名前を言ってなかったよね。私はフレア・ヘルシンキ」
「じゃあフレヘルって言うわ」
「初対面の人によくあだ名で呼ぼうって思うね」
「その方が呼びやすいじゃん」
「じゃあ。もうそれでいいよ」
諦めたようにそう言う。
「で身の上話ってのは?」
「私は名乗ったのに少年は名乗らないの?」
たしかに名乗ってないわ。でも名乗るの嫌だな。偽名使うか。
「あ。俺?ギル・ガルルド」
「偽名だよね?なんかとってつけたような名前だし」
名にこの人、心を読めるの?なんか怖いんだけど。
「偽名で悪かったな…」
「まあ本名は今後わかればいいや」
「おい。早く身の上話を話してくれ。早く寝たいんだ」
「じゃあ話すよ」
少し視線を落としながら話し始める。
「私、実はヴァンパイアなの」
「へぇ」
まるで興味がなさそうにそう言う。
「興味ないの?」
「正直、他人に興味がないからね。人が目の前で倒れても気付かないと思うよ」
「最低ね」
「冗談だよ」
「興味がないにしろ、驚かないの?」
「うわ。マジか…ヴァンパイアだったのか」
遅れてビックリした反応を見せる。
「遅いよ」
「いやさ…なんとなく同い年くらいの見た目なのに年上って聞いて長寿の種族なのは予想がつくじゃん。それで耳を確認してエルフの特徴の長い耳じゃなかったからなんとなくヴァンパイアじゃねぇのかなってわかるって話」
「ふざけている割に意外と頭がキレるのね」
「頭、切れてねぇよ」
と頭を触りながら言う。
「それで本題なんだけど…」
あ。俺のボケを無視しやがった。ひでぇ奴だ。まあそんなことはどうでもよくて…それよりも聞きてぇことを聞かないとな…
「その前に1つ聞いてもいいか?」
「何か?」
「さっき俺を見たとか言っていたが…時間は昼だぜ?なんで見られた?ヴァンパイアは太陽が弱点じゃないのか?」
「それは私が太陽を克服したヴァンパイアだから。だから昼に外を出られるしその現場を見られた」
珍しい奴も居たもんだな…。太陽を克服したなんて聞いたことないからな…レア中のレアだぞ。
「へぇ。で本題は?」
「なんで克服できたのか聞かないの?」
「女の子に余計な詮索をしない方が身のためってじいちゃんが言ってたからな」
「ふーん。紳士なのね」
「なんだ?今まで俺のこと紳士だって思ってなかったのか?」
「変な奴としか思ってない」
失礼な奴だな…
「そんなことはどうでもいい。本題に入るよ」
そんなことって…。結構大事なことだぞ?俺が紳士か紳士じゃないかは。
「まず、私がヴァンパイアってのはさっき話した通りなんだけど…」
一瞬で空気が重くなったことを実感して思わず唾を飲み込む。
「私はここに元々居た訳じゃないの。ここから遠く離れている村で生まれ育ったんだけど…」
なんとなくだが流れが読めたな…フレヘルは俺と同じ感じか…
「その村が突如、誰かに襲われて無くなってしまって…」
一度、フレアは言葉を切った。その瞬間、静寂な時間が流れる。
そして少し経ったときにゆっくりと口を動かす。
「知ってた?人ってあっけなく死ぬんだよ…」
「ああ。知ってる」
それ以上何も言えない。正直、どう声をかける考えて下手に心配しても逆にフレヘルをさらに傷つけてしまうことにもなる。
今はそっとしておくことが最善策だ。
「知ってる?少年も何か…」
その声を遮るかのよう口を開けた。
「詮索は野望ってもんだぜ」
「ごめん」
「それで…襲った奴のことわかるのか?」
「黒い服を着た連中」
ルルは一瞬反応を見せたのち何事もなかったかのように口を開く。
「なるほどな…だからここまで追ってきたと」
「そう。ここにも来たって情報を得て…。でも着いた頃にはもう居なくて…」
じゃあフレヘルは故郷の事件と今回の祟りは繋がっている可能性があると考えて追ってきたのか
「いつ来たの?」
「ちょうど雪が降り始めて数日経った頃だと思う」
「じゃあ、なんでここに滞在し続けているんだ?」
もう居ないってわかったのならここに居続けるより各国行って情報を集める方がいいだろう。なのにそれをしなかった。事情があるのだろうか…
「それは…予言があったから」
「予言?どんな?」
「時の賢者がいずれ雪の街に現るって。だから協力を仰ぎたくて」
「で…その時の賢者は見つかったのか?」
「うん」
コクリと頷く。
「誰なんだ?」
「なんかふざけていて、せっかちで初対面なのにあだ名で呼んでくる変人」
変人?誰だ?そんな奴居たっけ?まだここに着いて数時間。まだ会話もしてない人も居るし知らない人かもしれないないな。
「うーん。わからん」
「大きな特徴を言うと眼帯をつけている人」
歩いてこの辺を見渡したりしたがそんな人居たか?
「いやマジでわからん。一体誰なんだ?」
するとフレアはルルに向かって指を指す。
なんで指を指してるんだ?指を指しても何も出てこないぞ。
「少年」
「もしかして俺のことを言ってる?」
コクリと頷く。
「はぁ?俺は変人じゃないぞ!紳士だ。紳士」
「変人じゃん」
「いや。いや。俺のどこが変人なんだ?」
「眼帯だよ。というかなんで眼帯しているの?」
「よくぞ。聞いた。これはだな…。今から11年前、黒炎龍を右目に封印してな…隠さないと封印が解かれる…」
そうか…思えばこれも11年ものなんだな…もうこの黒炎龍とは相棒みたいな感じになってるな…
「へぇ。黒炎龍ってどんな龍なの?」
「なんだ。知らないのか…。かつて世界を滅ぼす力を持っていた龍を。俺がその力を使うことは可能だが…使いすぎると俺が暴走してしまう」
「ふーん」
信じてないようで興味がなさそうに流そうとする。
「信じていないのか?」
「そりゃあそうでしょ。黒炎龍なんて聞いたことないし」
「く…歴史の闇に消えたというのか…。あ!勝手に話すな!黒炎龍」
「すまん。一瞬、黒炎龍が勝手に話してしまった」
「なに茶番やってんの?」
「………」
茶番だと…本気なんだが…く…やはり特別な人じゃないと信じてはくれないらしい。
現在、信じてくれた人は0である。
「黙っちゃった」
「やはり…信じてはくれぬというのか…。く…いつか黒炎龍恐ろしさを教えてやる」
「はいはい。で話戻すけど…時の賢者である少年に協力を仰ぎたくて」
「うーん。要はさ復讐の手伝いをしてくれってことだろ?」
するとフレアの瞳からハイライトが消え、場の空気がより一層と重たい空気となる。
「……そう。私から家族、友達を奪ったあいつらに復讐したい」
「そっか。いいんじゃね?復讐。大いに結構。頑張ってくれ」
正直、これはフレヘルが解決すべきことだろう。俺が口出すことじゃない。
「あ。鍵を返して」
「え?」
「だから鍵を返してよ。俺、部屋に入れないから」
そう言うとしばらく俺のことを睨みつける。
「少年は協力しないの?」
「俺はな…自分に得があることしかしないんだよ」
「本当にそうなの?だったらなんで崖から落ちてきたあの人を助けたの?得があるの?ねぇどうなの?」
「待て…話をよく聞け。得があることしかしないと言ったが例外がある。それは困っている人を見ると何故か助けてしまう。何故かはわからない。体が勝手に動くんだ」
「じゃあなんで協力してくれないの?」
「それは——」
小さな声で聞こえないようにこう言う。
「復讐は一人だけでいいんだよ…」
「え?なんて」
「俺は暗いことが嫌いでな…復讐とか嫌いなんだよ」
「復讐を諦めろって言うの?じゃあ私は何をすればいいの?復讐をなくしたら私は何をして過ごせばいいの?」
「知らん。一人で復讐すれば。だけど…居場所くらいは与えてやるよ」
「え?」
「なんだよ」
少し笑った気がするが…
「やっぱ変人だね」
「はぁ?どこがだよ」
見てくれてありがとうございます。
よろしければ評価、感想お願いいたします。




