6人目
「彼こそは報復の相手だろうかーー」
彼のことを一言で言い表すならば、人面獣心だろう。言葉と反応速度が、よく考えもせず、吐き出していたのだから。
ただ見たままに。ただ感じたままに。言葉を発していたのだから。思考の欠けた言葉というのは、人を獣にしてしまう。本能のままに叫ぶのだから。そして、その結果をよく考えることもしない。相手に与える影響を、自分にも与える影響を。
言葉を言刃に変えていることに気付けない。そして、因果というのは手繰り寄せられる。本人が望んでいない結末へと。
言葉というのは、良くも悪くも他者に影響を与えていく。自分も発している以上、免れることはできない。
言葉を、言刃を聞いているのは、本人でもあるのだから。そして、因果はそこに応報を与えていく。加えていく。
周囲からの信用の失墜が相次いだ。彼は孤立してしまっていた。獣のような本能的な思考によって。
お客さんからもそのことを指摘される始末。お客さんと関わる仕事から引き離されてしまう。
上司に苦情を言っても、相手にされないどころか怒られてしまう。それが積み重なっていった。
彼しかできない仕事は無かった。彼の仕事は誰でもできるものばかり。属人化もされなかった。
誰でもできる仕事のみ彼に与えられた。誰でもできる作業量。普通の金貨。変わったのは未来だけ。
言葉のキャッチボールで、手に取れない剛速球を投げといて、取れないことに文句を言う。
前提条件を無視して、自分の言いたいことを吐き散らす。他者をストレス発散のゴミ箱にしているようなもの。
それを行っておいて、自分は悪くない。正しいことをしたと思い込む。自己中心的で、周囲は呆れるだけ。
彼の孤立はさらに深まるばかり。未来はただ冷たい顔を向き続ける。微笑むことすらせずに。
獣心に対して、誰が組もうというのか。誰も組みたがらない。理解されることの無い孤立が待っているだけ。
彼は居続けることができずに職場を辞めてしまった。作業量から逃げ出した。
もらっていた金貨はもう支払われない。自分が招いた未来に耐え切れなくなってしまったのだから。
彼は自分のことをどう思っていたのか。それすら今となっては分からない。あの職場にいたことも、すでに過去となってしまっている。現在は誰も知る由は無いのだから。
理性ある人間というのは、思考することによって見分けられるもの。間違った推論は言刃になるだけ。そして、繰り返していけば孤立を深め続けるだけになってしまうのだから。
言葉を言刃にしていった因果は、応報を与えてくる。加えてくる。逃がすことは許されない。
必ずしっぺ返しという名目で与えてくるものであるがためにーー。




