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7人目

「彼こそは報復の相手だろうかーー」

 彼は毎晩夢を見る。同じ夢を繰り返す。ただ少年が現れて一言発するだけのもの。

『悔い改めたかい?』その一言だけ。なのに、何時間寝ても、それだけで一晩過ぎてしまう。

 思い出すのはあの時のこと。幼少の頃、彼を侮っていたこと。侮辱と盗みを行なった。それも繰り返し。あの時は少年を思い通りに動かすことによって、悦楽に浸っていた。

 転校した今となっては懐かしい記憶でしかない。今はどうしているだろうか。また会ったらかつてのように侮っていたはず。

 けれども、その日々は来ることは無かった。遠い昔に別れたきり。大人になった今でも忘れていた。

彼の名を思い出すまでは。彼の夢を見るまでは。

 彼の物を無理矢理奪ったことを思い出す。彼は否定していた。それを強引に手に入れていた。

今となってはいじめに値するだろう。その前に転校できて良かった。加害者の烙印を免れることができたのだから。

 彼とはそれっきり会ったことは無い。もはや、名前すら忘れている。誰だったのだろうか。転校先が楽しかったから、忘れてしまっていた。

 長い時を経て、キャリアを積み上げた。婚約者もいる。仕事もプライベートも充実している。なのに、彼のことが頭から離れない。どういうことなのか。

 今更な存在。なのに、忘れられない。まるでこちらが被害者のよう。繰り返す悔い改めの言葉。もう聞き飽きている。

 ある日の夢の中。進展があった。突如として黄色い無数の部屋に、空間に閉じ込められたのである。何度先に進んでも、進んでいるのか分からない空間の中に。

迷子になる。方向感覚が失われていく気がする。夢の中のはずなのに。突如、異臭と耳鳴りがする。

耳を塞げば鼻から異臭が襲う。かと言って、鼻を塞げば耳鳴りが入ってくる。後ずさりする。しかし、あるはずのない壁に阻まれる。夢だというのに、やけにリアルな質感を伴っている。どういうことなのか分からない。

 光が突然、前方に現れた。彼に迫ってくる。彼が光に呑み込まれると、その先には彼自身の遺影が現れた。なんて悪趣味な。夢だというのに気分が悪い。

突然、背後から人が現れる。なぜか老け込んだ兄と婚約者。赤子を抱えている。裏切られたことよりも、夢への悪趣味さに悪態を吐く。

 どうしてこんな夢を見るのか。分からない。夢ならば目覚めて欲しいと願う。彼自身が写っている遺影がニヤリと嗤っていた。

 彼は布団から飛び起きる。夢だとしても、なんて悪趣味なのだろうか。全身から冷や汗が吹き出ている。

シャワーを浴びなければ。

 時刻は深夜二時。丑三つ時。また眠らなければ仕事に差支えが生まれてしまう。それは避けなければならない。

 彼は驚く。鏡に映った自分の顔に。今まで無かったドス黒い隈がそこにあったのだから。

幽鬼みたいな顔をしている。いったいどうして。眠る前はこんな顔じゃなかったのに。こんな顔ではキャリアにもプライベートにも多大な影響が生じる。

隈は広がっており、彼の未来(スクルド)はお先真っ暗になったのである。キャリアによる作業量(ワーク)も、プライベートを充実させていた金貨(コイン)も同じくーー。 


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