4人目
「彼こそは報復の相手だろうかーー」
彼の心にあったもの。それは汚いものだった。しかし、彼はそのことに気づいていなかった。
場を言葉で悪くしていたとしても、気にも留めなかった。自分の正しさを主張していた。
いくら心が清いと思い込んでいたとしても、他者の心を傷つけてばかりでは清くない。心の汚れが溜まれば溜まるほど、その醜さというのは言葉によって表れてくるもの。
彼はそのことに気づいていなかった。しかし、言葉というのは発している本人が一番聞いている。
だが、悲しいかな。心の汚れを直視ることを避け続けた先は事実無根の中傷へと変わりゆく。
言刃にしていく。口から出ていくもの全てが。心に蓄えてきたもの全てが、吐き出されていく。
本人にとっては当たり前だとしても、他者にとっては違うというのに。その事実を認められないがために、本人は言葉を言刃にしていることに気づけない。
哀れと思われたい。だが、口から発する剣がそれを拒んでいる。待っている先は孤立でしかない。
自分でその道を選んでおきながら、本人は被害者ぶる。加害者であることを退け続けて。
汚言症ならばその事実を受け入れるべきだろうに。汚言に依存したがゆえに苦しんでいる。
罪悪感を感じない。感じ取れない。それほどまでに汚言に依存しきっていた。
そして、依存症というのは本人は否定する。しかし、その否定こそが証拠となるのだ。
彼がどんな望みを描いたとしても、彼の思い通りに事は運ばない。妄想のレールは繋がりを拒まれているがゆえに。
他人を傷つけて、自分は傷つかないと思えるのか。内側から迫る罪悪感に心を苛まれながら。
安眠の時を拒みながら求めるというのは、滑稽そのもの。しかし、認めることによってしか真の安眠はやってこない。
金貨をいくら積み立てようが、作業量をいくらこなそうが、彼の未来は微笑まない。
ただ厳しい顔を向けるだけ。冷たく一切の笑みを欠き続けて。それこそが彼の因果。
言刃を振るい続けた者の末路。その応報を否定することは誰にもできない。
孤立の嘆きも、誰も聞くことは無い。その道を選んだのは彼自身であるがゆえに。
冷酷な現実。それが彼に重く重くのしかかる。立ち上がることすら困難に襲われる。
彼はすでに倒れているのだ。他ならぬ彼自身の言刃によって。
彼を待っている末路はギロチン。自分の発した言刃によって、自分を屠ることになる。
下がりゆく金貨、上がりゆく作業量。それに耐え切ることができずに、首をギロチンへと預けることになる。
最後の時。それを迎えてもなお、彼は目を背け続けている。罪悪感から逃れようとしながら。
自分の心に蓄えて吐き出し続けた汚言が、彼を苦しめる。避けられぬ孤立をも否定して。
言刃の剣が自身の首を斬るとも知らずに。孤立はさらに深まりゆく。誰も彼を同情しないのだ。
言葉を剣にした者の末路は倒れ続けていく。立ち上がることは許されない。それが彼に生じた因果であり、応報でもあるのだからーー。




