3人目
「彼こそは報復の相手だろうかーー」
彼は偉ぶっていた。他人を見下していた。思い込んでいた。しかし、それは妄想に過ぎなかった。
望んでいる未来の手を取れると思い上がっていた。だが未来に振られることになる。
愛でていた花も彼の元から離れていった。遠く遠くはるか彼方へ。
宇宙への夢も同じく。叶うことはできなかった。ただ他人を言葉で傷つけていた。自己中心的な思考に染まっていたのである。
その様に彼は周囲から見放されてしまった。奥底の思考が露わになったゆえに。
どんなに努力しても報われることは無かった。ひたすらに自分の浅慮を見せびらかしているだけ。
だからこそ、因果は彼の柔肌へと牙を剥いたのである。深く深く食い込むようにして。
盲目の后人。それに相応しい見栄を張るかのようにして。大金をつぎ込んだのである。
彼の生活は豊かになる。そう信じ込んで。けれども、末路は望む通りには行かなかった。
つぎ込んだ大金はドブへと捨てるかのようにして、虚無へと落ちていった。金貨は減りゆくばかり。不満を口にすればするほど、あっという間に彼の元から飛び去っていく。
彼が蒔き続けた因果。その畑は雑草だらけ。麦は彼の手から去っていくばかり。
サンクコストの心理に囚われた。だが、周囲は同情しない。当然の結末であるがゆえに。
彼の夢は潰えるものばかり。病魔の牙が彼に喰いついて離れることはしない。
深く深く食い込んで、ズブリズブリと骨にまで達して。千切れるまで食らいついていく。
妄想は現実に成ることは無い。誤ったものである限り。正しい妄想ならば叶えるだろう。
けれども、彼の手繰り寄せた因果は、残酷しか引き寄せない。それが彼に対する未来の相応しい報いであるがゆえに。
わずかしか手にできない金貨。限界以上の作業量。生活のためにいくら頑張っても無意味と化す。
黒墨はどんなに願ったとしても、漂泊されることは決して無いのだから。
灰になるしか道は無い。不満を募らせてもその分現実が重くのしかかる。
巨岩を背負うことになる。どんなに楽を欲したとしても、嘲っていたのと同じ量が巨岩の重さを増し続ける。
もらえる年金で生活することは苦しいばかり。貯金することもできない。
楽しみにしていた一人の旅行も病魔のプリズンからは逃れられない。
彼が手にしたと妄信している有利性。それは最初から無かったのである。ただの幻妄でしかない。
盲目の后人を彼は自らの伴侶としていた。それから離れることを彼は拒み続けた。
ゆえに彼の未来は厳しい顔を向け続けていく。一切の微笑みを欠き抜いたうえに。
彼に対する報復の因果は、追撃するかのようにして応報を与えていく。彼の将来は暗闇へと堕ちていったのだーー。




