第56話 肉はパワー *三月*
いや~、からかいすぎた。
「からかい恐怖の宏子さんだな」
ただ、身体能力だけで動いているだけなので、鎌攻撃は余裕のよっちゃんで避け、傷付けないようにあしらった。
よく食べるというのでエネルギーを溜め込むこともわかった。ただ、消費するのも早い。稼働時間、二十分が限度のようだ。
「なんだよ、からかい恐怖って?」
「平成で宏子さんみたい怨霊がテレビから出て来る映画があるんだよ。観たときはおっかなかったな~。今なら喜劇にしか思えんがな」
「……ま、まあ、確かに、そう見えなくはないな……」
「それがさっぱりしたらあんな美女なるとはな。やったな、純。美人と付き合えて。リア充は死ね」
「なんだよ、リアジュウって?」
「現実が充実しているって意味だ。美人と結婚出来るとか、独身者から見たら呪いたくなるだろうよ」
昭和時代の人とは思えないくらい顔はすっきりとしており、色白で胸も豊かだ。平成でも百二十パーセント通じることだろうよ。オレの好みではないがな。
「背中がいい感じだろう?」
今、限界を向かえた宏子さんを背負っている。あれだけのものならしっかり押し付けられているはずだ。
「…………」
「アハハ! 正直なヤツ!」
なんてからかっていたら家に着き、庭に御座が敷いてあり、おにぎりや煮物、漬物、鶏の唐揚げ(オレが頼んだもの)、コロッケなどなど、凄い量が並んでいた。
「……す、凄い量だな……」
純が呆れている。いや、手伝いに来た人たちも驚いていた。
「五目ご飯もありますよ」
しずかさんが母屋の釜戸で炊いてくれたようだ。やっぱ釜戸は欲しいよな。
「こ、こんなに食べれるんかい?」
「大丈夫ですよ。オレと宏子さんが食べますから」
井戸で手や顔を洗ったら皆揃って昼をいただいた。
「うめー!」
おにぎりが美味い。もっと汗をかいていたらもっと美味かっただろうに。手加減したのか悪かったようだ。
わんぱく坊主のように両手でおにぎりをつかみ、一分もしないで十個も食べてしまった。
「しずかさんのおにぎり、美味いですね!」
「すみません、三月がバカで」
なんの罵りだよ。まあ、バカ野郎ではあるがな!
「お前は、宏子さんの面倒を見ていろ。宏子さん、燃費が悪いからな。あちらでも困らないだけの食料を持てよ。てか、純って料理とか出来んの?」
「芋を蒸かすなら」
「出来ねーのかよ!」
「米を炊いたりも出来る!」
それはもう出来ないと言っているようなものだわ。
「出発前に、魚とか獣を捌けるようにするぞ。簡単な煮物くらい作れるようになれ。しずかさん、料理教室を開いてもらえませんか? 時間はしずかさんに合わせます。お礼も今日くらい払いますんで」
「い、いいんですか? 今日のだってたくさんなのに?!」
「お金は必要なときに必要な分を使うものですよ」
最初、一万円を提示したら多すぎ! と怒られてしまったので、なんやかんやで三千円で解決した。
まあ、それでも多すぎとは言われたが、オレは美味いものを作ってくれる人には金も手間も惜しまないのだ。
「わ、わかりました。よろしくお願いします」
「こちらこそお願いします」
おっと。しゃべっていたら宏子さんに追い越されてしまった。
食べる量から宏子さんは、本当に燃費が悪そうだ。遺伝なんだろうが、よくそんな体で今の歳まで生きたものだ。なにもしなければ二十半ばくらいで死んでいたんじゃなかろうか?
そうでなくとも長生きは出来ない体だろう。こういう人が日本にもいて、人知れず死んで行ったんだろうな~。
「宏子さん。肉を食え、肉を。体は肉で出来ていると思え。牛肉の赤身を食うといいぞ」
それは異世界で学んだ。肉はパワー。あ、そう言えばステーキもまだ食べてなかった。和牛、それは美味しいだ! 牛肉を手に入れるぞ!




