第57話 タルタルソース *三月*
稲刈りは続くよどこまでも──ってことはなく、大村家の畑は二日と半日で終わってしまった。
こうなることは純の友達もわかっていたようで、ご近所にも声を掛けていたようだ。
オレに異存なし。しずかさんもまだ時間があったので、食事の用意をお願いした。
八日でご近所さんの稲刈りを終えた。オレとしてはさらに広げてもよかったのだが、集落には集落の決まりやら付き合いがあったりするとかで、純の友達の集落だけになってしまい、乾燥や脱穀は家族でやるそうだ。
「なんか、あっと言う間だったな~」
「だろうな! お前があっと言う間に終わらせたんだから!」
「なんで怒ってんだよ?」
もっと宏子さんといたかったのか? このリア充め。
「非常識だからだよ。んで、どうするんだ? 帰るのか?」
「そうだな。仕事がないんなら帰るよ。しずかさん、送ります」
手伝いの間、しずかさんは実家に泊まり、娘ちゃんとここに来ていた。
あまり絡むことはなかったが、陸王(サイドカーを付けました)で送り迎えしているので、おじちゃんとは言われるようにはなったよ。
……確かにおじちゃんではあるが、ちょっと傷付くのはなんでだろうな……?
「純たちもしずかさんのところで食べて行くか?」
二人は大村家で夕食を済ませてから山形の能己家に泊まっていた。あの家、広いから。
「そうだな。お前が美味いって言っているコーヒー飲んでみたいしな」
県庁で働いていたからか、コーヒーはよく飲んでいたそうだ。近くに喫茶店があったんだってさ。
「じゃあ、行くとしよう」
しずかさんもオレらが転移が出来ることを知っている。てか、面倒だから転移の指輪を渡したよ。娘ちゃんに毎日会えるようにな。
オレはしずかさんと娘ちゃんと。純は宏子さんと、おかだ食堂に転移した。
しずかさん母娘を送り届けたら食堂で夕飯をいただいていた。八日も続くと、帰って来る頃には準備は出来ており、畳席で皆でいただくとする。
人数が増えても旦那さんとおにーさんは慣れたもの。慌てることなく料理を作ってくれた。
「うめー! 焼きそばうめー!」
戦後、一般的に食べられるようになったとか。食文化はよくわかんねー!
「お前、食べすぎだよ」
「美味いものならいくらでも入る。宏子さん、食べているか?」
って、愚問だった。トンカツを黙々と食べていたよ。
「タルタルソースがあったら最高なんだがな~」
唐揚げはある。だが、タルタルソースはなかった。いつになったら世に出て来るんだ?
「なんですか、タルタルソースって?」
隣のしずかさんが尋ねてきた。
「卵と玉ねぎを刻んでマヨネーズで混ぜたもの、だったかな?」
ごめん。そのくらいの知識しかございません。
「簡単なんですね。ちょっと作って来ます」
しずかさんが席を立ち、厨房に消えて、五分くらいで作って来てくれた。そんな簡単ものなの!?
「……タルタルソースっぽい……」
てか、もうタルタルソースがどんな姿をしていたかも忘れかけている。
「味はよかったですよ」
まずはタルタルソースだけを食べてみる。美味しい。だが、こんな味だったっけか? もっとネチョネチョしていたような?
いや、これはこれで美味いのだから唐揚げに付けて食べた。
「くぅ~! うめー!」
懐かしい味。美味さとともに平成の世が思い出された。
「そうだ。レモンだか酢てかが入ってて、粗挽き胡椒も入ってたかも」
「確かに、酸味があったほうがいいですね。粗挽き胡椒はないので、普通の胡椒を掛けてみましょう」
酢と胡椒を持って来て、タルタルソースに掛けて混ぜ、味見をした。
「うん。さらによくなりました」
また唐揚げに掛けて食べたら涙が出た。こ、これだ。これがタルタルソースだ。
「へー。美味いな。宏子さん、落ち着いて」
フォークで唐揚げを刺し、タルタルソースをたっぷりつけて口に突っ込んでいた。意外とワイルドですこと。
「おかーちゃん、これ美味しいよ! もっと食べたい!」
娘ちゃんも気に入ったようだ。どんどん食いねー。
「はいはい。もっと作ってくるわね」
しずかさんがまた席を立ち、厨房へ入ってたくさんタルタルソースを作ってくれた。好きぃ~!




