家族を得た私、領地名物を作ろうと思います①
気が付いたら、窓の外は雨が止み、オレンジ色の夕日が出ていた。
部屋には旦那様がいて、執務室でもないのにお仕事をしている。
「起きたか」
「はい。……あれ? 何で旦那様のお部屋に?」
いつ来たんだっけ。
えっと……。
「あ! ワイン!! ワインを飲んでません」
飲む前にうっかり寝ちゃったのか。
まぁ、たまにはそんなこともあるかな。
きっと旦那様からは眠気を誘う何かが出てるのだろう。旦那様のそばはよく眠れるしね。
「……片付けちゃったんですか?」
「あぁ、そうだな」
「じゃ、また出してください」
ワイン! ワイン!! 高級ワインッ♪
うきうきと待っているけれど、ワインは出てこない。
不思議に思って、旦那様を見ると半目で私を見ている。
「……ん?」
何だろう。あの何か言いたそうな目は……。
「ハッ! そういうことですね!!」
横になっていたソファーから下りて、旦那様がワインを持ってきてくれた方へと向かうと、棚を開けて手を伸ばす。
「んぬっ、んぬぬぬぬぬぬ……」
な、何ということだ。手が届かない!!
「旦那様」
「何だ?」
いつの間にか、真後ろに立っていた旦那様を振り返る。
「抱っこ」
「……は?」
「抱っこしてください」
そうしたら、ワインをゲットできるはずだ。
「断る」
「……じゃあ、踏み台になってください」
「何でだよ!」
ふむ。旦那様は駄目なのか。
ギーツ、お休みにするんじゃなかったな。
……仕方ない。貴族として、ちょっとどうかと思うけど、背に腹は代えられない。
ミカナ先生、これは必要なことなんです。
素敵なレディーになるために!
「ちょっと待った!」
「んぐぇっ……」
「今、何をしようとした?」
襟首をつかまれ、ソファーまで連れ戻される。
「ちょっとワインを取ろうかと……」
「棚に飛び乗ったよな?」
「だ、だって、ピョンってして足をかければ取れますし……」
「足の乗るスペースなんかないだろ!?」
そうだっけ?
「旦那様、確認しましょう」
「は?」
旦那様の手を引っ張って、棚の前へ行く。
「見てください。ここにすき間があります」
「あるな」
「つまり、ここに足をねじ込んで、そこにつかまれば立てます!」
「…………どうやって、手を離すんだ?」
そりゃ片手を……。
──っ!!??
「盲点でした」
足場にする棚の段と、つかまる予定の棚の段の大きさは同じ。
すなわち、私の体を支えるのは、ほぼ腕の力のみ!!
くそぅ……。腕力が足りない……。
「惨敗です。旦那様、ワイン取ってください」
自力で取るのは、鍛えてからにしよう。
「まず、ワインは取らない」
「えっ!?」
「あと何で自分で取ろうとした?」
「旦那様が俺ばっかり動かすなって目をしてました」
「違う! 寝る前のことを忘れたのか? っていう目だ!!」
寝る前? 何かしたっけ……。
「忘れました」
「……だろうな」
そう言うと、旦那様は私の前にしゃがんで視線を合わす。
「いいか、コレッティーナ」
「はい」
「コレッティーナは酒に弱い。それも尋常じゃないほどにだ」
「飲んでもないのにそんなこと……。まさか私、飲んだんですか?」
飲んで記憶飛ばすとか、もったいない!!
「いや、飲んでない」
言い切った旦那様は、ほんの少し視線をそらす。
「あー、何というかだな。匂いだけで酔っぱらった」
「……え? そんなことあるわけないじゃないですか」
じっと旦那様を見れば、耳が赤い。
「私、酔っぱらって何かしでかしました?」
「──っ!!」
あ、やらかしたか。
えー、何だろ。記憶にないものは分からないしなぁ。
「よく分からないけど、ごめんなさい」
「いや、謝らないでいい」
「でも、さすがに匂いだけじゃ酔っ払わないと思います」
普通に考えて、ありえない。
「だから、困ってるんだ……」
旦那様が頭を抱えてしまった。
この反応、本当か!
「じゃあ、私はお酒が飲めないんですか?」
「そうなる」
「…………楽しみにしてたのに」
高級ワイン……。
「チョコ、チョコあるぞ」
「チョコだけですか?」
「アメと、他にもたくさん用意させる。ケーキとか、クッキーとか。何が食べたい?」
……あれ?
何だろう。何となく、こんなやり取りをしたような?
「旦那様」
「何だ? 決めたか?」
「いえ、寝ちゃう前も同じようなこと言ってました?」
「……思い出したのか?」
夕日みたいな真っ赤な顔の旦那様。
「旦那様、一人でワイン飲みました?」
「飲むわけないだろ!」
「えー、じゃあ何で赤いんですか?」
じっと見れば、旦那様はもっと赤くなる。
「見るなっ」
「ふふっ……照れ屋さんですね」
何に照れてるんだろ。
真っ赤になるなんて、可愛い。心はヒロインちゃんだもんなぁ。
ということは、私がヒーローポジションになるのかな? 妻だし。
うん。ヒーローとして、旦那様の領地を盛り上げるために、もっと頑張らないとね。
「旦那様、決めました」
「何をだ……」
「領地で作ったお酒をたくさん試飲できるように、鍛えます。そして、商品にならない傷のついた果物たちで、ご当地名物のお酒を作ってみせます!」
「ちょっと待て、ご当地名物って何だ?」
うん。きっと大丈夫。
まずはお部屋のあちこちにお酒を置いて、毛穴からアルコールを摂取することから始めよう。
そうすれば、徐々に慣れるはずだ。
「大船に乗ったつもりで任せてください!」
更新、遅くなりました。
日曜日までにもう1話更新できるよう頑張ります。




