家族を得た私、森へ行きます④
「私、十八歳です!」
「そうだな」
「お酒飲めます!」
「でもなぁ、コレッティーナだしなぁ」
ん? どういうこと?
「私だと駄目なんですか?」
「小さいだろ」
ポンッと頭に手を乗せられる。
「……身長?」
「もあるが、何か嫌な予感がするんだよ。倒れそうっていうか……」
「私、元気です」
ピシッっと手を上げて自己主張をする。
毎日、たくさん食べて、たくさん寝ている。
少なくとも、旦那様より健康的な生活をしてる私は、旦那様よりたくさん飲める……気がする!
「飲ませるのが嫌なのに、なんで第二王子にワインもらったんですか?」
「すぐに飲まなくてもいいし、いいワインだぞ。もらえるなら、もらうだろ?」
たしかに!
でも、私はお酒を飲めないといけないのだよ。
「果物のお酒をつくるのに、試飲は大事です!」
「ん? 酒をつくる?」
「はい。傷のついた果物をお酒にします」
あれ? 旦那様、びっくりした顔してる。
と思ったら、難しい顔しちゃった。
「それ、コレッティーナが試飲しないと駄目なのか?」
「はい」
だって、試食も試飲もできないなんて、美味しいかわからない。
ふんぬと鼻息荒く答えれば、旦那様は困ったように笑う。
「絶対に必要なんだな?」
しっかりと大きく頷く。
「分かった。それじゃあ、俺の部屋に行こう。試しに一口だけ飲む……いや、舐めてみるか」
「やった!」
そうじゃなくっちゃ。
舐めるふりして、飲んじゃおう。
私が飲めると証明してみせる!
「ギーツ、今日はもういいぞ。最近コレッティーナと森に行ってばかりだったろうし、少し休め」
「はい。ありがとうございます」
旦那様の言葉に、妙にハキハキした声でギーツは答える。
ものすごーくいい笑顔だ。
「ギーツ、普段はあんなにいい笑顔しません」
「そうだろうな」
廊下を歩きながら思わずこぼせば、旦那様は肩を揺らして笑う。
「何でか、わかるんですか?」
「まぁな。でも、コレッティーナの気にすることじゃない。それがギーツの仕事だ」
「……そうですか」
ギーツの仕事ということは、私の護衛関連かぁ。
よく分からないけど、人を護るということは大変なんだろう。
常に気を張ってると仮定すると、休みと聞いて気が抜けたり、笑顔になることも頷ける。
「私も、ギーツにお休みを言うようにします」
「出かける時は、駄目だぞ」
「大丈夫ですよ」
「駄目だ。ギーツか俺が一緒に行けない時は家だ」
むぅ。これ、絶対に旦那様は譲らないやつだ。
まぁ、森に行く以外お外に用事はないし、いいか。
「分かりました。雨の日をギーツの休みの日にします」
「……たまには晴れの日も休ませてやれ」
旦那様がどこか遠い目をして言った。
***
旦那様のお部屋につくと棚からワインを持って来てくれる。
何というか、ビンからしてお高そうだ。
「ラベルもオシャレです」
「見た目も大事だからな。コレッティーナは、どんな酒をつくる予定なんだ? ブドウも取れるが、さほど量は作ってないぞ」
「あ、ブドウじゃなくても大丈夫です。甘いお酒をつくりたいので!」
「甘い酒?」
首を傾げながら、旦那様はグラスにワインを注いでくれる。
ワイングラスをくるくるするとか、大人って感じがする!
「旦那様、もう飲んでもいいですか?」
「駄目だ」
「え?」
「匂いをかいでからにしよう」
おぉ! いきなり飲むんじゃなくて、匂いも楽しんでからってやつだ。
本格的~♪
それじゃ、くるくるしてっと……。
──くんくん。
「甘い匂いがします」
「そうだな」
ちょっとアルコールくさいっていうのかな。
あまり美味しそうな匂いではないけど、超高級ワイン! 美味しいはず!
よし。もっと匂いを吸って……。
「んぁ? ふわふわします。ふふふふ…………」
「おい、コレッティーナ?」
「人のこと「おい」って言っちゃ駄目なんですよ? 知らないんですかー? あははははは」
あー、楽しい。
ふわふわとっても、気持ちいい。
「あ! 私のワイン! 返してください!」
「没収だ」
「どうしてですか? 旦那様ひどい……」
「匂いで酔うやつ、はじめて見たぞ……」
呆れたように言われ、ぐさりと言葉が刺さった。
「酔ってなんか、ないのに……」
うぅぅ……。急に悲しくなってきた。
「え゛⁉ な、泣いてるのか?」
「だって、ワイン……」
「いや、無理だって。あ、そうだ。飴なめるか?」
上着の内ポケットから出して、ペロペロキャンディを渡してくれる。
「飴だけですか?」
「チョコもある! チョコもあるぞ!」
「あとは?」
「クッキーとケーキも用意させよう。な、だから泣くな」
旦那様がわたわたしてる。
ふふっ。変なの……。
「旦那様、可愛いです」
「可愛い?」
「はい。慌ててるの可愛いです」
んー、頭がふらふらする。
ソファにポテンと横になると、旦那様の方へとぐにぐに寄っていく。
「膝枕ー! かたいです」
「勝手に枕にして文句言うな!」
「ふふっ、怒ってる。旦那様、怒りんぼ…………」
あ、瞼重い……。
「ちょっ! このまま寝るのか? コレッティーナ⁉」
あったかくて、気持ちいい。
あ、ワイン飲んでない…………や。
※日本では、20歳未満の飲酒が固く禁じられています。
※18歳から飲酒が可能なのは物語上の設定です。




