家族を得た私、森へ行きます③
おかしい。
森に行ったのに、何も思い付かなかった。
前に思い付いたジャム、ジュース、コンポート。それからドライフルーツに、ゼリー、フルーツティー。
これが限界なのかな。
いや、きっとまだあるはず!
「明日も森に行きます!!」
そう宣言して、早一週間。毎日、森通いを続けたのに成果なし。
「今日は雨かぁ」
さすがに雨の中、アンネとギーツを連れて行くわけには行かない。
「はぁぁぁぁ……」
ミカナ先生、あなたの生徒として立派な淑女になると誓ったのに、リラックス方法がわかりません……。
もう今日はグダグダ過ごしちゃおうかな。
いやいや、淑女はグダグダしない!
雨なのだから、今日は淑女を極めよう。
淑女といったら、お茶会……。それと、夜会?
そういえば、第二王子からもらったワイン、まだ飲んでなかったなぁ。
って、まだ十八歳だからお酒は駄目か。
でもなぁ、この国の成人は十八歳だし、お酒も解禁なんだよね。
…………旦那様に聞いてみよう。旦那様がいいと言ったら、いいのだ。だって、この屋敷の法律は旦那様だ。
王家所有のワイン。
きっと、すさまじく魅惑の味なんだろうなぁ。
「ワインかぁ……。ん? ワイン?」
あれ? この世界のお酒って、何があったっけ。
「ちょっ! 奥様、どこに行くんですか?」
「厨房です!!」
「はぁ!? いきなり行ったら、迷惑ですって──」
「大丈夫です。少しですから!」
タッタカタッタカ走って行けば、もう隣をギーツが並走している。
これは、ギーツで行った方が速いな。
「ギーツ、私の前を走ってください」
「え? どういうこと──」
「とりゃぁぁぁ!」
「うぉっ!!」
ギーツの背中に飛び乗り成功!
「さぁ、ギーツ! 目指すは厨房です!」
「俺、馬じゃありませんからね!?」
「知ってます。ほら、もっと速く走ってください」
おぉ、速い!!
これからは、何かあった時はギーツに乗ろう。
「って、そっちは厨房じゃありませんよ」
「当たり前です。何をしでかすか分からない時は、旦那様です」
ギーツタクシーに目的地を無断変更されたので、降りようとしているのに、足をガッチリ掴まれてて降りられない。
「んぎぎぎぎぎ……」
「諦めて連行されてください」
あぁぁぁぁ……。厨房が遠ざかって行く。
気分は市場へと売られていく子牛のまま、旦那様のいる執務室へとついた。
「旦那様! ギーツです。奥様を連れてきました」
両手がふさがっているからか、ギーツは扉の前で大声を出す。
すると、すぐにザールが扉を開けてくれる。
「何があったんです!?」
「分からんから、連れてきました」
ギョッとした表情をしているザールの前を、私をおんぶしたままギーツは通り過ぎた。
「旦那様、お届けものです」
「荷物みたいに言わないでください! ──っ!?」
「あまりベタベタ触るなよ」
ヒョイッと旦那様が私をギーツの背中から降ろしてくれ……たのではなく、抱っこされる。
「すみません。因みに、どう運べば?」
「……こうかな」
軽々と位置を変えられ、小脇に抱えられた。
「で、何で運び込まれたんだ?」
「降ろしてください」
無言のまま、旦那様が見下ろしてくる。
「降ろしてくださいっ!」
「……わかった」
渋々といった感じに旦那様が私を降ろす。
うむ。地面最高!
「何があった?」
「厨房に行こうとギーツに飛び乗ったら、ここに運ばれました!」
「何で飛び乗った?」
「ギーツの方が速いからです」
ん? 何で、そんな残念なものを見る目をしてるの?
「いいか。人に飛び乗ってはいけない。まして、乗り物にしては駄目だ」
「速いのにですか?」
「そうだ」
たしかに、ギーツに失礼だったかもしれない。
「ギーツ、ごめんなさい」
「あ、いえ。そんな……」
「脇に抱えてもらって、私が荷物になるならいいですか?」
「……それって、どうなんだ?」
旦那様の眉間にグッとシワが寄る。
「人のことを乗り物扱いは駄目でも、自分のことを荷物にするならいいかなって思います」
「たしかに……」
「いやいやいや! ご婦人が脇に抱えられて運ばれるのが問題ですからね!?」
「「あぁ!!」」
ギーツの言葉に、旦那様と声が重なった。
仕方ない。自分で走るか。
にしても、これから厨房かぁ。旦那様に聞いたほうが早いかな。
「旦那様、ワイン以外のお酒って何がありますか?」
「ん? あぁ、ウイスキーとビールがあるぞ」
「他は、何ありますか?」
「他? 酒といったら、ワインの赤と白。ウイスキー、ビールだろ」
ほほぅ。つまり、甘いお酒はないと。
これはチャンス……なんだけど、私がお酒を飲めるか問題があるな。
試食、試飲のできないものは、ちょっとね。
「旦那様! 私、お酒飲めますか!?」
「……まだ早いんじゃないか?」
頭の先から爪先まで見て、旦那様が言った。




