家族を得た私、森へ行きます②
ふぉぉぉお!
あの実は何だろう? あ、あの花、食べれるかな?
むむっ、あとであっちの葉っぱの根っこを回収しなくては!
おっ! きのこだ! 茶色いし、美味しそう……じゃなくて、自重だよ、自重。
「ギーツ、アンネ! とりあえず、木に登ります」
果物加工のヒントが木の上にあるかもしれない。
もしかしたら、見下ろした景色にあるかも!
スルリスルリと木を登っていく。
「奥様、しっかり足場を確認して登ってくださいね」
「落ちると思ったら、絶対に言ってください。ギーツをクッションにさせますから!」
「そこは受け止めるって言ってくれませんかね!?」
「コレッティーナ様にお怪我がなければ、どちらでもいいです。ほら、コレッティーナ様から目を離さないで!」
木登りは得意なのに、二人とも心配性だなぁ。
──パキッ。
「「──っ!!」」
この枝は駄目かな。んじゃ、もう少し太い枝をっと……。
「奥様、もっと慎重に!」
「そうですよ。ゆっくり進みましょう」
「大丈夫ですよー」
ナビレート伯爵家に住むようになってから、体重も増えた。前よりも、私を支えられる木の枝は減ったのかも。
どの程度まで平気か見ながら進まないとだ。
「ふぃー、思ったより時間かかったなぁ」
これ以上は、木の枝が保たないから登れないだろう。
木の上から見える景色は、木ばっかりだ。
もっと高い木に登れば良かった……。
えーっと、ここらで一番高そうな木は……。
「2時の方向か」
スルスルと木を降りると、見つけておいた木へと向かう。
「今度はあっちの木に登ります」
「まだ登るんですか?」
「はい。まだヒントが見つかってません」
んしょ、んしょ……。
「ふぃー! うん。さっきより大きい!! けど、何もヒントが見つからないなぁ。もっと大きい木がいいのかも。えーっと、更に大きい木は……」
うーん。けっこう遠いな……。ここから歩くと数時間はかかるかも。
「ギーツー、アンネー。数時間、歩けそうですかー?」
木の下に向かって叫ぶ。
「どこに行く気ですー?」
「もっと高い木に行きますー」
そう言いながら、高い木のある方を指差す。
「コレッティーナ様ー、もしかしてその木に行くには、川を渡る必要がありますか?」
んー、どれどれ。
……あっ!
「細い川が見えますっ!」
「そこに行くには、馬車で半日かかりますよー」
アンネが大きな声で伝えてくれる。
けど、半日ってどういうこと?
よし。とりあえず、降りよう。
でも、その前に……。
「木の実を落とすので、ちょっと避けててください」
ふんふんふんふんっ!
ゆっさゆっさと木を揺らす。
「いてててててててっ! ちょっ……、奥様っ!!」
あ、ギーツが頭抱えてる。
アンネは、日傘指してるや。
ひょいひょいと木を降りて、二人のところに戻る。
「すみません。傘、お借りしました」
「いいですよ。好きに使ってください」
「いえ、こちらはコレッティーナ様の日除け防止用ですから」
とは言ってくれてるけど、私、普通に日焼け……してないな。
「お帽子、ズレてますよ」
「ありがとうございます」
アンネがつばの長い帽子を直してくれる。
「お怪我はないですね」
「はい。大丈夫です」
「……むしろ、怪我したの俺なんですけど」
ん? ギーツ怪我したの? 何で?
「避けなかったんですか?」
「普通、木の実が降ってくるなんて思いませんよ」
その言葉に、アンネを見る。
「アンネは、避けてました」
「えぇ、もちろんです。コレッティーナ様の侍女ですから」
……じゃあ、何でギーツは…………あっ!
「木を揺すってるから、私が落ちると思ったんですか?」
「それもありますけど……」
「なるほど。私、木登り歴十二年のベテランです。安心してください」
よし。これで、ギーツの心労問題は解決っと。
あとは──。
「どうして、大きな木まで馬車で半日もかかるんですか? 一直線に行けば、数時間で歩けると思います」
「川を渡るために、橋へ迂回しなければならないんですよ」
「泳いで渡ればいいのでは?」
アンネが泳ぐの苦手なら、川の手前で少し待っててもらうのも手かもしれない。
「流れが速いので、泳いで渡るのは難しいかと。それに、川の向こうは危険です」
「どうしてですか?」
「クマやイノシシが出るからです」
おぉ! ってことは……。
「お肉が入手できるんですね。ギーツは、弓を使えますか?」
「いえ。剣や槍はできますが、弓は難しいです」
「アンネは──」
「狩りませんよ」
いや、まだ何も言ってないよ?
「コレッティーナ様、狩りませんからね」
アンネから圧を感じる。
これ、絶対に駄目なやつだ。
「分かりました。じゃあ、あの木は……」
「行けません。そもそも、どうして高い木にこだわるんですか?」
「高い木に登ると、アイデアを思いつくからです!!」
「では、高い木に登りましたが、思いつきましたか?」
……思いついてない。
「で、でも! もっと高い木に登れば!!」
思いつくのか?
あれ? そもそも、なんで高い木に登れば思いつくと思ったんだっけ?
「はっ! リラックスです。高い木にリラックスは関係ありませんでした」
食べるとリラックスするから、この実たちを拾い集めて食べよう。
「リラックスですか?」
「はい。旦那様がリラックスすると案を思いつくって言ってました!」
■新作短編■
『「何もするな」と言われたので、引きこもり生活を開始します』を投稿しました。
たぶん、カリウスも初手を間違えなければ、あういう夫婦になれていたことでしょう……。
夫婦ラブコメです。
そちらもよろしくお願いいたします。




