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【第2章開始】「お前を愛することはない」と言われたので、労働対価に食事を要求します(連載版)  作者: うり北 うりこ@8/1ざまされコミカライズ①発売
家族を得た私、領地のために頑張ります

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家族を得た私、森へ行きます①


 ***



「──様。コレッティーナ様っ!」

「へ? あ、アンネ。どうしましたか?」

「こぼれていますよ」


 そう言いながら、アンネが私の口元を拭いてくれる。


「……すみません」

「少しお休みになられてはどうですか?」

「いえ。働かざる者食うべからずですから!」


 心配そうな顔をしているアンネに、腕まくりをして元気ポーズをする。


「お仕事行ってきます!」


 そう宣言して、旦那様の執務室へと向かったのだが──。


「奥様、休みましょう」

「大丈夫です」


 今度はギーツに止められた。


「ですが、最近様子が──」

「大丈夫です!」


 自分でもわかっている。

 ミカナ先生がいなくなってから、急に悲しくなるし、前よりもウィンナー様にときめかない。

 だけど、どうしようもないのだ。


 ──コンコンコン。


「旦那様、失礼します。コレッティーナです」


 扉を開けながら言えば、旦那様はすぐにこっちに来てくれた。


「今日は休みだ」

「どうしてですか!?」

「ギーツに森に連れて行ってもらえ。木登りしてもいいぞ」


 普段なら絶対に言わない言葉に、思わず旦那様を見上げる。


「本当は俺も一緒に行きたかったんだが、悪いな」

「旦那様、お仕事いっぱいありますから。私も手伝います」


 旦那様の脇を抜けて、定位置のソファーへ向かおうとした。のだが──。


「ぐぇっ」

「あ、悪い……」


 つかまれた襟首を慌てたように離される。


「…………森に行くのは仕事だ」

「仕事ですか?」

「そうだ。ほら、前に領地の果物加工を考えてくれると話していただろ、森でヒントを探してこい」

「街ならともかく、森にヒントはないです」


 そう言うと、旦那様は露骨にため息をついた。


「いいか、コレッティーナ。既に街へは調査に行ったんだ。より良いアイデアを出すには、場所を変えるべきじゃないか?」

「……そうですかね」

「何より、リラックスするとよい案が浮かぶことがある。それが、コレッティーナにとっての森だ」


 ……なるほど。

 一理あるような気がしてきた。


「わかりました。森に仕事へ行ってきます」

「アンネに軽食を作ってもらうといい。ギーツ、コレッティーナを頼んだぞ」

「…………はい」


 ギーツが、ものすごく微妙そうな顔をしている。


「森、嫌ですか?」


 虫が苦手とか?


「安全確保が難しいんですよ」

「あー、森は隠れる場所がたくさんですからね。でも、命を狙う人はいないと思います」

「「…………」」


 ん? 旦那様もギーツも黙っちゃった。

 敵がいるのか?


「武器……。包丁を借りてきます」


「借りるな!」

「借りないでください!」


 おぉ、ハモった。

 仲良いなぁ……。いいなぁ……。


「戦うには、武器が必要です」

「コレッティーナ。ギーツの敵はコレッティーナだ」

「……? 私とギーツは仲良しですよ」

「そうじゃない。ギーツはコレッティーナのお守(も)りも仕事だからだ」


 意味が分からない。

 ギーツはギーツで頷いてるし。


「私はもう大人です!」

「年齢的にはな。だけど、俺からしたらまだまだ子どもだよ」

「そりゃ、十も離れてれば、そうかもですけど……」


 この国の成人は十六歳。

 社交デビューも一般的には十六歳。


「社会的には、大人です」

「……子どもなんて言って、悪かった。ただ、俺もギーツもコレッティーナが大切だから心配なんだよ」


 濃紺の瞳は、優しい。

 だから、お守りと言われたことに、いつまでも腹を立ててたら、それこそ子どもだ。


「大人だから、その気持ちを受け入れます」

「そうだな。ありがとな」


 旦那様が頭を撫でてくれる。


「奥様、良かったですね」

「はい。伝わったようで安心しました。貴族としても、バッチリ夫人となれるよう、ミカナ先生にもたくさん教えてもらいました。いつまでも子ども扱いなんて……」


 ふっと、ミカナ先生のことを思い出して、鼻の奥がツンとする。


「ミカナ先生の生徒として、情けないですから!」


 でも、もう泣かない。

 ミカナ先生がいなくなったあと、泣きたいだけ泣いたのだ。

 涙を止められたなら、ミカナ先生の生徒として背筋を伸ばしていないといけない。


「……コレッティーナ。無理に大人になるなよ」

「どういうことですか?」

「十八歳は社会的に大人でも、大人になってまだ二年。大人になりたてだ。十二年経った俺だって、まだまだ大人になりきれていない。そんなもんなんだよ」


 ……旦那様の言うとおりかも。


「デザーは大人だけど、父も義母も大人じゃなかったです。人によってなんですね」


 なるほど、なるほど。

 歳を重ねる=大人。とは、ならないわけだ。


「頑張って、大人になります!」

「無理のない範囲でな。そのままのコレッティーナが、その…………みんな好きだと思ってる……から」


 ふいっと視線を逸らして、旦那様が言う。

 その耳は真っ赤だ。


 ……あっ! なるほど。

 最近、ふいっとされるのは照れてたからか。

 旦那様、照れ屋なんだ!


「ありがとうございます。でも、次にミカナ先生に会った時に、立派な大人になってたいです」


 だから、頑張る。


「立派な大人は、しっかり働きます。絶対に森で、名案を思いついてきます!!」

「そんなに肩肘張らなくていいぞ」

「任せてください!」


 やる気満々で、アンネにお弁当を用意してもらい、ギーツとアイラ、アンネと一緒に森へと向かった。

 

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