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【第2章開始】「お前を愛することはない」と言われたので、労働対価に食事を要求します(連載版)  作者: うり北 うりこ@8/1ざまされコミカライズ①発売
家族を得た私、領地のために頑張ります

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家族を得た私、新しい家族を歓迎します①


「……お兄ちゃん」


 馬車の中から控えめな大きさで呼ぶ声がして、ギーツはハッとした顔をした。


「妹です。降りておいで」


 そう言って、馬車へと手を差し伸べる。が、妹ちゃんはその手を取らずに自分で降りてきた。


「アイラです。掃除でも洗濯でも、街までの使いっ走りでも、何でもやります。兄共々、よろしくお願いします!」


 アイラは頭を下げると、ギーツの背中を叩く。


「お兄ちゃんも頭を下げて」

「わ、分かった」


 ギーツは、慌てたように頭を下げる。


 うむ。これは、アイラの方が強者だな。

 それにしても、イメージと違う。もっとこう、守ってあげたくなるような美少女かと。


 可愛いけど、負けん気の強さと生命力が目から(あふ)れて、ギラギラしている。


「俺はカリウス・ナビレート。で、隣にいるのが──」

「旦那様の妻のコレッティーナです。アイラは、木登りとたき火はできますか?」

「コレッティーナ!?」

「大事な話です。旦那様は少し黙っていてください」


 じっと、アイラを見る。

 アイラは小さく首を傾げたあと、にんまりと笑う。


「たき火はできませんが、木登りは得意です。でも、一番得意なのは泳ぎです」

「泳ぎは必要ないです。それより、どこまで登れますか? 実の回収はできますか?」

「木の枝がしっかりとしてれば、お屋敷の二階くらいまでは余裕です」


 ──っ!!

 何てことだ。ギーツの妹はハイスペックだった!!


 思わず、ガッツポーズをしてしまう。


「旦那様! アイラを私の侍女に推薦します!!」

「はぁ?」

「木登りできるんですよ!? 私は旦那様に禁止されましたが、アイラは禁止されてません。つまり、木から実が取れるんです!」

「そうだな」


 何でだ。何で、この素晴らしさが伝わらない!?


「奥様、妹を木に登らせるのは──」


「ギーツは黙っててください」

「お兄ちゃんは黙ってて!」


 アイラと声が重なる。

 そのまま視線が絡み、無言のまま握手を交わす。


「ようこそ、アイラ。歓迎します。あなたは私の妹です」

「ありがとうございます。お姉様のために頑張ります」


 握手した手に空いている方の手を重ねれば、アイラの手も重なる。


「ちょっと待て! 意味が分からん!!」

「そうですよ。アイラ、奥様にお姉様だなんて失礼だぞ!」


 ん? 二人こそ、何を言ってるの?


「お屋敷の仲間になったので、アイラは私の家族ですよ。それに、初めての歳下です。妹は決定事項です」

「はい。妹です!」


 ばっとアイラが手を挙げる。


「……奥様、アイラと少し話をさせてもらってもいいですか?」

「いいですよ。私も聞きます。妹のことですから」

「お姉様……」


 アイラが手を組み、キラキラした目を私に向ければ、ギーツの目が遠くなった。


「奥様は、俺のことをお兄様と呼びますか?」

「呼びません。ギーツです」

「そういうことです」

「……お兄様と呼んでほしいんですか?」


 あ、ギーツが膝から崩れ落ちた。


「勘弁してください」


 力なく言うギーツの前に、しゃがむ。


「じゃあ、ギーツはどうしてほしいんですか?」

「俺と妹のことは、使用人として扱ってください」

「使用人は家族です」

「そうじゃなくて……」


 ギーツは言葉を詰まらせ、そんなギーツの肩を旦那様が(ねぎら)うように叩く。


「コレッティーナ。たしかに使用人は家族だ。だが、ナビレート家に雇われているというのも事実だ」

「はい」

「だから、最低限の線引きは必要なんだよ」


 なるほど。

 たしかに、会社で上司をお兄様やお姉様とは呼ばない。


「分かりました。アイラ、私のことは名前か奥様で読んでください」

「はい、奥様」


 アイラはすんなりと受け入れ、にこにこしている。

 お姉様と呼んでもらえて嬉しかったけど、仕方ない。


「……二人きりの時は、お姉様と呼んでもいいですよ」

「分かりました。私と奥様の秘密ですね」


 ふ、二人だけの秘密……。

 すごく特別感のある響きだ。

 って、あれ?


「私、デンガおじいちゃんって呼んでます」

「……デンガとは屋敷の外に一緒に行くこともないし、いいんじゃないか?」

「そうですかね」

「そういうことに、しておけ」


 ぽんと、旦那様の手が私の頭を撫でる。


「さ、中に入るぞ。デンガ、アンネ、二人を頼む」


 旦那様が私に腕を差し出し、その腕に手を乗せる。


「エスコート、久しぶりですね」

「たまにはいいだろ?」

「はい。毎日でもいいくらいです」

「──っ。……コ、コレッティーナがどこかに走り出さなきゃ、エスコートで大丈夫なんだけどな」


 見上げれば、旦那様がそっぽを向いている。

 さっきも、そっぽ向いてたよね……。


「旦那様、そのそっぽを向くのやめてください」

「え!?」


 驚いた顔で私を見た旦那様の顔が赤い。

 …………あ!!


「旦那様は女性が苦手なんでしたっけ」


 だから、最初に「お前を愛することはない」と予防線を張ったわけだし。


「女性は苦手だが、屋敷の者は平気だ。それに、コレッティーナも……」

「ふふっ……。私、家族ですもんね」


 旦那様は、家族にとても優しい。


「でも、照れるのは許してくれ……」

「はい。不慣れなのに、努力してくれる旦那様はステキです」


 私も旦那様の妻レベルをあげよう。

 妻ポジションを完璧にして、ずっと家族でいるんだ……。


 

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