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【第2章開始】「お前を愛することはない」と言われたので、労働対価に食事を要求します(連載版)  作者: うり北 うりこ@8/1ざまされコミカライズ①発売
家族を得た私、領地のために頑張ります

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家族を得た私、旦那様と一緒にいます③


「旦那様、本当にお仕事行くんですか?」

「あぁ、夜には帰ってくるよ」


 旦那様は私の部屋を出て、玄関ホールに向かう。


「今日くらい休んでもいいと思います。働き過ぎです」

「とは言っても、休むと溜まるしな……。今後はもう少しセーブするが、今回の件は最後まで見届けないと安心できないんだよ」

「今回の件……ですか」


 うぅぅ……。

 全員死刑にして、サッサと終わりになればいいのに。


「いつまでかかりますか?」

「俺のやる事務処理はニ月(ふたつき)程度だが、実刑まで考えると少なくとも半年はかかるな」

「……長くないですか」

「そんなもんだろ」


 そんなにかかったら、旦那様の健康が危ない。

 でも、旦那様は正式な手段で裁くと言った。お仕事に口は出せない……。


「旦那様、本を買ってもいいですか?」

「本? 食べ物じゃなくてか?」

「植物の本が欲しいです」

「いいぞ。庭に植える時、食べる時は、必ずそばにいる者に相談すること。分かったな?」


 こくりと頷けば、旦那様が頭を撫でてくれる。


「商人に来てもらうか、買いに行くか、どっちがいい?」

「買いに行きます」

「分かった。ギーツも、明日から正式にうちの従者になるから、その後に行くといい」

「ギーツのお手伝いは終わりですか?」

「あぁ。あとは、こっちの仕事だ」


 そうか。だから、ドリル家が無くなるって言ってたんだ。


「ということは、ギーツの妹も明日からですか?」

「そうだ。今日の夕方に、ギーツと共に移住してもらうことになっている」


 なんと! やることがたくさんだ。


「歓迎会します!」


 はい! と、手を挙げたら、頭がグラグラになるくらい撫でられた。


「もう少し優しく撫でてください」

「可愛いことを言うのが悪い」

「……? 可愛いは、褒め言葉です」

「だから、褒めてるだろ」


 そう言いながら、また撫でられる。

 力はやっぱり強い。でも、嬉しい。


「可愛い妻が待ってるので、早く帰ってきてくださいね」

「ん゛んっ……。善処する」


 咳払いをすると旦那様は、ふいっとそっぽを向いてしまった。


「あー、その、行ってくる」

「はい。いってらっしゃい!」


 旦那様を玄関ホールで見送ると、二階にダッシュする。

 自室に入り、窓から旦那様の乗った馬車を見下ろす。


「早く、帰ってきてください……」


 善処って、旦那様ができるものなのだろうか。

 遠ざかる馬車に、胸がシクシク痛い。

 さっきまで一緒にいたのに、もう会いたい。


「長い間会えてなかったから、旦那様不足かな」


 数日間、しっかり旦那様を摂取できたら解決するのになぁ。

 馬車が見えなくなった道をしばらく眺めたあと、ペチリと頬を軽く叩く。


「よし! 私もやることをしないとだ」


 働かざる者食うべからず!

 私は、私のできることをしないとだ。



 ***



 空がオレンジ色になった頃、旦那様が帰ってきた。


「おかえりなさい!」


 良かった。ちゃんと帰ってきてくれた!

 旦那様の前に出て、手を差し出す。


「ただいま。悪い、土産はないんだ」

「違います。上着です! 妻なので、受け取ります」


 前世で見た国民的アニメでは、旦那さんが帰って来ると、奥さんが上着を受け取っていた。


「ん? そうか? あとで、デザーに渡しておくんだぞ」

「……? 私がハンガーにかけますよ」

「それは、使用人の仕事だろ?」


 ……え? そうなの?

 たしかに、今まで上着を受け取ったことはない。

 義母が父の上着を持っている姿も見たことない。


「なるほど。では、デザーに渡します」


 妻の仕事、思ったよりも難しいな。

 一緒にお出迎えしていたデザーに、上着をお願いする。


「旦那様、体調は大丈夫ですか?」

「問題ない。ありがとな」


 じっと旦那様を見れば、わずかに視線をそらされる。

 ……嘘ついてる?


「今日は早く寝てください」

「そうだな。久々に早く休むよ」


 旦那様がそう答えた時、旦那様のとは別の馬車が到着した。

 御者台には、ギーツがいる。


「ギーツー!!」


 ぶんぶんと手を振れば、ギーツはまるで苦い葉っぱを食べたような顔をした。


「奥様、俺に大きく手を振るのは、どうかと思います」


 御者台(ぎょしゃだい)から降りてきたギーツに、早々に言われてしまう。


「何でですか?」

「奥様は、人との心の距離感が近すぎます。皆が善人というわけじゃないんです」

「知ってますよ。でも、ギーツは私の食べ物を取らないです」


 そう言うと、ギーツが頭を抱えてしまった。


「いいぞ、ギーツ。その調子だ」

「何がですか?」

「もう皆、感覚が麻痺してるからな。ギーツが最後の(とりで)なんだよ」


 旦那様は腕組みをしながら、自信満々に言う。

 すると、ギーツがうなった。


「勘弁してくださいよ……」

「そのための護衛だろ?」


 どういうこと?

 よく分からないけど、旦那様とギーツの心は繋がりあっているのか……。


 おかしい。私の方が旦那様と過ごした時間が長いし、一緒にお肉様だって食べてるのに……。


「ギーツは、家族としては新参者です! 旦那様と通じ合ってるのは、私です!! 負けませんから!!」


 フンッ! と、鼻息荒く宣言すれば、ギーツはニヤリと笑い、旦那様はふいっとそっぽを向いてしまった。



 

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