家族を得た私、旦那様と一緒にいます②
***
お茶を飲み終え、押し問答の末、旦那様を私のベッドへと連れ込んだ。
「旦那様はいい子だね〜♪ おやすみよ〜♫」
旦那様の横に転がり、ぽんぽんと寝かしつける。
が、旦那様が寝てくれない。
「おやすみころりん〜♫ すっとんっとんっ♫」
「──ぶふっ」
「寝てください。もう三十分は経ってます」
ぽん、ぽん……。
震える旦那様の胸を、手を休めることなく、ぽんぽんする。
「いや、だってな……」
「だってじゃないです。ねんねですよ。ねんね!」
何て、寝つきの悪い!
これは、世にいう不眠というヤツでは!?
「こんなに凝視されてたら寝れないって」
「……? 私、寝れますよ?」
「コレッティーナだからな……」
ん? どういうこと?
「ふぁぁぁぁ……。私の方が眠くなってきちゃいました。私が寝ちゃう前に、頑張って寝てください」
ぽんぽんしている手を止めて、その手で旦那様の目を覆う。
「目、開けてたら寝れません」
「そうだな」
何だろう。
そのちょっと諦めました。みたいな声は……。
「なぁ、コレッティーナ。話があるんだ」
「お昼寝が終わったら聞きます」
「……話さないと、眠れない」
──っ!
そうか、悩みか!!
「聞きます!!」
しっかり解決したら、安心して寝れるはず。
と思ったんだけど……。
「悩みって、それですか?」
「悩みなんて言ってない。それに、大事な話だ」
うーん。大事ねぇ……。
ラビソン家のことは、もう私の中では終わった話なんだよなぁ。
「あの人たちがどうなろうと、どうでもいいと言いますか……」
ラビソン家は没落。
父は処刑。
義母と義妹は不正に直接は関与していなかったので、貴族籍を剥奪して、修道院に送る。
と聞いても、そうなんだぁ……以外の感想はない。
「でも、旦那様の寝れない理由が生家だと思うと、憎いです」
「は?」
「だって、こんなに旦那様が寝れないんですよ!!」
くそぅ……。忌々しい。
こんなことなら、夜会で義母と義妹を毒殺しておけば良かった。
根っこを使わなかったことが、悔やまれる。
「それと──」
「あの人たち、まだ何かしたんですか!?」
「いや、別件だ」
むむむ。悩みの種が他にもあると……。
「ドーザー子爵家なのだが──」
「ドーザー? ……あぁ! ドリルですね」
「ん゛っ……、そう……だな。ドリルの家もこれから取り潰しとなる。もう二度と会うことはないから、安心しろ」
へぇ。ドリル家も潰れるのか。
「手間暇かかりそうですね……。根っこ、使います? キノコもありかと」
「殺さないからな!!」
「大丈夫ですよ。私がやります」
おや。旦那様、黙っちゃった。
「心配は無用です。遺書もしっかり作成しますから!」
「するなっ!」
旦那様の目を覆っていた手がどけられる。
「法に則って、正式な手段で裁く。これは、決定事項だ」
「分かりました。寝てください」
起き上がった旦那様の体を押す。
やれやれ、これだから仕事人間は……。
「旦那様は、休むことを覚えた方がいいですよ。それで、悩みはまだありますか?」
「そもそも悩みじゃなくて、報告だ。コレッティーナも関係者だろ」
「そうですね。じゃ、何もなければ今度こそ、おやすみなさい。歌が駄目なら、本でも読みますか?」
ん? 何で半目なの?
「仕方ありませんね。特別に、昔ばなしをしてあげます。むかーしむかし、あるところに──」
「なぁ、何で川に洗濯に行くんだ? 井戸の水を汲めばいいだろ。それに、ご高齢の夫人が川に入るのは危険だ」
「……昔ばなしは、逆効果なのでやめます」
まさかツッコミを入れられるとは、予想外だ。
あと、寝るのに効果がありそうなものは……。
「ちょっとホットタオル作ってきます」
「ホットタオル?」
「はい。リラックスできますよ。絶対に起き上がったら、駄目ですからね」
急いで部屋を出て、タオルをもらいに行く。
ついでにマッサージもありかもしれない。
旦那様の首とか肩、ガチガチそうだもんなぁ。
「旦那様、お待たせしまし……た?」
ホットタオルを持って、ベッドへと戻れば、旦那様が寝息を立てている。
「えっと……、起こすといけないし、ホットタオルは私が使おうかな」
これは、もしかして、もしかするかもしれない。
旦那様、誰かと寝れないタイプの人なんじゃ!?
そうか……。盲点だった。
ということは、もう一緒に寝れない?
いや、待てよ。お昼寝で慣らしていけば、どうにか……。
それまでは、旦那様が寝たあとに忍び込めばいいかな。
旦那様の隣に寝転んで、目を閉じる。
気が付いたら、もうお昼ごはんの時間だった。




