家族を得た私、旦那様と一緒にいます②
一度、旦那様から離れて身支度を整えに部屋へと戻る。
ちょうど支度が終わった頃、旦那様が来てくれた。
「では、失礼いたします」
「アンネも一緒にキッチン見ないんですか?」
「はい。後ほど見せていただきますね。せっかくですので、まずは旦那様とお二人がいいと思いますよ」
私と旦那様の朝食の用意を終えると、そそくさとアンネが部屋を出ていった。
「どうして、今日はお部屋で食事なんですかね?」
「……何でだろうな。冷めないうちに食べよう」
フォークでシャキシャキのレタスを刺す。
「んー! 新鮮です!!」
かかっているドレッシングもサッパリした味で美味しい。
「そういえば部屋に帰った時、アンネが声にならない悲鳴をあげてました」
「あぁ」
「聞いても「大丈夫です」しか言わなかったんですけど、何だと思いますか?」
「……さぁな。それより、ウィンナー好きだろ? ほら、これもいるか?」
ぷりぷりのウィンナー様が増えて、お皿に三本並ぶ。
「神々しい……」
うっとりとウィンナー様を眺めつつ、ふかふかパンに切れ込みを入れる。
「旦那様、ウィンナー様の進化をお見せします」
「うん?」
「まずはふかふかパンの間にレタスを入れ、更にレタスのベッドにウィンナー様をお迎えします。最後にケチャップで美味しさを増し増しにして……完成です!!」
キャベツをはさむのも美味しいけど、レタスも良い!
「食べてみてください!」
旦那様へと手渡そうとすれば、旦那様がウィンナーパンを凝視した。
「……ウィンナーだぞ?」
「はい。進化されたウィンナー様です」
「自分で食べなくていいのか?」
戸惑う旦那様のお皿にウィンナーパンを置く。
「やみつきになる味なので、旦那様も食べてください」
そう言いつつ、自分の分のウィンナーパンを作り、かぶりつく。
「んふー! 最高です!!」
食感も楽しければ、パンとレタスとウィンナー様のハーモニーも最上級である。
「──っ!! 美味しいな」
「はい。チーズをかけても、すっごく美味しいですよ」
「……それは、美味しそうだな」
ゴクリと旦那様の喉が鳴る。
「今度、料理人にリクエストしておきます。一緒に食べましょう」
「あぁ。楽しみだな」
「はい!」
小さな約束。
それが、嬉しい。
昨日まで美味しいのに、美味しくなかった。
だけど、今日は特別に美味しい!
んふふ、お昼ごはんは何かなー!!
***
「「ごちそうさまでした」」
食事を終えると、旦那様の手を取って、衝立の前に移動する。
キッチンは私の部屋の一角にあって、中が見えないようにと衝立を置いてくれたのだ。
「楽しみですね!」
「そうだな」
笑った旦那様の顔を見て、おや? と思う。
旦那様の目のクマがすさまじい。顔色は青白いのに、耳が赤い。
「旦那様、寝ましょう!」
「は?」
「きっと熱があります」
一緒にいられることが嬉しくて、気付けなかった。
妻、失格だ。
「大丈夫だ。キッチン、見るんだろ?」
「キッチンは逃げません!」
「そうだけど、ずっと楽しみにしてたんだろ?」
濃紺の瞳が優しく細まる。
「楽しみにしてましたけど、もう大丈夫です」
「どういうことだ?」
「旦那様が笑ったからです」
大切だって、旦那様の目が言ってる。
ホットミルクを飲んだあとみたいに、ぽかぽかする。
「何より、旦那様の体調が一番ですよ」
「……なぁ、コレッティーナ。そこのキッチンで、コレッティーナにお茶を淹れてほしいんだ。お願いしてもいいか?」
「…………はぃ」
ほら、旦那様はまた私のことを優先してくれる。
「じゃあ、旦那様は中で座っててくださいね」
大きくて、繊細そうな節のある手を握り直して、中に入る。
「──っ!」
「うん。いいな」
決して広くはない。
けれど、私の希望を叶えてくれた木製のキッチン。
真ん中にあるテーブルまで進んでいく。
「木の匂いがします……」
「だな」
葉っぱ色のクッションが敷かれている木製の椅子を引き、旦那様に座ってもらう。
「ここで待っててください。準備してきます」
急いでお湯を火にかけ、根っこのお茶を取りに行く。
旦那様と新しいキッチンでお茶ができて嬉しい。
私のことを考えてくれてることも嬉しい。
けど、旦那様の体調が悪いと、胸がモヤモヤしてしかたない。
「お待たせしました」
「ありがとう」
二人でお茶を飲んでいる時間は、静かだった。
目が合えば、微笑んでくれて、モヤモヤが濃くなる。
「今日はあまり話さないんだな」
「旦那様が元気になったら、たくさん話します」
「……心配かけて、ごめんな。本当に体調は問題ないんだ。少し寝不足なだけで」
旦那様は眉を下げ、困ったように笑う。
クマ、すごいな……。
こんな状態で、大丈夫なわけない。
旦那様に、旦那様を大切にしてほしい……。
「飲み終わったら、お昼寝してもらいます」
「悪い。まだやることがあるんだ」
「駄目です。旦那様に必要なのは休息です。寝るまで見張ってますからね」
うーん。トントンして、子守歌でも歌ったら、すぐに寝てくれるかな?
旦那様が大切にしてくれないなら、私が旦那様を大切にしないと!
旦那様の健康は、私が守る!
きっとそれも、妻の、家族の役目だ。




