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【第2章開始】「お前を愛することはない」と言われたので、労働対価に食事を要求します(連載版)  作者: うり北 うりこ@8/1ざまされコミカライズ①発売
家族を得た私、領地のために頑張ります

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求めることと、求められること〜カリウスside〜


 コレッティーナは、すぐに寝息をたて始めた。

 普段から早寝早起きなのだ。よほど、頑張って起きていたのだろう。


「ごめんな……」


 寝顔を眺め、思わず言葉がこぼれる。

 ずいぶんと懐いてくれたとは思っていた。だが、こんなにも不安定になるとは思わなかった。


「働き方、考えないとだな」


 働き過ぎの自覚はある。

 今回のドーザー子爵家のこともだが、ラビソン伯爵家の問題もまだすべてが解決したとは言えない。

 コレッティーナの関わることに手を抜く気は毛頭ないが、不安にさせては本末転倒だ。


「…………旦那様……むにゃ」


 ふにゃりとコレッティーナが笑う。


 この笑顔を守りたい。

 大切にしたい。

 誰よりも幸せになってほしい。


「おいしい……ですよ……」


 ──ぱくり。


 ん? ぱくり?


「────っ!!?? え? は? ちょっ、待て!! 離せ!!」


 手を引き抜けば、コレッティーナの手が泳いだ。

 眉が下がり、悲しそうな顔をしている。


「これは、アメじゃない!」

「違い……ます……。アメで…………」


 ね、寝てるんだよな!?

 くわえられた、自身の手を見る。


 ──ドッドッドッドッ。


 心臓の音がうるさい。


「何……で…………」


 俺の手をくわえたコレッティーナの唇を見た瞬間、全身の血が沸騰したかのような熱が身体中を駆け巡る。


「娘のように思ってるんだぞ……」


 おかしい。

 こんなのは、不健全だ。

 コレッティーナは十歳も年下で、娘のように大切に思っていて……。

 なのに、何でこんなに動悸がするんだ!?


「こんなの、最悪だろ……」


 コレッティーナが求めているのは家族で、俺が与えるのは安心であるべきだ。

 ……うん。勘違いだ。

 デザーに手をくわえられたとしても、同じように思……わないな。気持ち悪い。


「明日、殿下に相談してみようか……」


 殿下は女性との交流も多い。きっとこの動悸の正しい正体も教えてくれるだろう。


 それに、日々の激務で少しおかしくなっているのかもしれない。

 よし、俺も寝よう。

 目が覚めたら元通りのはずだ。


「………………寝れない」


 目を閉じても、いっこうに眠気がこない。

 疲れているはずなのに、隣から聞こえるコレッティーナの寝息に、緊張してしまう。


「ソファーで寝るか」


 体を起こし、ベッドから片足を降ろす。


「んむぅ……」

「──っ!」


 良かった。寝てる。

 寝返りを打ち、反対側を向いたコレッティーナに、胸をなで下ろす。

 と、同時に罪悪感が胸を占めた。


「…………娘、娘なんだ。何ら問題はない」


 コレッティーナの横に寝転ぶ。

 あれほど、一緒に寝たがったのだ。

 明日の朝、俺がソファーで寝ていたら、コレッティーナはどう思うかなんて考えなくてもわかる。


 結局、なかなか寝付けなくて。眠気が来たのは、ようやく空が白み始めた頃だった。



 ***



 あたたかいものが手に触れ、意識が浮上する。


「あ、起きました。おはようございます」


 目の前で、コレッティーナが笑う。


「──っ!!」


 ぎしりと固まる俺に気付くことなく、コレッティーナは繋いでいる手を見せてくる。


「寝ている間に、ほどけちゃったみたいです。なので、また手を繋ぎました。これからは、旦那様といる時はなるべく手を繋ごうと思います」

「え゛っ!?」

「手を繋ぐって、すごいんです。一緒にいるなって、感じられます」


 コレッティーナは、新発見! と、目を輝かせているが、それどころではない。

 どうにかして、回避しなくては。


「コレッティーナ、俺の手が片方ふさがる」

「私のもふさがります」

「そうなると、何かと不便だし、コレッティーナにお菓子をあげられなくなる」

「えっ!!??」


 目がまん丸に見開かれる。


「いつも仕事しながら、お菓子を出してるだろ」

「はい。食べさせてくれます」

「片手が使えないと、できなくなる」


 これで大丈夫。と思ったのだが、不思議そうに首を傾げている。


「さすがに、仕事の邪魔はしませんよ。繋ぐのは、移動中とか寝る時です」

「そ、そうか……」


 って、何をがっかりしてるんだよ。

 ────っ。これじゃ、俺がコレッティーナを家族としてじゃなく、異性として意識しているみたいだ。


「旦那様、たくさん一緒にいてくださいね。旦那様のそばが一番好きです」


 安心しきった幼子のように、コレッティーナが笑う。

 答えなければ。

 やっと手に入れた安心を、何としてでも守らなければ。


「そう……だな……。俺もコレッティーナを大切に思っているよ。俺だけじゃなく、屋敷の皆がだ。だから、コレッティーナは……」


 空いている方の手で、頭を撫でようとして、指先が震えた。


「旦那様?」


 俺の心情を察知したのか、コレッティーナの瞳が不安げに揺れている。


 目を逸らしてしまいそうになり、コレッティーナを包み込むように、抱きしめる。


「だから、コレッティーナはナビレート家(ここ)にいてくれ。そして、女主人として、ギーツの妹を温かく迎え入れてほしい」

「はい」


 ギュッと、存在を確かめるように抱きつかれる。


「…………旦那様、すごく心臓が速いです」

「き、気のせいじゃないか?」

「ふふっ。大丈夫ですよ。そんなに心配しなくても、ここは温かいから、ギーツの妹もすぐに慣れます」

「そう……だな……」



 

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