家族を得た私、旦那様と一緒にいます①
「……一緒に寝る?」
「はい。なので、旦那様も寝る準備してください」
ちょうど帰ってきたので、旦那様はまだ仕事着。
お風呂に入ったりしたいだろう。
「コレッティーナ、自分の部屋で寝ような? 明日、起こしに来たアンネが、コレッティーナがいないと驚くだろ?」
「なら、お部屋に手紙置いてきます。すぐに戻ってきますね」
抱えていたマクラを、旦那様のマクラの隣に並べる。
「待て待て待て待て……」
「はい?」
「一緒に寝るのはまずいって」
「何でですか? 私は妻なので、問題ありません」
「そうだけど、そうじゃなくてだな……」
…………あぁ、なるほど。
私と一緒に寝るのが嫌……と。
「分かりました。困らせて、ごめんなさい。おやすみなさい」
マクラを再び抱きしめて、ペタペタと裸足で歩いて扉に向かう。
「ちょっと待て。何か勘違いしてないか?」
「してません。旦那様は私と寝るのが嫌なんですよね」
妻だからと言って、嫌なものは嫌。
それは、どうしようもないこと。
何だか胸がもやもやしてるけど、これは私の問題だ。
「嫌なんて言ってないだろ!」
「じゃあ、いいんですか?」
「……おぅ」
スッと視線をそらされる。
嫌悪感はない……みたいだな。
「手、繋いで寝てくれますか?」
「え゛!?」
旦那様がギョッとした顔をした。
耳が赤い。
「駄目ですか?」
「──っ!! 駄目じゃない!」
ふふっ、言質取った。
もう嫌だなんて言わせないもんね。
「じゃ、お手紙書いてきます! 旦那様は寝る支度を進めててくださいね」
ふんふんふ〜ん♪
歩く足が軽い。手紙を書くのも、今はウキウキする。
『アンネへ
旦那様と寝ます。探さないでください
コレッティーナより』
うん。これでよし!
手紙を持って部屋の外に出ると、アンネが気づくように扉の隙間に挟んだ。
***
「……何でそんなに離れてるんですか?」
「気のせいだ」
そんなわけない。
私と旦那様、アンネ、デザー、デンガ……詰めれば五人で一緒に寝れそうなくらい大きなベッド。
なのに、旦那様が寝返りしたら落ちそうなくらいハシッコで横になっている。
「見てください。おかしいです」
ベッドの真ん中で大の字になってみる。
けれど、私の手は旦那様には届かない。
「……ふっ……んぐっ…………。コレッティーナが小柄なだけ……だろ……」
むむむ……。
そうですか。そうなんですね。
──ゴロゴロゴロゴロ。ピタッ。
「──っ!!」
「もういいです。ここで寝ます」
旦那様のすぐ隣で宣言する。
「コレッティーナ。元の位置に戻ろうか」
「嫌です」
「な、いい子だから……」
「嫌なものは嫌です! 今日は旦那様の隣で手を繋いで寝ます。旦那様もいいって言いました」
ギュッと旦那様に抱きつく。
旦那様は私のことを家族と言ったのだ。
家族なら、ギューだってする。
隣で寝るし、手も繋げる。
「絶対に離れません!!」
「…………コレッティーナ」
ため息混じりの言葉に、思わず肩が揺れる。
旦那様を見れない。
「俺が悪かった。ごめんな」
旦那様が、ぽんぽんとあやすように、優しい力で私の背中を叩く。
穏やかな声と、旦那様の体温が気持ちいい。
「旦那様……」
「何だ?」
「次、屋敷を長く空ける時は、私も連れて行ってください。一緒に働きます」
旦那様からの返事がない。
体をほんの少し離し、顔を見れば難しい表情をしていた。
「……城での仕事は機密事項も多い。コレッティーナの能力が高いからといって、働くことはできない」
「じゃあ、お留守番ですか?」
「そうだな……」
そうか。またお留守番か……。
何だろう。気持ちがしぼんだ綿菓子みたいにペショッてなる。
「なら、毎日帰ってきてくれるように第二王子殿下の字で書面を作ります。旦那様はこっそり、殿下の印を押してきてください」
「……コレッティーナ。それは犯罪だ」
「旦那様の字で、第二王子に直談判を──」
「仕事なんだ。周囲に迷惑をかけるわけにはいかない」
「──っ。でもっ!!」
わかってる。私が間違ってるってことくらい。
だけど、旦那様が屋敷にいないのはもう嫌だ。
遅くてもいいから、帰ってきてほしい。
「帰ってこれるよう、努力する」
「はぃ……」
頷けば、小さく笑う声がした。
「何で笑ってるんですか?」
「嬉しくてかな」
「嬉しい……ですか?」
「あぁ。帰ってきてほしいと思ってくれていることはもちろんだけど、食べ物以外でのコレッティーナの気持ちが知れて嬉しいんだよ」
ん? それだと食べ物以外、どうでもいい人間みたいじゃないか。
「微妙に失礼です」
「元気になったな……と思っただけだ。ほら、さすがにもう寝るぞ」
くっついていた体を離され、ゴロンと上向きにされる。
「旦那様、手がまだです」
繋いでくれた手はしっとりとしていて熱い。
そうか。旦那様ももう眠いんだ。
お疲れだもんね。
「おやすみなさい」
「おやすみ、良い夢を……」
この日は、朝までぐっすり眠れた。




