表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第2章開始】「お前を愛することはない」と言われたので、労働対価に食事を要求します(連載版)  作者: うり北 うりこ@8/1ざまされコミカライズ①発売
家族を得た私、領地のために頑張ります

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
49/61

家族を得た私、誘拐されました③


 無事に飲み水をゲットし、葉っぱや実で空腹も(しの)げた。

 日が落ちきる前にと集めた焚き木に火を灯し、誘拐犯の男の人と一緒に座る。


「火起こしは習得してないので、助かりました。ありがとうございます。お礼に、これあげます」


 明日の朝に食べようと思っていた葉っぱを差し出す。


「さっき摘んだので、新鮮ですよ」

「……ありがとな」


 そう言いながら、男の人は葉っぱをポケットにしまう。


「何してるんですか? それは食べ物です」

「食べる気分じゃないんだ」


 シリアスな雰囲気である。

 けど、大変なのは私もだ。


「いいですか。人間、お腹が減ると判断力が低下します。好き嫌い言わないで、ちゃんと食べてください」


 さっきの私がそうだ。

 野生のキノコを口にするなんて、どうかしてた。


「……分かったよ」


 遠い目をしながら、男の人が葉っぱを口に入れる。


「…………青臭い」

「葉っぱですから、当たり前です。今頃、屋敷で美味しい食事をお腹いっぱい食べてるはずだったのになぁ……」


 葉っぱが悪いとかじゃない。

 ただ、お肉様も食べたかったのだ。

 お肉様の味を覚えてしまったが最後、お庭の植物だけの生活には、もう戻れない。


「誘拐して、悪かったな」

「はい。おかげでお肉様を食べ損ねました。重罪です。それに、帰ったら旦那様に(しか)られます」

「心配はされても、怒られないだろ」


 男の人の言葉に、ふるふると首を横に振る。


「お菓子につられたと知られたら、絶対に怒られます」

「……菓子に釣られたのか?」

「珍しいお菓子があるからお茶しようって、ドリルが言ったんです。それなのに、くれませんでした。ドリル、許すまじ……」


 ギリッと歯を食いしばる。


「お嬢ちゃんは、もう少し警戒心というものを持ったほうがいい。お家の人が心配するぞ」

「そうですね。次からは先に物証を見せてもらいます」


 確実に、食べれるお茶会にしか行かないんだから。


「……火の番は俺がしとくから、もう寝な。たくさん寝ないと、小さいままだぞ」

「余計なお世話です。成長期はもう終わりました」


 じろりと睨めば、誘拐犯は肩をすくめた。


「女の子は、十四、五歳で成長が止まる子もいるか。悪かったな」


 …………ん? 十四、五歳?


「私、十八歳です」

「は? 妹と同じくらいにしか……」

「失礼ですね。コレッティーナ・ナビレート、十八歳。職業はナビレート伯爵家の妻ですよ」


 ぬんっと胸を張る。


「……妻? カリウス・ナビレート伯爵の?」

「そうですよ。人のこと、指ささないでください」


 指された指を握る。

 火で照らされた男の人は、顔を引きつらせていた。


「終わった……」


 ぼそりと呟くと、今度は笑っている。


「目が死んでますけど、大丈夫ですか?」

「ははは……、自業自得だ……」


 乾いた笑い声が怖い。


「よりにもよって、溺愛されてる妻とか……」

「さっき名乗ったじゃないですか。何だと思ってたんですか?」

「前伯爵の隠し子かと……」


 何だ、それは。

 貴族って、隠し子とか普通なの?

 まぁ、義妹は二歳下だしな。存在知ったの、お母様が亡くなってからだし、そんなものか。


「で、どうして隠し子なんです?」

「どうしてって……お嬢ちゃんは十四、五歳にしか見えないし、溺愛妻って噂だから、絶世の美女だと思ってたんだよ……」

「へぇ……」


 ぶつぶつと何か言っている男の人を見る。

 これ、いつまで続くんだろ。


「この話、飽きたから寝ますね」


 ごろりと地面に横になる。

 うん、固いな。


「そういえば、何で誘拐したんです? お金ですか?」

「…………そうだよ」


 そうか。お金か。

 納得したら、眠くなってきた。


「何で金が必要か、聞かないのか?」

「さっき事情を聞くって言いました。その時、答えなかったじゃないですか」


 ふぁ……と、あくびが出る。

 焚き火のパチパチという音が心地よい。


 眠りへと足を踏み出した、その時──。


「借金があるんだ」


 とんでもないタイミングで、男の人が話し出した。


「……もう寝るので、ひと言でまとめてください」

「え? あ、すまない。雇い主の家が、借金を肩代わりしてくれている。返せないようなら、妹が売られる」

「そうですか」

「父親が新しい事業に手を出して作った借金なんだ。それを妹に返せだなんて……」


 へぇ……。

 気の毒な話だけど、テンプレだなぁ。

 本当に、この誘拐犯の男の人は、テンプレでできている。


「お父さん、まだ生きてるんですか?」

「あぁ……」

「必死に働いてます?」

「いや、酒ばかりだよ」


 うむ。意外性の欠片もないな。

 でも、そんな父親なら、いらないよね。


「では、お父さんの臓器でも売って、お金を工面したらどうです?」

「は!?」

「親の尻を子どもが拭くことないです……よ……」

「って、おい。寝るのか!? 臓器って何だよ? おーい!!」


 むにゃ、うるさい……。

 一言どころか、話は十分、聞いたって。

 続きは、また明日にして……。


 あぁ、歯磨きしてないって、アンネに怒られるな……と、思いつつ、意識は深いところに沈んでいった。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ