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【第2章開始】「お前を愛することはない」と言われたので、労働対価に食事を要求します(連載版)  作者: うり北 うりこ@8/1ざまされコミカライズ①発売
家族を得た私、領地のために頑張ります

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3 消えたコレッティーナ〜カリウスside〜


 時は少し遡り、コレッティーナが(さら)われ、森だな……なんて呑気(のんき)なことを考えていた頃、ナビレート伯爵家では──。



「は!? コレッティーナが消えた!?」


 王城から馬で駆けてきた護衛が、深く頭を下げる。


「大変申し訳ございません」

「どこで消えたんだ?」

「奥様が王城の庭園に足を踏み入れまして……、見失ってしまいました……」


 …………そういうことか。

 そうだよな。あの予測不能な動きについていくのは無理だよな。


「すぐに王城へ行く。第二王子殿下には、報告済みか?」

「はい。既に捜索を開始してくださっております。申し訳ございません」

「謝らなくていい。仕事を優先して、一緒に行かなかった俺の落ち度だ。王城で木の上から食糧庫の木箱の中まで徹底的に探すぞ」

「……え?」


 よく分からないという顔をされる。


「コレッティーナは、実をとるために木に登るし、茂みにも入っていく。とにかく急ごう。暗くなるまでに探しださないと、腹を空かせて何を食べるか分かったもんじゃない」


 俺の言葉に、執務室で一緒に仕事をしていたデザーとザールが深く頷く。


「アンネとデンガも呼んで参りますか? 奥様の動きを少しでも予測できる者がいた方がよろしいかと」

「そうだな。だが、アンネは屋敷に置いていく。もし、コレッティーナがお腹が空いたからと一人で帰ってきた場合、普段からよく接している者が誰もいないと寂しがる」

「承知いたしました。アンネにも状況を知らせるため、声をかけて参ります」


 デザーが、部屋を出ていく。


「……旦那様、さすがにお一人では帰ってこないのでは?」


 ザールはそう言うが、相手はコレッティーナだ。常識は通用しない。


「お腹が空いたので、馬を拝借してきました。とか言って、帰ってくるかもだろ」

「あぁ……」


 遠い目をして、ザールが頷いた。


 部屋に戻ってきたデザーの後ろでは、デンガがはしごを持ち、アンネは大きな包みを抱えている。


「これを持っていってください。どうか、どうかコレッティーナ様をよろしくお願いします」


 包みをアンネから受け取り、デザー、ザール、デンガ、使用人たちを連れ、コレッティーナを探すため、王城へと向かった。



 ***



「カリウス、すまない。誘拐ではないといいんだけど……」


 到着早々、第二王子殿下が駆けてくる。

 息が上がっている様子から、殿下も探してくれていたのだろう。


「こちらこそ、ご迷惑をおかけして申し訳ありません。コレッティーナの場合、誘拐や監禁とも断言が難しく、捜索範囲がとにかく広くなります。食べ物、植物のある場所は特に念を入れて捜してください。あと、これを……」


 アンネが渡してくれた包みの中から、キャンディやチョコレート、クッキーなどを渡す。


「食べている暇はないと思うんだけど」

「これで、おびき出します」

「…………はい?」

「何よりも、効果が絶大かと」


 気持ちは分かる。

 だが、その半目はやめてほしい。


「それと、木のそばで大声を出すのは控えてください」

「どうしてかな?」

「驚いたコレッティーナが落ちてくるかもしれません」


 第二王子が額を押さえている。


「カリウス、心配なのは分かるよ。だけど、相手は動物じゃない。人間だ。いくらなんでも──」

「それがあり得るんです。殿下も、コレッティーナの食への執着……じゃなくて、探究心をご存知でしょう?」

「…………そうだね。カリウスがそう言うのなら、探し方を変えようか」


 皆で探し、三時間が経った。

 けれど、コレッティーナが見つからない。


「コレッティーナ、おやつにするぞ。アンネが用意してくれたクッキーがある。出ておいで」


 大声になりすぎないよう、探し続ける。

 怒っていると勘違いしたら、クッキーだけ取って逃げていくかもしれない。


「旦那様、日が落ちてきましたの。もう外にはおらんのではないじゃろうか」


 一緒に庭園を探していたデンガに話しかけられる。


「どうして、そう思う?」

「コレッティーナ様は、日が沈み始めると庭園には来ませんのぅ。「食べ物を探すのに、効率が悪いです」と言っておりましたのじゃ」

「なるほど……」


 ということは、明かりが届きにくい温室や食糧庫にもいない可能性が高い。


「────っ」


 一気に血の気が引いていく。

 コレッティーナのことだ、庭園を楽しく散策している間に、迷子にでもなったのだろうと、どこか楽観視していた。


 けれど──。


「第二王子殿下の元へ行く」


 誘拐、監禁の可能性が跳ね上がった。


 何故、俺はその可能性を低く見積もった?

 先に城外を探すべきではなかったのか?

 コレッティーナだからと、どうして大丈夫だと決めつけた?


「旦那様、落ち着いてくだされ!」

「……デンガ」


 デンガの眼差しは、力強い。


「コレッティーナ様ほど、サバイバル能力の高い貴族女性はいませんのじゃ。だから、コレッティーナ様は大丈夫ですじゃ」


 ほんの一瞬、デンガの視線が揺れた。


「……そうだな。捜索を誘拐、監禁に絞る。デンガは先に屋敷に戻って、ご馳走を用意するよう伝えてくれ。帰ってきた時、腹を空かせているだろうから」


 不安なのは、俺だけじゃない。

 何が何でも見つけ出す。

 待ってろ、コレッティーナ。


 必ず、助けてやるからな……。


 

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