「お前を愛することはない」と言われた私、居場所を見つけました②
「そう言えば、ラビソン家に送った侍女はどうするんだ?」
旦那様に再び肩ぐるまをしてもらい、実を取っていれば、何てことないような声で聞かれる。
「あー」
しまった、すっかり忘れてた。
「その侍女いましたか?」
「いなかったな。でも、屋敷のどこかにいるかもだろ」
たしかに。
「探しますか」
「いや、いいんじゃないか? 本当に反省してるなら、向こうだって気まずいだろ」
「……そうですね」
姿を現さなければ、ナビレート家に戻れるようにしてもらおうかな。
「って、あそこでのぞいてるの……」
「いたな」
「いました」
自分からは何も言ってこないのに、何か言われるのを待っている。
「人間って、変わらないものですね」
「そうだな。全員とは言わないが、彼女は変わらなかった。それだけのことだ」
強いものに流されて、誰かに何かをしてもらうのを待っている。
自分の意見も言えず、ただ他者に期待して。
「旦那様、どうしましょう」
「ん?」
「ビンに入り切らないです!」
押せば入るかもだけど、実が潰れてしまう。
「これだと、お屋敷のみんなにお土産できません」
「全員に持って帰る気だったのか?」
「はい! お屋敷のみんなは家族だって、旦那様が教えてくれました」
だから、みんなに持って帰りたい。
「スカートの上に乗せたら……」
「駄目に決まってるだろ!」
そうだよね。パンツ見えちゃうかもだもんね。
「樽でも拝借するか」
「名案です! さっそく、第二王子殿下のところに戻りましょう!!」
うきうきと歩き出せば、旦那様は私の少し後ろを歩く。
「横、歩かないですか?」
「横だとコレッティーナの奇行を止められないだろ」
「……? 私、普通ですよ」
私からしたら、旦那様の方が変だ。
顔はヒーローなのに、心はヒロインちゃんだし。
「……普通ってなんだろうな」
「自分が普通と思ったら、それが普通です」
普通なんて、人の数だけある。
これが今の私の普通だ。
そして、幸せでもある。
だからこそ、普通がなくならないように、努力し続けなければならない。
「旦那様!」
「なんだ?」
「私、旦那様の妻もやるし、領地の果物加工も頑張ります。他にも、一生懸命働きます。だから……」
これからも、労働対価に食事をください!!
と言おうとして、何か違うなと口を閉じる。
「だから……。ずっと一緒に食事をしてください!!」
あぁ、そうだ。
最初は食事が欲しかった。
食事さえあれば、良かった。
けど、そこが満たされた今、私は旦那様と食事を楽しみたい。
「何、当たり前のこと言ってんだ? コレッティーナは、俺の妻なんだから、一緒に食事をするに決まってるだろ。役に立つとか、立たないとか関係ない」
結婚初夜、旦那様は「お前を愛することはない。俺に何も期待するな」と言った。
けど、今は一緒にいるのを当たり前だと言う。
「旦那様、変わりましたね」
「……そうか? 人はそうそう変わらないだろ。俺からしたら、コレッティーナは幼くなったな」
……幼く?
そんなバカな。
「何言ってるですか? いっぱい食べるようになったから、ここも少し成長して──」
「そういうことじゃない!!」
胸を押さえて主張すれば、真っ赤になって旦那様が叫ぶ。
「話し方とか、行動の話だ。リラックスしてる時は特に幼いからな」
「旦那様は、ヒロインちゃんのくせに……」
ぼそりと言えば、頭を上から潰される。
「何だって?」
「旦那様はかっこいいヒーローじゃなくて、心優しくて努力家で可愛いらしいヒロインちゃんがピッタリです」
ダッと走って、旦那様から逃げる。
「旦那様、大好きですよ!! ずっとヒロインちゃんでいてください」
「ヒロインは余計だ!!」
噛みつくように言われるけど、怖くなんかない。
旦那様が優しいって知っているから。
「まぁ、俺もコレッティーナのことが好きだよ」
「はい。家族ですもんね!」
「そうだな。デザーも、デンガも、アンネも、ザールも、ミカナも、みんなコレッティーナのことが好きだよ」
宝物をギュッと集めたみたいな、キラキラした気持ちに、自然と足がスキップをする。
「私も、みんなが大好きです!」
明日も明後日も、明々後日も、みんなで美味しいものを食べていこう。
「樽をゲットして、たくさん持ち帰りましょう!!」
大好きの気持ちを込めて、渡すんだ。
きっと、みんな笑顔で受け取ってくれるから──。
──第一章End──
第一章は、ここまでとなります。
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