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【第2章開始】「お前を愛することはない」と言われたので、労働対価に食事を要求します(連載版)  作者: うり北 うりこ@8/1ざまされコミカライズ①発売
「お前を愛することはない」と言われたので、労働対価に食事を要求します

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「お前を愛することはない」と言われた私、居場所を見つけました①


 そう、庭にあったのだ。

 庭があったから、私は生きてこれた。


「あ、実を集めないと……。証拠も集まったので、庭に行ってもいいですか?」

「え? あ、うん。いいよ」


 第二王子が頷いたので、庭に行くために足を踏み出す。


「……一緒に行きますか?」


 旦那様の方を振り向き、声をかける。


「いいのか?」

「はい。カリウスには、一番大きな実をあげます」

「そうか……。ありがとな」

「甘くて美味しいですよ」


 腕を差し出され、手をのせる。

 走って庭に行きたいけど、第二王子の前でのエスコートは大事だ。ラブラブ夫婦っぽさが増す気がする。


「待て! 父を見捨てるのか!?」

「そうよ。育ててやった恩を忘れるなんて! 早く何とかなさい。役立たず!」

「可愛い妹が縛られてるのよ! とうにかするのが姉の役目でしょ!!」


 父、義母、義妹が騒いでいる。


「あなたたちは、家族じゃありません。だから、助ける義理もないです。……さようなら」


 旦那様と一緒に庭へ向かって歩き出す。


 何か叫んでるけど、私には関係のないことだ。


 もう二度と会うことはないだろうけど、まったく寂しくも、悲しくもない。

 それに──。


「ちっともスッキリしなかったです」

「何がだ?」


 ざまぁと言うのは微妙だけど、悪事の証拠を第二王子へと売り飛ばし、復讐は果たした。

 だけど、そこには何もなかった。

 あるのは、食事をもらえなかったという変えられない過去だけ。


「スッキリして終わるのは、物語の中だけってことなんですかね……」

「ん? あぁ、さっきのことか?」

「はい。復讐すれば、縁を切れば、何かが変わるんじゃないかって思ってました」


 結局、何も変わらなかった。

 既に手にあるものはあるし、ないものはない。


「まぁ、そんなものじゃないか。家族と関係が切れたところで、区切りがつくぐらいだろ」

「たしかに……」


 ざまぁして「はい、終わり!」というわけには、いかないか……。


「旦那様、見えてきました!」


 今年もたくさんの実をつけている木に向かって、走る。

 木の下について見上げれば、実の重さでたわんだ枝が、今年も大きな実をつけたのだと、教えてくれている。


「あぁ! もう鳥にかじられてるのがある!」

「それだけ甘いってことだな」


 追いつき、隣に並んだ旦那様を見上げれば、穏やかに微笑んでいる。


「この実、好きですか?」

「食べたことないからなぁ……。でも、コレッティーナのオススメだ。うまいんじゃないかな」

「最高に美味しいですよ!」


 えっと、一番大きくて、一番甘くて、鳥にかじられてなくて……。


 木を見上げ、旦那様の実を探す。


「あった! あれです! あれにしましょう!」

「……届かなくないか?」

「大丈夫です。お任せください!」


 木の幹に近付き、わしっと幹に抱きつくように手を伸ばす。けれど──。


「待った」

「──ぐえっ」


 首根っこをつかまれた。


「何するんですか!?」

「今、登ろうとしたよな」

「登らないと、とれません」


 言い切れば、体の向きをくるりと変えられる。

 旦那様と向かい合わせになれば、ひくりと頬が引きつるのを感じた。


「旦那様、般若(はんにゃ)です」

「怒ってるからな」

「何で怒るんですか!?」


 抗議の声を上げれば、ぺしりとおでこを叩かれる。


「危ないだろ」

「いつも登ってました。慣れてます」

「そういう問題じゃない。目の前で大切な人が危ないことをしようとしたら、怒るし、止めるもんだ」


 …………大切。


 ペロペロキャンディみたいな、暴力的な砂糖のように甘い気持ちが、じわじわと広がっていく。


「私、大切ですもんね」

「そうだ。コレッティーナは大切な人だ。だから、危険なことはさせない」


 ほっぺが溶けたみたいに、ふにゃふにゃになって、うまく表情が作れない。


「私も、旦那様が大切です。だから、一番大きな実は旦那様です」

「知ってるよ。ありがとう」


 大切だと思ってもらえる。

 大切だと思える。


 それは、当たり前なんかじゃなくて、キラキラした宝物だ。


「登っちゃ駄目なら、どうやって実を取りますか?」

「……肩ぐるまとか?」


 肩ぐるま!!

 たしかに、それなら取れるかも!

 ……だけど、どうやって?


「……肩ぐるまは難しいです。力不足ですみません」


 旦那様を持ち上げるには、圧倒的に筋肉が足りない。

 まさか、こんなところでも筋肉不足が問題になるとは……。


「コレッティーナの肩ぐるまくらいできる」

「へ? ぉ……ぉあああああ!!」


 ぐっと視界が高くなる。

 怖くて、旦那様の頭にしがみつけば、くつくつと笑う声がした。


「コレッティーナにも、怖いものがあるんだな」

「あるに決まってるじゃないですか。あ、旦那様、もっと右です!!」


 一番大きな実に手を伸ばす。


「取れました!!」


 実を引っ張って取れば、ぐらりと身体が揺れ、とっさに旦那様の頭にしがみつく。

 心臓がありえないくらい、速い。


「悪い。大丈夫か?」

「あ、はい。大丈夫です」


 そう言いつつ、身体の力を抜く。


「見てください! すっごく大きな実が…………って、あれ!?」


 手にあるはずの実がない。

 きょろきょろと見回せば、地面に実が落ちていた。


「旦那様の実!!」


 肩ぐるまから下ろしてもらい、急いで拾いあげれば、地面とぶつかったところが潰れている。


「一番大きかったのに……」


 鼻の奥がツンとする。

 じわりと涙腺がゆるんだ。


 おかしいな。

 身体が自分の言うことをきかない。

 ちょっと前まで、泣きそうになることなんて、なかったのに。


「別に、ちょっとつぶれただけだろ」

「──っ。ちょっとって!」


 旦那様は私の手から実を取り上げると、当たり前のようにかぶりつく。


「うん。甘い」

「旦那様ぁ……」


 べそりと涙がこぼれた。

 馬鹿みたいだ。こんなことで泣くなんて。


「さっきまでは強かったのにな」


 優しく旦那様の(そで)が私の涙を吸っていく。


「一緒に食べよう」

「あい!」

「って、鼻水!! ったく、しょうがないなぁ」


 呆れられたように笑われる。

 けど、それだってふわふわと優しい気持ちになる。

 

あと1話で、第一章はおしまいです。

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