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【第2章開始】「お前を愛することはない」と言われたので、労働対価に食事を要求します(連載版)  作者: うり北 うりこ@8/1ざまされコミカライズ①発売
「お前を愛することはない」と言われたので、労働対価に食事を要求します

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「お前を愛することはない」と言われた私、証拠を売り飛ばします②


「えっと、証拠の場所ですけど……」


 食糧庫の奥へと進む。


 しっかり、くわえてっと……。


 落とさないようにペロペロキャンディをくわえて、たくさんある木製の(たる)の一つに足をかける。


「ちょっと待て」


 樽の上に登りかけた身体は、旦那様によって降ろされた。

 抗議の目を向ければ、ぺしりと優しい力でおでこを叩かれる。


「危ないだろ」

「んー……」


 たしかに、ペロペロキャンディをくわえながらの移動は危険か。

 落とすかもしれないし。


 仕方ない、動かすか。

 よし。腰をしっかり落として……。


「んーー!!」


 ペロペロキャンディをくわえたまま、全力で樽を引っ張った。

 でも、びくともしない。


 歯を食いしばらないと無理か。

 いつもより力が入らない。


「カリウス、これ持っててください」


 ペロペロキャンディを噛み砕かないよう、旦那様に渡そうした。


「カリウス?」


 なかなか受け取ってもらえず、旦那様の方を見上げれば、眉間に深いシワができている。


「頼むものが違うだろ」

「え?」


 不機嫌そうに、旦那様が樽に手をかける。


「でも、本当に重くって──」


 ──ズリッ、ズリズリズリ……。


 樽がゆっくりと動かされていく。

 旦那様、意外と力持ちだ……。


「たしかに重いな。何が入ってるんだ?」

「塩です。たしか、ワインもあります」

「……管理、雑すぎないか?」

「そうなんですか?」


 どうなんだろう。

 たしかに、ナビレート家の食料保管庫はもっと整理されている。

 ナビレート家がしっかりしてるのかと思ったけど、違うのかも。


「これ、全部どければいいの?」


 第二王子に話しかけられ、頷く。


「はい。一番奥の樽に証拠があります。全部どけます」

「了解。じゃ、カリウスと奥方は下がっててね」


 第二王子がそう言った瞬間には、もう騎士様たちが動き出していた。


「一瞬でしたね」


 騎士様たちは軽々と樽を移動させ、残るは一番奥にあった樽だけ。


「開けます」


 パカリと蓋をあければ、雑に羊皮紙が詰め込まれていた。


「すごい量だね。……何で処分しなかったんだろう。こっちとしては、助かるけど」

「父は、一緒に悪さした人を逃さないような人です。この証拠は、保険ですね」


 逃げ出そうとすればいつでも脅せるよう、保管しておいたのだろう。


「それが自分の首を絞めたってことかぁ」

「はい。そうですね……」


 そのあと、父の書斎、ドレス部屋からも無事に証拠を回収した。



「これ、全部確認するのかぁ……」


 嫌そうに第二王子が言う。

 旦那様の顔も引きつっている。


「私もやりますか?」

「ありがたいけど、それはできないよ。夫人が証拠を隠蔽(いんぺい)、改ざんしたなんて、万が一にでも疑われるかもしれないからね」

「そうですか」


 そうなったら、余計な仕事が増えるだけだ。

 何もしない方がいいだろう。


「事情は聞かせてもらうと思うから、協力よろしくね」

「分かりました」


 生家の件は、これで無事に解決! と思ったんだけど……。


「これは、どういうことだ!!」


 めちゃくちゃ、父が怒っている。


「どういうことかって言われても、お前の悪行の数々の証拠回収だよ。見て分からないのかな?」


 第二王子はにこにこと捕縛(ほばく)されている父に言う。


「私は何もしていない!」

「それ、これ見ても言える?」


 ひらりと一枚の羊皮紙が、父の顔の前に突きつけられる。


「これ一枚でも、事実なら重罪だよねぇ。命があるといいね?」

「──っ。ぜ、全部、そこの女が仕組んだことだ。私じゃない!」


 そう言う父の視線は、まっすぐに私へと向かっている。


「……私ですか?」

「そうだ。認めれば、ラビソン伯爵家(我が家)の力を使って、減刑(げんけい)になるよう動いてやる」


 なるほど。

 実父(こいつ)も敵だったか。

 そうだよね。私が食事抜かれてるの、気づかないわけないもんね。


「わぁ……。何という提案なのでしょう。胸がドキドキするわ」


 転がされている父の顔を踏む。


「食事さえ、まともにくれない親のために、私に罪をかぶれと? 不快極まりない」

「コレッティーナ!」


 後ろから羽交い締めにされる。

 振り向かなくても分かる。旦那様だ。


「気持ちは分かる。けど、駄目だ」

「……食事を与えないのは良くて、顔を踏むのは悪いことですか?」

「そうじゃない! コレッティーナが手を汚す必要はないだろ」


 ……そうかな。

 そんなことないと思うけど。


「旦那様。これは、人の皮をかぶった汚物(おぶつ)です。何をしても罪にはなりません」

「人の皮をかぶってる時点で、国の法律が適用される。捕まりたいのか!?」

「…………それは、嫌ですね」


 牢屋のご飯はまずそうだ。

 それに、もし食事が出てこなくても、庭で食材調達もできない。


「なら、こういうのはやめろ」

「分かりました。別の方法を考えます」

「考えるな! お前の家族は捕まる。あれだけの証拠があれば、死罪は(まぬが)れない。もういなくなるんだよ……」


 いなくなる?

 そうか。私のご飯を奪う人は、いなくなるのか……。


「じゃ、いいです。第二王子殿下」

「何かな?」

「絶対に、美味しいものを食べさせないでください」

「分かっているよ。夫人が食べていたものを食事で出す形にしようか?」


 それは、ありかも。

 でも、難しいんじゃないかな。


「私の場合、現地調達だったので、王宮から毎日ここまで来るの大変じゃないですか?」

「はい?」

「私の食事、ここにいた時は庭にあったので」




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