「お前を愛することはない」と言われた私、証拠を売り飛ばします①
第二王子は顔だけ振り向くと、じとりと旦那様を見た。
「貸しだからね」
「いつも殿下のせいで大変なんですから、たまには盾にでもなってください」
義妹から隠れるように、第二王子より少し高い背を丸めて旦那様が言う。
……うん。ヒーローの背中に隠れるヒロインみたいだ。
「カリウスは屋敷で留守番してたら良かったのに。奥方だけ来てくれればいいんだからさ」
「コレッティーナを一人で行かせるわけないじゃないですか」
「一人ってわけじゃないでしょ。オレもいるんだし」
「殿下と、殿下の護衛では不十分なんですよ。コレッティーナを一番に守りませんから」
ん? 誰が来ても、私を守る必要ないよね?
旦那様だって、第二王子を守らないとでしょ?
……まぁ、何でもいっか。
「私の出番、まだですか?」
時間があるなら庭に行きたい。
ビンに実を詰めるのだ。
「待たせてごめんね。すぐに取り掛かるよ」
そう言うと、第二王子は胸元から笛を取り出した。
──ピーー!!
高い音が響く。
「は? ちょっと、何なの!?」
義妹が困惑の声をあげている間に、わらわらとガタイの良い男の人たちが現れた。
あ、みんな同じ服を着てる……。
「第二王子殿下の護衛ですか?」
「彼らは騎士だよ」
にこりと第二王子が笑う。
「へぇ、騎士様ですか」
どうりで強そうなわけだ。
いいなぁ、筋肉ムキムキ。
根っこを簡単に引っこ抜けるだろうなぁ。
「さ、始めようか。ラビソン伯爵家の人たちは一部屋に集めておいて。邪魔するようなら捕縛していいから」
「捕縛!? ちょっと待ってください!! 屋敷に勝手に入ってきて捕縛だなんて、許されませんわ」
騎士様たちに指示を出した第二王子に向かい、義妹が叫んだ。
「邪魔しなければ、縛られませんよ」
「そういうこと言ってるんじゃないのよ! コレッティーナは黙ってて!!」
ギッと睨まれるけど、弱そうだ。
黙らせたいなら、もっとムキムキになった方がいい。
「コレッティーナになんてこと言うんだ」
第二王子の後ろから出てきた旦那様が義妹を威嚇してくれる。
でもなぁ……。
「大丈夫です。怖くありません」
「……そうか」
「はい。義妹は鍛えてから出直したほうがいいです」
「鍛える?」
「筋肉が足りません。あれじゃ、パンチもヒョロヒョロです」
「ぶふっ…………」
旦那様は私に背を向けた。
肩がちょっと震えている。
「カ、カリウス……我慢しなよ……」
「殿下……だって…………笑ってるじゃ……ないですか…………」
えっと、何でそんなに笑って……。
あ! そうか!
「義妹、笑われたからって気にすることないです。これから鍛えればいいんです」
やられたら、やり返すのはいい。けど、未熟だからって笑うのは失礼だ。
「私が笑われてるんじゃないわよ!」
「…………そうですね」
自分が笑われてるって認めたくないもんね。
かわいそうに……。
「あー、面白かった。さてと、ちゃっちゃと終わらせようかな。夫人、案内お願いできるかな?」
「はい。こっちです」
歩き出せば、第二王子と旦那様、騎士様が数名ついてくる。
「ちょっと! 離しなさいよ!!」
義妹の声が後ろから聞こえたので振り向けば、騎士様に引き止められている。
ジタバタしてるけど、あの体格差じゃ義妹の負けは確定だ。
やっぱり筋肉は正義か……。私の食生活も改善してしばらく経つし、鍛えよう。
簡単に根っこを収穫したいしね。
***
「つきました。ここです」
ついた場所は食糧庫。
薄暗いので、騎士様が手持ちランプに灯りをつけてくれる。
「……こんなところにあるの?」
「はい。食べ物を漁っていた時に見つけました」
「えっと……」
「他にも、父の書斎と、義母のドレス部屋にもあります」
「……そっちは、どうやって見つけたのかな」
「掃除してた時です」
あれ? 第二王子が黙っちゃった。
父の書斎はともかく、食糧庫とドレス部屋には普通、隠さないのかも。
三ヶ所は多くて、面倒だよね。
「一箇所に集まってなくて、すみません」
「え!? それは全く問題ないよ。むしろ、付き合わせちゃってごめんね」
眉を下げ、第二王子は言う。
「……コレッティーナ」
「何ですか?」
「これ、食べておけ」
そう言いながら、旦那様が私の口にペロペロキャンディを突っ込む。
「ありがほーごじゃいまふ。こへ、ほっからほほひはんへふか?」
「ん? 何だ?」
旦那様は笑いながら、今度は私の口からキャンディを引っこ抜いた。
「これ、どこから出したんですか?」
「ポケットだ」
そう言われ、旦那様のポケットを見る。
おかしい……。あのポケットに、このペロペロキャンディが入るわけない。
「……そんなに気になるか?」
「はい!」
何度も頷けば、旦那様は上着をぺらりとめくる。
すると、そこにはなんと──。
「おっきなポケット!」
ペロペロキャンディがジャストサイズで入りそうな、素敵ポケットがあった。
「うわぁー! いいなぁ……」
これなら、いつでもペロペロキャンディを持ち歩ける。
「殿下、そんな目で見ないでください」
そんな目?
第二王子を見れば、半目だった。
「カリウス。殿下もペロペロキャンディほしかったんですよ。もう一つありますか?」
「チョコならあるぞ」
今度は外ポケットからチョコが出てくる。
「うぐぅ……。仕方ないので、それを第二王子殿下にあげてくださ──」
「いらないからね!?」
少し強めに第二王子が言う。
いらないなら、私がチョコほしいな。
そう思って旦那様を見上げれば、頭を撫でられる。
「またあとでな」
ペロペロキャンディを手渡され、なめれば、今日も暴力的なほどの砂糖の味がした。
本業が忙しく、更新ペースが落ちており、申し訳ありません。
今後は週2〜3日の更新を目指して、投稿していく予定です。
もちろん、それ以上書ければ更新ペースをあげていきますよ!
引き続き、よろしくお願いいたします。




