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【連載版】「お前を愛することはない」と言われたので、労働対価に食事を要求します  作者: うり北 うりこ@8/1ざまされコミカライズ①発売


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「お前を愛することはない」と言われた私、貴族的動作を学びます


「ミカナ先生、もう一度見せてください」


 貴族令嬢としてのあいさつ(カーテシー)を正面から見せてもらい、私はミカナ先生の右前方斜め四十五度に移動する。


「分かりました。では、行わせていただきます」


 そう言って、カーテシーをするミカナ先生の姿を目に焼き付ける。


「今お見せしたのが、王族に対するカーテシーでございます」

「そうですか。もう一回してください」


 また更に四十五度進み、ミカナ先生の右側九十度でカーテシーをお願いする。


「見ているのもいいですが、実践こそ上達の近道でございますよ」

「いえ。まずは全方位から確認します。膝の角度、姿勢、足の引き具合、指先の形、その他にもいろいろ記憶します。前方から始めて、一周ぐるっと見て、最後に前方で記憶を微調整するので、見本は全部で十回ください」

「しかしですね……」

「ください。分からないとできません」


 ミカナ先生は小さく頷くと、周りを少しずつ移動していく私のためにカーテシーをしてくれた。


「では、やってみましょうか」

「はい」


 頭の中でミカナ先生の見せてくれたカーテシーを統合していく。

 まずはスカートを三本の指で持ち、斜め後ろに右足を引く。足を引くのは、二十センチ〜二十三センチ。引いてすぐにかかとを五センチほど上げる。そのまま腰を落として、推定四十五度まで膝を曲げ──。


「って、あれ?」


 ぐらりと体が傾く。


「コレッティーナ様!」


 アンネの声が響く。


 コテンと横に倒れたけど、絨毯(じゅうたん)がふかふかだったので、痛くない。

 慌てたように、ミカナ先生とアンネが駆け寄ってきてくれた。


「大丈夫です。もう一度やります」


 やり方も角度も間違ってなかったはず。


 ──コテン。

 ────コロン。

 ──────パタン。


 何故だ。何故、何回も同じところで倒れる?


「コレッティーナ様、足の引きはもう少し小さくなさってください」

「どうしてですか? ミカナ先生は上級編ってことですか?」


 足の引きの距離は、カーテシーが上手くなればなるほど、大きくなるってこと?


 じっとミカナ先生を見れば、困惑した瞳が私を見る。


「……ご指導中、申し訳ありません。コレッティーナ様、何故ミカナ先生を上級編だと感じられたのですか?」

「足を引く距離をミカナ先生と同じにしたからです。先生の動きをそのままコピーしてやりました。でも、私がやるとコロンってなります」


 解せぬ。

 ……筋力差か?

 いや、そもそもスカートで隠れていた膝の角度の推定が誤っていた線もある。


「コレッティーナ様とミカナ先生では身長差がありますから、同じだけ足を引いても、同じにはならないのではないでしょうか」

「──っ!! たしかに!」


 ということは、私とミカナ先生の体格差を念頭に再度動きをトレースしなきゃいけないってことか。

 縮小コピーのイメージだよね。


 角度のみ固定。

 ミカナ先生の身長、推定、百六十二センチメートル。私は百四十九センチメートル。

 動きの範囲をおよそ九十二パーセントへ変換。


「お見事でございます」

「やりましたね、コレッティーナ様」


 ふぅ。

 やっと王族へのカーテシークリアかぁ。

 毎回、ミカナ先生の動きを小さくしてコピーするの、ちょっと面倒だな。

 でも、それが一番手っ取り早いんだよね。


「次、お願いします!」



 ***



 ──コンコンコン。


「旦那様、一緒に夜ご飯しましょう」


 執務室へと誘いに行く。

 旦那様は忙しい時に放っておくと、すぐ食事を抜いてしまう。

 従業員の健康を気にしてくれるのと同じように、自分の体も大切にしてほしいものだ。


「ん? あぁ、これが終わったらすぐに行く」

「駄目です。そう言って、この間は食べ終わってからきました」


 それで、コーヒーだけ飲んで執務室に戻っていった。


「旦那様と一緒に食べます」

「……分かった。悪いが五分待っててくれるか?」

「もちろんです」


 頷きつつ、旦那様の執務机にのっている書類を手にする。


「五分あれば、誤字脱字、計算ミスくらいならチェックできます」

「疲れただろうから、コレッティーナは休んでてくれ」

「大丈夫です。礼儀作法はすべてマスターしました。スイッチ入れれば、言葉遣いも変えられます」

「…………は?」


 ポカンとした顔で旦那様は私を見る。


 うん。これは、やって見せた方が早いやつ。


「こちらの書類は(わたくし)に任せてください。カリウスの方こそ、疲れた顔をしていますよ。あたたかい食事に、十分な睡眠こそ、健康の秘訣です。急ぎの書類を片付けたら、ディナーにいたしましょう?」


 口元に小さく笑みを浮かべ、落ち着いた声を意識して話す。


「え? は? えぇ!?」


 バサバサと書類が床に散らばっていく。


「習得したということ、信じていただけましたか?」


 書類を拾う動作はコピーしてないから、拾えないけどね。

 さぁ、頷くのだ。

 そしたら、いつもの動きに戻って、書類を拾うから!

 

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