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【連載版】「お前を愛することはない」と言われたので、労働対価に食事を要求します  作者: うり北 うりこ@8/1ざまされコミカライズ①発売


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32「お前を愛することはない」と言われた私、食事マナーも完璧です!


 今日の夕ご飯は何だろなー♪


 うきうきと食堂までつき、行動のみ令嬢モードへとスイッチを切り替える。

 いつもは勝手に引いちゃう椅子も、アンネが引いてくれるまできちんと待つ。


「わぁ! おいしそう!」


 ずらりと並んだ食べ物たち。

 吸い寄せられるように、メイン料理からふわふわと出てくる湯気の匂いをそっと嗅ぐ。

 お肉の匂い、最高すぎる!

 匂いだけで、パン三個はいける!


「いただきまーす」


 がぶりと大きな口で食べたい!

 それでも今は令嬢モード。

 私の口のサイズに計測し、ナイフで一口サイズに切る。

 口の中はあふれた唾液でいっぱいだ。


「あーん。むぐ……もぐもぐ……。ほわゎゎ……。肉汁ジュワーです」


 あぁ、幸せ……。


「旦那様! このお肉、すっごくジューシーです!」


 って、あれ?

  

「旦那様、お肉こぼれてます!」

「お、おぅ……」


「それパンじゃないです。フキンです」

「そうだな」


 え? 何で?

 旦那様がポンコツになってしまった。


 ……原因は、あれ……か?

 よし、試してみよう。


「もう、仕方がありませんね。カリウスったら、本当に困った人ですね」


 くすくすと笑えば、ぎしりと旦那様の動きが止まる。


 うん。ビンゴだ!

 旦那様は、私の令嬢モードがお気に召さなかったのだ。


「旦那様、別の女性パターン習得しますか? 見本となる人がいればできます」


 旦那様と接する時はアンネを、その他の人に向けてはカルナ先生をコピーしたつもりだったけど、旦那様の理想ではなかったらしい。

 私の知ってる中で、素敵な人たちをコピーしたんだけどなぁ……。


 うーん。この二人以外によく知ってる女の人ねぇ……。


 ……あっ!


「とりあえず、このタイプはいかがですこと? (わたくし)の義妹をコピーしましたわ。おーほほほほほ……げほっ……けほっ……」


 立ち上がって高笑いをしたら、むせた。


 知らなかった。高笑いは、肺活量が必要だ。

 義妹タイプで行くなら、肺活量を鍛えないと。


「おい、大丈夫か? ほら、水飲め」

「すみ……けほっ………ません…………けほけほっ」


 旦那様は背中をさすりながら、水の入ったグラスを手渡してくれる。


 お、このタイプはいけるのか。

 となると、肺活量問題を早急に解決しないと。

 あとは再現性の向上もだ。


「優しいカリウスと結婚できて、コレッティーナは幸せですわぁ」


 よし。ここで体をクネクネ……。

 ん? クネクネ難しいな。

 くっ……、高笑いだけでなくクネクネのクオリティも低いなんて……。

 これじゃ、義妹タイプを完全再現できない!


 仕方ない、一先ずクネクネは諦めてお目々パチパチだ。

 たしかこう斜め下から見て……。


「って、えぇ!?」


 すごい、変な顔してる。

 これは、あれだ。食べた草が思ったよりも渋みが強かった時になる顔!!


「……旦那様。義妹もイマイチでしたか?」

「そう……だな。コレッティーナの(ひたい)を弾きたくなるくらいには」


 旦那様がデコピンのジェスチャーをする。


「やめてください!」

「まだしてないだろ」


 そうだけど、旦那様のデコピン痛そうで嫌だ。


「アンネも駄目、義妹も駄目……。まさか、義母タイプがお好みですか⁉」

「んなわけあるか!」

「じゃあ、何で痛いことしようとするんです?」

「…………いつものコレッティーナと違って驚いただけだ」


 え? 旦那様って、驚くとデコピンするの?

 今度から、おでこに布巻かなきゃ。


「たぶんだが、コレッティーナが思ってることは違うからな」

「思ってることですか?」

「どうせ俺が驚くと額を弾く人間だと思ったんだろ」

「──っ! 旦那様、すごい! エスパーですね‼」

「エスパー? 何だそれは?」


 旦那様が眉間にシワを寄せて怪訝(けげん)な顔をする。


「すごい人のことです。で、何に驚いたんですか?」

「あー、そうだなぁ……。たった半日で言葉と礼儀作法を完璧にしていたら、普通に驚くだろ」

「そうですかねぇ?」


 そもそも、見てない動きはできないし、高笑いも不十分だしなぁ。

 というか、何か誤魔化した?


「頑張ったな」

「はい! で、令嬢モードはアンネ、義妹、義母の誰がいいですか?」

「……他の選択肢はないのか?」


 他かぁ……。

 礼儀作法を身に着けている知り合い、少ないんだよね。


「ラブラブモードにならなくていいなら、ミカナ先生もできます!」

「……そうか。アンネの真似で頼む。可愛かったし……」

「アンネが好みのタイプなんですね!」

「違う!」

「えー、じゃあ好みの見本ください」


 旦那様は重いため息をはく。


「コレッティーナだから可愛いんだろ」

「……私、だから?」

「そうだ。コレッティーナだからだ」

「何と! 私、可愛いんですね!」


 知らなかった。

 私、可愛いのか。

 たしかに、鏡で見る私は小柄で実年齢より幼くて……。ん?


「…………アンネ、私って可愛いです?」

「はい! とても愛らしく、この世で一番可愛いです!」

「……デザー」

「もちろんのこと、可愛らしいと思っております」


 そうか。小さい子どもへ向ける可愛いと似たものか。

 困った。

 すごーく困った。

 これじゃあ、いくら旦那様とラブラブアピールして、完璧な伯爵夫人を演じても、「こんなちんちくりん、カリウス様に相応しくないわ」って、言われちゃう。

 初心な旦那様ハートの保護ができなくなる! 



 

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